第84話-バイト中の出来事

「いらっしゃいませー!!」


 今俺はバイト中。

 今日は土曜日のお昼と言うこともあってか、大変混み合っている。

 平日の学校終わりの時間帯のバイトは慣れてきたが、やはり土日の忙しさにはまだ慣れない


「二名様ですね! あちらの窓際のお席にどうぞ!」


 お客さんで席が大体埋まっていくと、俺は厨房に入り料理の盛り付けやデザートを用意したりする。

 そして用意したデザートをメインのお食事が終わったお客様の元へ行き、届ける。


「亮一さん! 三番テーブルの対応お願いします!」


「了解」


 葉奈ちゃんからの指示を受け、三番テーブルに向かう。

 三番テーブルに居たのは、幼稚園児くらいの女の子と、そのお母さんであろうお方が居た。

 そしてそのテーブルには食べ終わったであろう食器が並んでいた。


「お待たせしました。 追加のご注文でしょうか?」


 するとそのお母さんは少し困った様子で


「はい…… この子がどうしてもパフェに付いてくるフルーツが食べたいって聞かなくて……。 でもメニューにはフルーツ単品は無いみたいだし、やっぱりフルーツだけは注文できないですよね? パフェを食べられる程お腹に余裕がないんですよ」


 確かにこのお店にはフルーツ単品は無い。

 だがここでそのことを伝えれば、この女の子は悲しむだろう。

 せっかくの食事だもん、満足して帰ってもらいたい


「では、しばらくお待ちください」


 俺は厨房に向かった。 そしてここのオーナーである友幸のお父様に相談する。


「オーナーさん、少しお話が」


「どうした亮一君。 君がそのように悩んでいる様子はあまり見ないが」


 俺は訳を話すと、オーナーさんは少し悩んだ様子だったが、首を縦に振り、


「よかろう。 その代わり、追加の料金を頂いてはダメだ。 それとこの事を周りに知られない用に。 何故かは分かるな? 早く準備してあげなさい」


「はい! ありがとうございます」


 追加の料金を頂かないと言う訳はメニューに無いため、会計が出来ないと言う事。 そして周りに知られないようにする訳は、この事を他のお客さんが知れば、ただでフルーツを食べる輩が増えてしまう事を配慮しての事だろう。


 俺は直ぐに小皿にフルーツを盛り付け、女の子の元へ持って行った

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