「リズさんは、日本語を難なく喋れるが、来日したのは最近。日本のマナーや日本文化などまだまだ知らないことが多いから、みんな優しく教えてやってくれ」

　先生が事細かにリズさんについてしゃべり終えた後には、生徒みんなで拍手をして、「よろしくー」なんて呼びかけていた。

　うん。いい雰囲気。

「リズさんの席を決めるのも兼ねて、これから席替えをします」

　先生のその一言で、教室がさらに明るくなる。

　なぜなら、「好きな人と席が近くになれるかもー」やら「一番後ろの席になれば先生から目を付けられなくなるー」などなど皆思うことがあるのだろう。

　みんな立ち上がり、こっちへ行ったりあっちへ行ったりワイワイ状態。

　クラスメイトが今までにないくらい興奮している。

　そしてみんなのテンションの上り様にリズさんはちょっとおびえている様子。

　俺は状況を読み取れていないであろうリズさんの近くに行き、話しかける

「ごめんね。みんなテンションあがっちゃってて」

「大丈夫だ。　けど、いつもこんな感じなのか？」

「いや、今回はリズさんの件と、席替えが重なっちゃったからこんな様子なだけであって、いつもはみんな落ち着いてるよ」

　安心した様子のリズさん。

「えっとその……。　一つ聞いても？」

「うん？　何でも聞いて？」

「私が前に居たアメリカの学校では席替えなんて儀式は無くて。席替えってそんなに楽しいのか？」

　俺は事細かに席替えの事を教えてあげた。

「それで、今回の席替えはくじ引きだから、黒板に教室の位置関係が簡単に書いてあるでしょ？　番号の書いてある紙を引いて、黒板の番号と照らし合わせて、その番号の位置に席を移動するって感じなんだ。伝わったかな？」

　話し終えると、リズさんはお辞儀をし、可愛い笑顔でこう言った

「なるほど……よくわかったよ！　教えてくれてありがとう。君は優しいんだね」

　俺はその可愛い笑顔にドキッとする。　反則だよ……

　そしてリズさんは可愛い笑顔の後、少し名残惜しそうにこう言った

「できれば……優しい君の隣だと嬉しいな」

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