第91話-大切な物
沙耶ちゃんにこれまでの経緯について話していると、俺の存在に気が付いたクラスメイトが一人、また一人と、俺と沙耶ちゃんを囲むように集まって来る。
「わー!! この人が沙耶ちゃんの言っていたお兄さん!?」
「うん。 私のお兄ちゃんだよー」
沙耶ちゃんのクラスメイトに軽く自己紹介をしていると、話を遮るかのように学校のチャイムが鳴る。
「お兄ちゃん」
チャイムがまだ響く中、沙耶ちゃんは俺に背中をみせながら
「ちゃんと見ててねっ」
と、つぶやくのであった――――。
「ではみなさん、今日の授業は大切な物についてです。 きちんと作文は書いてきましたか?」
沙耶ちゃんの担任の先生が生徒たちに問いかける。
反応はそれぞれ違かったが、全員書いて来ているようだ。
先生に名前を呼ばれた子たちが、一人。 また一人と読み終えて行く。 そして――――。
「次は高津沙耶さん。 お願いします」
「はいっ!」
元気よく返事をし、立ち上がった後、作文を読み始めた。
「大切な物。 高津沙耶」
緊張が伝わってきて、手に汗がにじむ。
「私には、六人の家族がいます。 お父さんお母さんに、お兄ちゃん。そして妹の葵とまどかです。 でもこの家族は、最初からあった家族ではありません。 お母さんが再婚して出来た家族です。 でも私のお兄ちゃんが教えてくれました、血のつながりだけが家族ではないって。 家族は、家族でしか得られない幸せをたくさんくれます。 私はこの六人の家族で得られる幸せが、今一番失いたくない大切な物です。 そしてこれからも、ずっと大切にしたいです」
読み終えた後、俺の居る後ろに振り向き「たくさんの幸せをありがとう」と、笑顔で言ってくれた。
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