第88話-さやちん達みたいに……

俺が妹たちの部屋を出ようとすると、ちほちゃんが後を追うように立ち上がり、質問して来た


「あっそうだ! お兄さん、さやちんから聞いたんですがゲームいっぱいあるんですよね! 見に行ってもいいですか?」


 また何か企んでいるような笑みを見せながらぐいぐい来るちほちゃん。

 ぐいぐい系の女の子は周りに居ないからあまり耐性ないんだよなぁ


「いっぱいって程じゃないけど…… 見る?」


「はいっ!!」


 こうして俺はちほちゃんを自分の部屋へと招き入れた。


――――


「ここがお兄さんのお部屋かぁ…… 綺麗にしてるんですねー」


 きょろきょろと周りを探るように見るちほちゃん。

 恥ずかしいからあまりまじまじと見ないで……


「ちほちゃん。 こっち」


 俺がちほちゃんを呼ぶと「ハッ!」と何か思い出したかのようにこちらに振り返り、俺の傍に来た後「くるっ」と俺の腕に手を回すちほちゃん。


「え、えっとここの棚にあるのが全部だよ」


「わー! いっぱいあるんですね!」


 さりげなく先ほどより密着してくるちほちゃん。

 ちょっとボディタッチ多くないか?


「あのちほちゃん。 ちょっとくっつき過ぎだと思うんだけど……」


「えー? そうですか? いいじゃないですかー このくらい」


 まぁ減るもんじゃないが、一応「他人」なのだからそこのところはきちんとしたほうがいいと思い、離れるよう伝えようかと考えていると、ちほちゃんは少し悲しそうにこちらを見つめてきた


「さっきも言いましたけども、私、一人っ子だからお兄さんみたいなお兄ちゃんが欲しかったんです。 嫌だったらやめますけど、できればさやちん達みたいにしたいなーって……」


 この子も沙耶ちゃんのように誰かに「甘えたい」のかもしれない。

 過度なスキンシップだけ控えていただければ、妹達の様に可愛がることも出来るかもしれない。


「俺で良ければ甘えてもいいけど、過度なスキンシップだけやめようね?」


 するとちほちゃんは今までの何か企んでそうな笑みから、心穏やかな笑みに変わった


「ありがとう。 お兄さん」


 先ほどよりぎゅっと強く腕を抱くちほちゃん。

 寂しかったのかな? と、思ったのと同時に後ろのドアが開く


「お兄ちゃんー 来るの遅いからなにしてるのかなって思って来たん……」


 しばらく沈黙が続いた後、ちほちゃんが見せつけるように俺の腕に頭を乗せてきた

 これは怒られる奴だと覚悟していると、意外な言葉が沙耶ちゃんから出てきた


「ちょっとちーちゃん!! ずるい!!」


 ん? ずるい? てっきり怒られるかと……


「私もやるーっ!!」


 沙耶ちゃんも俺の反対の腕に抱き着いてきた。


 この後聞いた話だが、俺が部屋にお菓子を届ける前にちほちゃんから妹達に「お兄さんに甘えたい」と言う事を聞かされ、「なら甘えちゃいなよ!」みたいな事になっていたようだ。

 要するに「妹達承認済み」なんだとさ。


 妹達よ、それでいいのかい……

 後できちんとお話を聞くとしよう。

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