2.2.滝壺
しばらく進んでたどり着いたのは滝壺だった。
水の落ちる音がしていたので滝があるだろうと思い、上へ上へと登って行っていたのだが、そこまで進むのに結構な時間がかかった。
姿が蛇なので移動速度が遅いので非常に疲れる。
辿り着いたそこは修行僧が禊をするような場所で、十メートルほどの滝があった。
周囲の岩には苔が生え、落ちてきた水が強く叩きつけられて水飛沫が常に上がっており、ミストも発生している。
そのため木々には水滴がついていた。
気が付けば俺がその近くにいるだけでも体中に水滴がついていた。
だがなんだか心地が良い。
やはり水辺蛇は名前の通り水辺を好むのだろう。
ミストが充満しているこの場所はとてもいい生息地になるのではないだろうか?
よし、ここを拠点としよう!
でもどうやって家作ろうかな……。
ほら、こういう時は滝の裏側に実は洞穴があるんですよ。
そう相場が決まっているんですよ!
ないですね。
まぁそう都合よくいきませんよ当り前じゃないですか大自然ですよ?
ったく何を甘っちょろい考えを……。
家を作ろう! 洞穴は嫌です!
ん~~~~クリエイトクレイ?
土や粘土使って家を作ろう! 小学校の工作かな? いやですがこれは大まじめです。
えー……どんな家作ろうかな……粘土だったら多分何とか作れるよな。
湿気多いけど問題ないだろうし、雨風が凌げればそれでいいな。
作る場所は……ん~……。
広い所に作ったら目立つから作りたくはない。
かといって滝の近くだと音がうるさそうだ。
良い立地がない物かと探していると、一つの木の根っこが目に入った。
大きな大木の下には空間が開いており、そこに入るだけで雨風が凌げそうな空間になっている。
いいじゃないですか根っこの家! なんかロマンあるよな~。
ほら、創作物に出てくる木の精霊とかこうやって木の中に家を持ってるじゃん?
それに秘密基地みたいな感じがしてとてもわくわくする。
作る場所は決まった!
粘土で周囲を囲ってしまえば滝の音も少なくなるだろう。
俺は早速クリエイトクレイで粘土を探し出し、地上へと集める。
集まった粘土を使って壁を作るように木の根に設置していく。
もちろん中は空洞だ。
明かりが入ってくるように少しだけ空間を開けておく。
追加で扉も作る。
とは言っても葉っぱを使ったカーテンのような感じだ。
扉とは言えないが、雰囲気だけでもということでおいておく。
あら? 意外と良いんでないの?
この大木が立派なおかげで簡単な家が完成した。
なんかいいですねこういうの。
内装は……流石にまだ無理だよなぁ……でも汚い土とかは外に出そうかな。
と、考えたはいいものの、やってみると想像以上に時間がかかった。
なんせ蛇の体で土を外に持っていくのだから大変で仕方がない。
一時間の格闘の末、何とか汚い土を外に持っていくことに成功していた。
中には葉っぱが敷き詰められている。
俺的にはコケのほうがいいんだけどね。
休憩の時、苔の上に乗ってみた。
するとどうだろう、とっても心地がいい。
油断していると寝てしまいそうだったので作業を再開したが……今度便利な技能を手に入れたらコケをこの家に持っていくことにする。
しかしこの家……結構広い。
気分は豪邸です。何もないけどな!
中に入ってみると、滝の音は気にならないほど小さくなるため、落ち着ける空間になっている。
薄暗いが俺は夜目が効くので特に問題はない。
多分この家は小さな子供がすっぽり入るくらいの大きさはあるのではないだろうか?
それくらい天井も高く、空間も広い。
我ながらいい仕事をしたと思うぞ。だが疲れた……今日は寝る!
ということで寝てみた。
瞼を閉じて寝ようとして見たらすんなり寝れた。
めちゃくちゃ気持ちがいい。
寝るのって……いいですよねぇ……。
◆
おはようございます。
はい、寝すぎましたよ。おはようございます?
いやいや真上にあるの月なんですけど。
てか月三つある……めっちゃ綺麗。
というわけで探索とレベル上げに行きますよ!
ここには滝の音を頼りにすれば帰ってくることができるだろう。
零漸に後れを取るわけにはいかないから、進化して強い技能を手に入れるぞ!
できればあの防御力をも貫く攻撃技能をくれ!
それか防御貫通技能を……せがみすぎですかね?
俺は夜の森へと入っていくと、鳥の声や草が揺れる音が聞こえてくる。
少し不気味だが、夜のほうが動いている生物は多いはずだ。
これからしばらくは狩りに勤しむぞ。
ということで全力で『追跡』を使用して気配を消しているのですが……木の上に鳥がいるんです。
いるけど……俺木登りできねぇ!
