1.9.試し噛み
太陽の位置が真上にあるので、おそらく今の時間帯は昼頃だろう。
獲物を探して一時間が経過していた。
朝にマレタナゴの大群を目撃しているので、その大群が逃げた方向へと泳いでいるのだが一向に見えてこない……気配すらしない。
ああ~いないなぁ。ちょっとくらいいてもよくない?
つってもマレタナゴだと一口で食べれてしまいそうだから『
でも後LV2でまた進化ができるんだよ! そりゃ急ぎたくもなりますん。
もう狩ることが仕事じゃなくて獲物を探すのが仕事になってんなこれ……。感知系の能力とか手に入れることはできないのか。
あ~技能減ったし、進化して増やしたいなぁ……。
愚痴りながら泳いでいてもやはり獲物は出てこない。
ここまで出てこないのはおかしいのではないだろうかとうすうす思い始めている。
もしかしたら何か原因があってこの付近に生物がいないのかもしれない。
ここは異世界だ。そういうことだってあるかもしれない。
うん、ここ異世界だよな? こんな能力とかないし、王族とかいるんだろ? 多分異世界だよ! 進化とかあるし。
つっても俺ラノベとかほとんど興味なかった気がする。
小魚に転生して記憶無くなってる気がするけど、人間だったっていう記憶はあるし……妙な感じだー。
ゴボボッ。
何かが動く音がした。
とっさに周囲を確認して音を出して犯人を捜すと、すぐに目が合った。
深緑から黄緑色に色が落ちている背中、腹は白く、横腹には特徴的な青い斑点が散らばっていて夜空に浮かぶ星の様だが、その綺麗な姿をしているのは間違いなく、今日の朝俺を食ったあのニジマスだ。
おうおうおう! また会ったなくそ野郎!
お前はいい経験値になるって俺は知ってんだ……せっかく見つけたんだしちゃんと狩ってやるから安心して俺の糧になってくれ!
そう言えばアイツなんていう奴なんだ?
===============
―アシッドギル―
強力な酸を持っており、自分の体の周りにも強酸を防衛手段として纏っている。
自分よりも大きな敵に立ち向かう事が多く、とても好戦的である。
===============
好戦的なのか! じゃああんなちっさかった俺よりもっと狙うべき敵がいただろ!
まぁいい、今度はこっちが喰らってやるから覚悟しやがれ!
『牙顎』!
牙顎を発動させて臨戦態勢を取る。
アシッドギルは突進してきて丸のみにしようとを大口を開いた。
俺はそれを躱して横腹に回り込む。
だが進化したといってもまだアシッドギルのほうが体が大きいので、おそらく口を広げても一口で横から噛みつくことはできないだろう。
なので長くなった胸びれを使用して軌道を変え、腹から噛みつくように突撃する。
ガチッ!
決まったと思った攻撃だったが、案外すんなりと躱されてしまった。
結果何もない所に思い切り噛みつく。
どうやら回り込むのに時間をかけすぎてしまったようだ。
この重い鱗を身に着けての旋回攻撃はあまり得策とは言えない。
この鱗の防御力は非常に高いはずなので、搦め手で攻めるよりごり押しの攻撃のほうがいいかもしれない。
だがやはり恐怖心のほうが勝るため、逃げに回ってしまう。
食われることが怖くないはずがないのだ。
実際に一度食われてしまっているのでその怖さは身をもってわかっている。
一度距離を取って相手を睨む。
アシッドギルはゆっくりとこちらを向いて再度突撃してくるが、先ほどと全く同じ攻撃だった。
所詮は魚……やはり考えることはあまりできないのだろう。
自分より格下の存在で、ただの生きる為の糧だと思われているに違いない。
勢いのいい攻撃ではあるが、同じ攻撃であれば躱すのは容易い。
先ほどと同じように回避して、今度は腹を狙わず横腹に噛みつく。
口を限界まで開いても横の背を丸かじりすることはできないが、鋭い牙のおかげで鱗を貫通し肉を捉える。
かじりついた勢いのまま全力で口を閉じて肉を抉る。
!? 柔らかい!
