2.8.見えない敵
あれからはコケの上に乗って寝ていた。
寝心地が素晴らしすぎて夕方から寝たというのに朝方に目が覚めてしまった。
コケは最強なんだね。
俺、人間になったらコケ育てるよ。
そう言えば人間になって何するかは全く決めていないな。
この世界を楽しむために人間になろうとは考えていたけど……住むところとかも決まってないし、この世界の金銭のことなんかも一切わからない。
日本円ではないだろうしな。
考えてみればわからないことだらけだ。
人がいる……というところまでは知っている。
そうでなければ王族とか、人という単語が種族説明に出てくるはずがないからだ。
王族がいるということはそれなりの上下関係も確立していそうだ。
貴族とかもいるかもしれない。
ってことは奴隷とかもいるのだろうか?
元平和主義の国、日本出身の俺はその光景はあまり見たくない。
もしそんな光景を見てしまったら助けに行ってしまいそうになるかもしれないな……。
何にせよ、この世界をまず知らなければ人間生活は送れないと考えたほうがいいな。
天の声による種族説明でゆっくり情報を集めていこう。
因みにちょっと前、人間や王族のことに関することを天の声に聞いてみたが説明はしてくれなかった。
実際に見ないと説明はしてくれないようだ。
流石辞書である。
そういえば、水蛇になってから随分と体が大きくなった。
この調子だともっと体が大きくなって大蛇になってしまいそうだ。
そうなると今住んでいる家では事足りなくなる可能性が出てくる。
しばらく進化したら引っ越しも検討したほうがよさそうだな……。
せめて水系統以外の種族変更進化をしてから移動を考え始めるとしよう。
そのためにも、いい場所を前もって探しておかなければならない。
俺は目が覚めてから移動してより良い拠点を探している最中だ。
今回は滝の上に登らず、家を出て真っすぐ平坦な道を進んでいる。
この辺りは前に鳥と戦ったところだな。
あの時は発光を使おうとして失敗した。
何故夜には使えないということを忘れていたのかが未だ理解できていない。
あの時は本当に阿保だった。
そこから更に進んでいく。
全く襲われないが、気を抜いてしまえばまた奇襲を受けてしまうかもしれないので警戒しながら進む。
流石に一撃で40も持っていかれたのは痛かった……あのかぎ爪を抜くのにどれだけ苦労したことか。
確認してみてわかったのだが、完全に骨まで届いていて傷口から骨が見えていた。
胸じゃなくて本当によかったと思う。
胸を抉られていたら肺が潰されていたかもしれないからだ。
蛇の肺は左側の肺が退化しており小さい。
その代わり右側の肺はとても細長くなっているのだ。
まぁその逆ももしかしたらいるかもしれないが……どこかの文献で見た程度なので詳しいことはわからない。
流石に肺をやられてしまったら長時間の戦闘は俺でもできそうにないからな。
もしまた何かと戦うことになった時は、上半身(?)は重点的に守ることにしよう。
ガサガサガサガサ……。
進んでいると背の高い草が沢山生えている場所に来たようだ。
俺の目線は地面とほぼ同じ位置なので草だけでも大樹のように大きく見える。
実際は俺より小さいが……。
しっかし……これじゃ前見えないな。
隙間なく草が生えているため視界が非常に悪かった。
いっそのことこの辺全部刈り取るかな……家に敷く草も欲しいしなぁ。
だけどこの草はちょっと細いな……あまり硬くもなさそうだ。
すぐに傷んでしまいそうだし、やめておこうかな。
ファサッ。
体の上を何かが通り過ぎた。
それが何かを確認しようとしたとき、周囲の草が倒れ始めた。
とても軽い草なので体に当たっても全く支障はないが、視界がさらに悪くなってしまう。
ななな、なんだなんだ!?
慌てながら草で埋もれてしまった体を起こす。
周囲を確認してみると、俺がいた場所は草刈り機で刈り取ったような跡になっていた。
地面から数十センチほど草を残しているため、俺の体には傷が入らなかったようだ。
あぶな! なんてことしやがる!
ど、どこだ!? 何がこんな攻撃飛ばしてきやがったんだ!?
探してみるが相変わらず視界が悪いため、敵の姿を捉えることができない。
だが困ったことに俺が体をあげてしまった為、攻撃が当たらなかったということを相手に教えてしまった可能性がある……。
焦ってしまった為、少し判断力が低下していた……。
敵は俺の姿が蛇だということを認識したはずだ。
流石に自分が攻撃した場所を見ていないなんてことはないだろう。
とりあえず、居場所がばれてしまったことは間違いない。
移動しなければまた相手は攻撃を繰り出してくるだろう。
すぐに身をかがめて移動をする。
『水盾』、『水捕縛』。
移動をしながら水盾を発動させる。
ついでに俺が通ってきた場所に水捕縛を何個か発動させておく。もし追ってきた場合はこれに引っかかってくれるだろう。
多分。
水盾は前と同じように五つに分裂して周囲に漂っている。
水盾も草をかき分けているので音で居場所がばれてしまうかもしれないが……実戦で使ったことがなかったので試しておきたかった。
とりあえず頼りにしているぞ、水盾。
少し離れた場所に移動して身を隠す。
未だに水捕縛は発動していない。
あとを追いかけてきてはいないのだろうか……。
ファサッ。バシャッ!
!? この音はさっきの!
気が付いたが、その反応速度は遅かったようで、俺が攻撃を目視する前に水盾の一つが攻撃をガードしてはじけて消えた。
自動発動型の技能が役に立った……有難う水盾。
どうやら水盾は自動で攻撃を防いでくれるようだが、一つの水に対して一回しか攻撃を防げないのかもしれない。
攻撃の強さによって変わるかもしれないので検証は必要かもしれないが、今は水盾だけで敵の攻撃が防げるとわかったのだ。
良い成果だろう。
しかし敵の位置がやはり掴めない。
今の攻撃は右側から攻撃してきたようだが敵の姿は見当たらない。
綺麗に草は刈り取られているのだが……。
俺は水捕縛を設置していたので、後を付けられているということはないだろう。
それなりに広範囲の水捕縛を設置したからな。
てなると……もしかすると相手は感知技能を持っているかもしれないな。
厄介だな……ていうか相手の攻撃も全く分からない。
二回攻撃を貰ったが一回として目視することができないのだ。
発動すると凪ぐような音が聞こえるのだが……それだけで、それ以外は何もわからない。
ちょっとまって? これ結構やばくない?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます