第79話-美術の授業3

 突然の事であまり理解できなかったが、先程の「黒いメガネをした女の子」は絵を勝手に見て悪いと思ったのだろうか?

 自分一人で考えても仕方がないので、外に行ってリズさんを探すことにした。


 外に出ると、俺のように絵が描き終わった人でいっぱいだった。

 終わった人は外に集まるように言われていたからだろう


 と、ここで学校のチャイムが鳴る。

 チャイムがなった後は、校内放送が鳴る


「時間になりますので、美術の授業のあった生徒は裏庭に集まってください」


 俺は放送の指示通りに裏庭に向かうと、リズさん、知幸、委員長と、皆集まっていた


「おっ! 亮一が来たぞ!」


「おーい」と言わんばかりに手を振り合う


 そして三人のそばまで来ると、さっそくリズさんが話しかけてくる


「君! 何処に居たんだ? 探したんだぞ?」


「あれ、知幸達から聞いてない?」


「俺らも今合流したばっかだから、その話はしてないよ」


 うんうんと、委員長もうなずく


「学校のあらゆる所を探したんだが…… 何処に居たんだ?」


「俺たちの教室だよ、二組の教室」


 そこがあったかー!と言わんばかりにガクンと首を下ろすリズさん


「君にこの絵を一番に見て欲しくて探してたんだ」


 体の後ろに隠していたキャンバスを俺に手渡した

 そのキャンバスには、この学校の廊下にある、水槽が描かれていた

 透き通るような水の描きかたにとても引かれる

 そして中央には一匹の大きな金魚が丁寧に描かれていて、赤い鱗の一つ一つが立体感を演出していた


「凄い! リズさんって絵上手いんだね!」


「えっへん!」と両手を腰に当ててくすっと笑うリズさん。


「リズさん! 私にも見せて下さい」


「いいとも!」


 俺は委員長にリズさんのキャンバスを渡した


「本当ですわね!! 透明感が出ています!!」


 俺と委員長の激励に知幸も気になるご様子


「俺にも見せてくれ!!」


「うーん。 嫌です」


「何でだよっ!!」


 俺たちの間で小さな笑いが起こる。

 この後、委員長と知幸の絵も見せてもらった

 委員長は丁寧に一輪の花を描いていて、委員長らしいとてもいい絵だった。

 知幸の絵心の無さには少し驚いたが、みんな違ってみんないいと感じた一日だった

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