そう、とてつもなく肉が柔らかかった。
先ほど食べつくしたアシッドギルを食べた時は結構噛み応えが合った記憶がある。おそらくこれは牙顎の技能のおかげだろう。
なんでもかみ砕けそうだ。岩とかもいけてしまいそうである。
おお! めちゃくちゃいいじゃないか!
流石……技能を二つ消費した甲斐があるぜ!
えーっとアシッドギルさんは…………あーめっちゃあらぶっていらっしゃる。痛いもんね。ごめんね。
だが……! やらなければやられる! もう食われるのは嫌だ……めっちゃ怖かったし。
そう。ここでは弱肉強食。やらなければただの食料になってしまう。
アシッドギルは相変わらず痛みに悲鳴を上げている。
実際声は聞こえないのだが、あの暴れ具合から相当堪えていることは一目瞭然である。
俺はそこに追撃を加えていく。
タイミングを見計らってアシッドギルの頭部に食らいついた。
痛みで冷静さを失っているアシッドギルは、攻撃を躱すことができずに簡単に脳天を失なった。
大きく体を痙攣させていたが、痙攣の大きさは次第に小さくなっていき、ついには動かなくなってしまった。
【経験値を手に入れました。LVが19になりました】
ほ、ほ、骨まで食えたー! 牙顎やべぇ……めちゃくちゃいい攻撃手段じゃないか。合成してしまった時はどうしようかと思ったけどこれは結果オーライですね!
あ! ちょ、ちょっとまってアシッドギルさん! 流れていかないでー!
浮袋を破っていないせいか、水面に腹を向けて流れて行ってしまっている。急いで追いかけて腹を食い破り、川底へと沈める。
【経験値を獲得しました。LVがMAXになりました。進化が可能です。現在のステータスを表示します】
===============
種族:ブルーフィッシュ(成体大)
LⅤ :20/20
HP :105/109
MP :149/171
攻撃力:70(+80)
防御力:119
魔法力:45
俊敏 :45
―特殊技能―
『天の声』『希少種の恩恵』
―技能―
『牙顎』『発光』『部位強化(硬)』
―耐性―
『眩み』『強酸』
===============
おん!? 攻撃力+80!? あ、これ牙顎の補正効果か。
いやいやいや……やばいなこれ。純粋な攻撃力をさらに底上げするんだから噛みつけば大体勝てるんじゃないの?
あ、でも結構MP消費激しいな。ちょっとしか使ってないのに15くらい減ってるのかな? 数値覚えてないからわかんないや。でも大体それくらいだろ。
でもあれだなぁ。技能がここまで強くなるんだったらいっぱい技能集めて合成したいな。
そうだ! 天の声さん、技能って進化以外で集めることってできるのか?
【…………】
ん? これはあれか? 質問のしかたが悪かった感じか。質問には回答してくれない感じだよな天の声さんって……。
えーっと、この場合は技能について知りたいわけだから……。
よし、天の声さん。技能の取得条件に付いて教えてくれ。
【技能。技能は種族の固有能力です。覚えた技能は種族変更進化をしても使い続けることができます。進化すると高確率で手に入れることが可能です。他にも訓練をして技能を取得する方法がありますが、技能として未熟であったり、認められない場合は技能になりません】
お! てことは訓練次第で手に入れることは可能なのか。
んーーー……オリジナルの技を作れってことだよなぁ……。まって俺の場合体当たりくらいしかないんだけど。口は牙顎があるから使えないだろうしなぁ。
でも努力次第で増やせることはわかった! 適当にしてたらもらえる可能性だってあるし、とりあえず何かアイデアが思いつくまでは放置しておこう。
さてと! 進化して残っているアシッドギルさんを食べてあげなければならないな。
【進化しますか?】
この流れも慣れて来たな。うっす!
【進化先を選んでください】
===============
―進化先―
―アシッドギル―
―レインバス―
===============
いやいやいやいや! 一択だわ! レインバス一択だわ! 誰が自分を食い殺そうとした奴になりたいと思うんだよ!!
はい! はい! レインバスにしまーす!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます