2.24.お久しぶり


 よっしゃできたー!


 俺はあれから苔を求めて進み続けた結果、ついに苔の生えている場所にたどり着いていた。

 前の場所と違って大きな木はないのが少し残念だったが、同じものが何個もあるはずがないので早々に諦めた。

 それに俺の体ももう大きくなってしまっている。

 木の下で暮らすには少し狭いだろう。


 なので『土地精霊とちせいれい』で土を起こして改変。

 粘土みたいに形状を自在に操れるので家はすぐにできてしまった。

 もちろん土の家だが、土地精霊で土の性質を変えているので簡単には壊れることはない。

 雨にも耐えれるように屋根は粘土と葉っぱを混ぜ込んで水を弾くようにしている。

 葉っぱは意味ないかもしれないけど、直に粘土の部分に水が当たるのは避けたいので、粘土の上には葉っぱを敷いている。

 枯れたら変えなきゃいけないのが面倒くさいけどね。

 ま、様子見です。


 蛇の体だし二階部分を作る意味はないので、なんとなーく日本家屋をイメージして作ってみた。

 屋根に葉っぱが乗っているので、それが茅葺っぽくて雰囲気はそれなりに出ているのではないだろうか? 

 もちろん塀も作っていますよ!

 意味ないけど!


 内装は……まぁ蛇には必要ないよね。

 雨風が凌げれば良いんだもん。

 あるとすれば苔の生えた大きな石しかありません。

 俺はこれだけで十分だからな。


 見た目だけちょっと頑張りましたって感じの家になっている。

 だが見た目を重視しすぎたせいで必要以上に大きな家になってしまったが……まぁいいだろう。


 いつか木を操る技能を手に入れて本当の木造建築をしてみたいものだ。

 ウドスネークならできるかもしれないなぁ。

 やはり早く進化して新しい技能を貰わなければな。

 最近は技能を作るということをしていないが……ま、あれは時間がある時でいいだろう。

 実際進化したほうが効率は良いしな。


 拠点があるってのはやっぱりいい物だな!

 すぐに捨てる可能性あるけど!


 今のレベルは5。

 来る道中光合成をしてみたらなんか知らんけどレベルが上がった。

 もうこの世界の生物のレベルが上がる条件がわからなくなってくる。

 俺光合成で何食べたんだよ……霞?


 因みに『狂酸毒牙きょうさんどくが』は封印した。

 あれは使っていい物じゃない。


 使う対象がいなかったから木に向かってやってみたんだけど……噛みついた周囲が溶けてなくなった。

 それだけならまだよかったのだが、噛みついたところから酸が侵食して木が倒れてしまった。

 だがそれだけには留まらず、葉っぱの色が茶色になっていき、見る見るうちに葉っぱがすべて枯れ落ちてしまったのだ。

 これは恐らく……猛毒牙の効果だろう。

 あんなのを生物に使ったら肉が食べれなくなるので、俺は狂酸毒牙を封印したのだ。

 あれはやばい。


 あと『鋭水流剣えいすいりゅうけん』。

 これはすごい。

 説明にもあったが本当に岩が切れてしまったのだ。

 多連水槍とぶつけてみたが圧倒的に鋭水流剣のほうが強かった。

 だが一本しか作り出せないので、多対戦の時は連水糸槍れんすいしそう多連水槍たれんすいそうの方が役に立つ。

 本当は連水糸槍と多連水槍を合成してもいいかと思ったのだが、まだ強い技能が手に入ることを期待して放置してしまった。

 進化してウェイブスネークになれば、また良い技能に巡り合えるだろう。


 本当なら『大治癒』や『広域治癒』も使ってみたかったけど……対象がいないし、俺今ぼっちだしで技能を試すことができなかった。

 いや悲しくないし。

 蛇って一匹オオカミでしょ。だから全然大丈夫だし。

 ……大丈夫だし!