クソウ……剛牙顎なら大概の生物なら肉を抉れそうなんだけど……木の上にいられたら食べれません。
どうにか上る方法ないかなぁ……。
ん~ないなぁ……。残念。あいつは諦めよう。
もっと木が細かったら登れそうなんだけどな。
俺の全長よりも幹太いんですもん。登れませんよ。
技能で跳躍とか登攀があれば登れそうなんだけどなぁ。
次の獲物を探すことにした。
本当に索敵能力が欲しくなるのだが、無い物ねだりをしても仕方がない。
目だけで探すのは少々大変だな。
どうにかならないものか……ん~。
あ。『発光』あるじゃん。てかお前大活躍だな!
一番地味っぽい技能なのに!
そうだよ、さっきの鳥もこの『発光』使ったら落ちてきて食べれたんじゃないの!?
戻れ戻れ! 早速使ってみなければ!
戻ってみるとまだ鳥は同じところにいた。
てかあの鳥見た目めちゃくちゃカラスなんだよな……食べて大丈夫だよね?
えーっと、できるだけあの鳥が向いている方に体を動かして……『発光』!
…………あれ? なんで発動しないの? あれ?
あ! しまったぁ……これ太陽が出てないと意味ないんだった。
ばっかやろう。
くそ~いつも太陽が出てるときに使ってたから忘れてた……。
は~何してんだ俺は……さ、また探しに行こう。
踵を返してその場を後にしようとしたとき、後ろからバサバサっという音が聞こえた。
もう一度振り返ってみると、先ほどいた場所に鳥はおらず、なんとこちらに全力で向かってきていた。
ぬぉおおおおお!? 『剛牙顎』!
とっさに剛牙顎を発動させて迎え撃つ。
相手はかぎ爪を使用して俺を捉えようとしているようだが、そんなかぎ爪で俺を捉えれると思ったら大間違いだぜ!
そのかぎ爪に思いっきりガブリついてやる。
相手もこの行動には驚いたようで一瞬隙が生じた。
だがその隙を狙わないはずがない。
そのまま爪に噛みついて噛みちぎる。
だがそれだけではまた飛んで逃がしてしまうので、まずは手加減して噛みついて鳥を思いっきり地面に叩きつける。
その瞬間に顎に入れる力を増して今度こそ噛みちぎった。
何が起こったかわかっていない鳥はバタバタと羽を動かしてその場からとりあえず逃げようと必死だ。
だが足が食いちぎられているのでまともに立ち上がることはできていない。
そこに追い打ちをかけるようにもう一度噛みつく。
今度は首だ。
絶対に逃がしてなる物かっ!
カプチッ。
【経験値を取得しました。LVが19になりました】
流石鳥……美味しいなぁ。
モグラを食べきってレベルは12になっていたが、一口でこれだけレベルが上がるとは……。
ん~これなら二回くらい進化できるかな?
おっしゃー! 食べて進化するぞ~!
【経験値を取得しました。LVがMAXになりました。進化が可能です。現在のステータスを表示します】
===============
名前:応錬(おうれん)
種族:水辺蛇
LⅤ :20/20
HP :75/75
MP :175/175
攻撃力:82
防御力:79
魔法力:69
俊敏 :83
―特殊技能―
『天の声』『希少種の恩恵』
―技能―
『剛牙顎』『発光』『悪天硬』『水流操作』『クリエイトクレイ』『土壌浄化』『吸収』『追跡』『毒牙』『水泳』『水流槍』
―耐性―
『眩み』『強酸』『爆破』『腐敗』
===============
【進化しますか?】
【進化先を選んでください】
===============
―進化先―
―ミストスネーク―
―ダトワーム―
===============
誰がワームになんてなるか阿保! 絶対に嫌!
てかこれ種族変更進化だろ?
なんで骨なくなるねん! 退化してるじゃねぇか!
ミストスネークは名前からしてまともそうだ。
水辺蛇の上位互換だろうしな。
じゃあミストスネークに進化するぜ!
だけど家に帰ってからな!
ここで進化するとレベル1になるからな……安全なところで進化するほうがいいだろう。
だけどとりあえず進化先の情報は聞いておこうかな……。天の声さん、お願いします。
===============
―ミストスネーク―
霧の中に住まうと言われている蛇。とても臆病な性格で周囲には常に霧を出現させている。だが霧の範囲は本体から数十mほどしかない。
発見するのが非常に困難なこの蛇は貴族の中でとても人気がある。
===============
―ダトワーム―
巨大なミミズ。ダトワームが通った土地は痩せた大地すらも栄養度の高い大地に回復させるという。
しかし恐ろしい所もあり、間違えて地上に出てしまった場合は暴れ狂い、村を崩壊させるまでに狂暴になるらしい。
そんなダトワームはつぶらな瞳が特徴的。
===============
ダトワームはねぇな。ムカつくわ。
てことで……こいつ持って帰らないといけないのか。
なんだろう、もっと近くでレベル上げするべきだなこれは。
丁度滝壺もあるし、今度は水の中泳いでみようかな……。
それで零漸にあったら面白いけど。
いや、滝つぼに行くんだったら滝の上に登ってみるか。
よし、明日はそうしよう!
今日は帰ってこいつ食べて進化しますよ~。
…………ふんぬぅ!!!
重たいなこいつ! おらあああああ!
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