2.9.感知技能


 ファサッ。


 また来た! 今度はどっからだ!? 


 確認しようとするがやはり見る前に水盾に防がれてしまう。

 相手は完全に俺の場所を把握しているようで、今度は後ろから攻撃してきた。

 相手がどこにいるかわからない以上、こちらからは攻撃ができない。

 相手は自分の位置を探らせないようにするためか、移動しながら俺に攻撃をしてきているようだ。


 一度でも見てしまえば何とかなるような気がするのだが……そうも言っていられなさそうだ。

 残りの水盾は3つ。

 MPはまだあるし再発動はできる。


 このまま敵のMP切れを狙うのもありなのだが……姿を見ていないので確実に逃げられるだろう。

 流石にやられっぱなしっていうのは嫌だ。

 俺からも何とか攻撃をしてやりたい。


 そこで相手がどんな技能を使っているのかが気になった。

 まずは敵の技能について考えることにする。


 感知系技能というのはどういう物なのだろうか。

 熱を感じ取るのか、気配を感じ取るのか……それとも大体の場所は把握できるが、目視しないと攻撃は当てられない。

 などが考えられるが……俺は敵の姿を見ていない。

 多分相手は見ることがなくても俺に攻撃を当てられることができるはずだ。


 ファサッ。バシャッ!


 あ! おいちょっと待てや! 今考えてんだろ!?


 ん、いやちょっと待てよ?

 確実に感知出来て目視せずに攻撃が当てられるのだとしたらなんで初撃を外したんだ?

 確実に当てれるなら初撃で攻撃を与えることができたはずだ。


 なのに二回目、三回目は水盾が発動している。

 自動発動型の技能だから、水盾を発動していなければ俺に攻撃が当たっていると考えて間違いないだろう。


 てことは……相手は俺を目視して攻撃を当てに来ている?

 今は水盾が浮いているから場所はわかりやすいのかもしれないな。

 よし、物は試しだ!

 視界を悪くしてやろう……『操り霞』!


 初めて使う技能だ。


 発動すると周囲に霧が立ち込め始めた。

 MPの使用量によって霧の濃さが変動するらしい。

 とりあえず濃く……どんどん霧を濃くしていくと、3m先も見えないほどに霧は濃くなった。


 どうやら『操り』というのは霧の濃さ、霧の種類を操るという意味ようだな。

 種類は……霧と霜と霞。

 実際何が違うのかよくわからない。

 霜と霧はわかるが……霞って遠くの山とかの麓にかかる霧みたいなものだろ?

 別に霧だけでいい気がするが……まぁいいか。


 霧の範囲はどんどん広がっていく。

 俺もどれくらい広げたのかわからなかったが……ふと脳裏に地形が呼び出された。


 な、なんだ?


 どうやら今いる場所の地形らしい。

 草の位置、木の位置、石の位置、自分の位置、などなど様々な物の位置が手に取るようにわかる。

 だが形がわかるだけで色はなくシルエットだけが表示されているため、多分これなんだろうな、と頭の中で変換している。

 草や木はなんとなくでわかるからな。


 どうやらこれは、この霧に触れている物のようだ。

 どうやらこの霧はレーダーのような役割を果たしてくれるようで、この範囲内なら様々なものを感知できるようだった。


 もちろん全てをだ。

 敵の位置も感知できる。

 霧の中で動く一匹に生物がいたのだ。


 み~つ~け~た~ぞ~?


 人間だったら額に青筋が入っているはずだ。

 それほど今は頭にきている。

 一方的に殴られ続けることに流石に腹が立っていた。

 

 ふー……『多連水槍』……!


 30本近い槍が出現した。

 怒りに任せてしまった為加減が少しできなかったが……まぁいいだろう。

 ハチの巣にしてやる。


 まず20本の槍を敵の周囲に円を描くように突き刺す。

 簡易的な牢屋の完成だ。


 相手はまさか攻撃されるなどとは思ってもみなかったのだろう。

 槍に気が付くことができずに簡単に牢屋に捕まってしまった。

 それを操り霞の感知能力で確認した俺は霧を取っ払う。

 霧を濃くするにはMPを消費するようだが、消す分にはMP消費はしないようだ。


 残り10本の槍を牢屋の前で待機させて、俺はその牢屋に向かう。


 そこにいたのはイタチのような細長い四足の動物。

 口角が常に上がっているのが非常にムカつくが……とりあえずどんな奴なのか聞いておこう。


===============

―アザワラチ―

 獲物をいたぶるようにして狩りをする狡猾な魔物。

 隠密行動が得意で見つけることがとても難しい。隠れながら相手を攻撃するので一方的な狩りをすることが多い。

===============


 名前からもうやばい奴じゃん。

 性格悪すぎんだろこいつ。

 いやもう殺そう。


 残っている10本の槍をアザワラチに向かって放つ。

 数発を狭い空間の中で避けたので驚いたが、流石に10本は避けられなかったようでついに槍が刺さって沈黙した。


 いやー……結構危なかった。

 操り霞がなかったらじり貧だったんじゃないだろうか。

 しかし……まさかこの技能が感知系技能だとは思わなかったなぁ。

 良い技能に巡り合いました……なんで使ってみなかったんだ俺。

 マジで。


 もっと早く使ってみてればこんな時間かけずに勝利できたのに!

 まぁ……水盾の性能も確かめれたし。

 良しとしようかな。


 俺は多連水槍を解いてから、アザワラチをいただく。

 顔だけはムカつくので捨てておこう。

 後は剛牙顎を使って骨までかみ砕いていただきます。


【経験値を獲得しました。LVがMAXになりました。進化が可能です。現在のステータスを表示します】


===============

 名前:応錬(おうれん)

 種族:水蛇


 LⅤ :30/30

 HP :155/155

 MP :186/186

 攻撃力:102

 防御力:137

 魔法力:132

 俊敏 :75


 ―特殊技能―

 『天の声』『希少種の恩恵』


 ―技能―

 攻撃:『剛牙顎』『追跡』『毒牙』『連水槍』『多連水槍』『水流剣』『水糸』

 魔法:『クリエイトクレイ』『操り霞』『無限水操』

 防御:『水流結界』『水盾』

 回復:『吸収』

 罠術:『水捕縛』

 特異:『発光』『土壌浄化』

 自動:『悪天硬』『水泳』


 ―耐性―

 『眩み』『強酸』『爆破』『腐敗』『視界不良』『盲目』

===============


 こうしてみると結構技能も増えたなぁ~。

 当初とは大違いだ。

 技能欄もこんなにきれいになってなかったしな。


 一桁だったステータスも今ではレベルが1でも100越えのステータスもあるしな。

 俺頑張ったんだなぁ~。

 初めのころなんて多分今の牙と同じくらいの大きさだぜ?

  そう考えると大きくなったよなぁ。


 おし! このままどんどん進化して龍になるぞー!

 なってからどうなるかわかんねぇけどなってから考えるかな!


【進化しますか?】


 おう!


【進化先を選んでください】


===============

―進化先―


―ドロ蛇―


―ウェイブスネーク―

===============


 お、ダトワーム消えた!

 また新しい蛇来たね。

 ドロ蛇は土系の蛇かな?

 そう言えば零漸も土系の魚だったと思うし、ドロ蛇になって防御力をあげてもいいかもなぁ。

 

で、ウェイブスネークってなんぞや?

 波? 波蛇でいいのかこれ。

 ハイ天の声さんお願いします!


===============

―ドロ蛇―

 沼や泥の中を好む蛇。泥や沼を好むだけであってその場にとどまり続けるということはない。

 比較的温厚で、自分が仕掛けた罠を用いて獲物を狩る。自分より大きな獲物は狙わない。

===============

―ウェイブスネーク―

 波動を使い獲物を狩る狂暴な蛇。縄張りに入った敵を衝撃波を用いて内臓を吹き飛ばす。体も大きく、動く速度も速いため危険な生物として発見した場合ギルドへ報告する義務が冒険者にはある。

 討伐隊が結成されることもあるが、あまり良い成果は挙げれていない。

===============


 おっとぉ!? 新しい情報入ってきたぞ!

 ギルドですってギルド!

 ギルドあるんだこの世界!

 それに冒険者! この世界……人多いぞ!


 王族もいるしギルドもあるし、貴族もいると言っていた。

 やっぱり人間になりたい! この世界楽しみたい!

 とりあえず今の目標は人の姿になることだな!


 決まりだ。これだけ魔法とかあるんだ。

 絶対に人になれる魔法もあるはずだ!

 ふっふっふ……楽しくなってきたぞ!


 えーと? ドロ蛇は罠を持ってそうだな。

 土系の技能が使えそうだ。


 ウェイブスネークは普通に強そうだな。

 だがやっぱり人間に狙われるんですね~……強い奴ほど狙われやすいんですね……悲しい。


 だが俺はゆっくり進化するんだ。

 今回はドロ蛇を選ぶぜ!

 次の種族変更進化ではウェイブスネークになれるだろ!


 あ、その前に帰りますね。


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