 さーて、家も作ったし……そろそろ狩りに行きたいな。

 今までは食べるだけだったからなー。

 戦闘経験値全然もらってないよ……。

 てかここどこだよー。

 ゴボックにぶっ飛ばされて馬車で運搬されて地面潜って適当なところに出てきてしまったからな……。

 相当な距離を移動したはずだ。


 もうあの場所に戻れる気がしないでございます。

 人に聞いたらもしかしたら帰れるかもしれないけどさ。

 それが聞けるようになるまで後どれくらいかかるのか……。

 はぁ……先は長いぜ……。


 てかあの二人のことも何とかしてやらないといけないしな。

 本当は家なんて作ってる場合じゃないんだよな。

 でも拠点ほしかってん。


 アレナはとりあえず大丈夫だろう。場所もわかってるし……。

 問題はサテラだ。

 場所もわからなければ姿も知らないからな。

 まずは情報を探せるようにならないといけないなぁ……。

 いや本当にいつになるんだよ。


 んーこうなったらこの姿でも探しに行ったほうがいいかもしれない。

 だけど町とかも見なかったし……集落や町がある場所をまずは探してそこから地図を拝借したほうがいいか。

 何処に何があるかすらもわかってないもんな。

 わかってないことが多すぎて逆に手が付けれない。


 よし、まずは人の集落を探すことにしよう。


 俺は無限水操で水を作り出してその中に入る。

 そしてフヨフヨと上空に向かって飛んでいく。

 高い所から見たなら何かわかるはずだ。

 こういう時この技能は便利だよな。

 あ、もちろん水盾は展開しておく。


 上空から見てみると、その地の地形がはっきりとわかる。

 大きな山々が遠くにあり、そこには火山もあるようだ。

 少し離れた場所には川がある。

 俺がいた周囲はほとんど森だが、何処かに続く人工的に作られたと思わしき道があった。

 そこだけ綺麗に手入れされているようだ。


 その道を目で辿っていってみると、集落があった。

 まだ遠すぎてどのような集落かどうかはわからないが、人がいるのは確かなので今日はそこに向かってみることにする。

 このまま無限水操で運んでもらってもいいのだが、レベルは上げたいのでちゃんと歩いて向かうことにする。

 経験値は必要だからな。


 一番初めにいた場所でも一度、空から何かないかを探したことがあったが……あの時は何も見つからなかった。

 ただひたすらに森だったからな。

 やはりあそこは相当深い森の中だったのだろう。

 今回は簡単に見つかってくれて助かった。

 これでサテラを探しに行く足掛かりができそうだ。

 出来れば集落の人たちとも交流したいけど……無理だろうな!

 うん。野生の蛇が人と仲良くなるっていうビジョンが全く浮かばない。

 ここは穏便に済ませようかな。


 とりあえず村の近くまで行って『暗殺者』で気配を消して村を探索しようかな。

 よし、そうと決まれば村に向かって出発だ!




 ―2時間後―


 俺は歩きながら目に入った生物を狩っていた。


 よっと。『剛牙顎ごうががく』。


「キュエエエエ!」


 操り霞を半径五メートルに展開して獲物を探していたのだが、この二時間で出会った敵は四体。

 どれも面白い固有スキルを持っていた。

 しかし俺の剛牙顎には勝てなかったようだ。

 大体これで狩ることができてしまう。


 ぶっちゃけ言ってしまうと……獲物が弱い。

 剛牙顎、鋭水流剣ではほぼ一発で沈む。

 なので俺は連水糸槍と多連水槍の熟練度と、操作性能を上げようと頑張っている最中だ。

 もちろん弱ったら剛牙顎でとどめを刺す。

 剛牙顎が出なければ骨までは食べれないからな。


【経験値を獲得しました。LVが21になりました】


 獲物を四体食べたというのにこのレベルの上がりにくさ……。

 恩恵が働いてくれているとはいえ、些か少なすぎる気がする。

 以前までのレベルの上がり方に慣れてしまっている俺が悪いのだろうが……やっぱりはやく進化したいじゃん。


 それにまだまだ蛇道は抜けれそうにないしな。

 蛇道を抜けたら次は何だろう。トカゲとか?

 逆に退化している気がするけど蛇には手はないもんな。

 龍には腕があるし。あるよな?

 蛇の次は手足のある生物かもしれないな~。楽しみだ。



 よし、そろそろ集落についた頃だろう。


 俺は操り霞を集落の方角へと展開してみる。

 頭の中にシルエットが映し出されていく。

 木、葉っぱ、低木と続いて明らかに人工的に作られた柵らしきシルエットが写りこんだ。

 次に規則的に並べられた草が映りこむ。

 これは畑だろうか?

 それからは家だったり人のシルエットが写りこんだ。

 どうやら近くまでこれたらしい。


 俺は操り霞で周囲の状況を把握したままの状態で、集落に近づいて行った。

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