第35話-予定

「キーンコーンカーンコーン」


 学校の最後の授業のチャイムが鳴る。

 今日は、委員長に呼び出しをくらっていた。


 さっそく委員長に指定された教室に入る。

 ここの教室は今は使われていない。


「もう委員長いるかな?」


 ドアに手をかけ、開ける。


「ガラガラ」


 そこに委員長の姿は無い。

 なので、ここで待つことにする。


「ここの教室、誰が手入れしているんだろう」


 使われていないにも関わらず、埃が被っていない机。いたずら書きの一つもない黒板。


 校門が見える窓側に歩いてみる。


 やはり窓も、ピカピカだ。


 窓を開けると、さわやかな風が入ってくる。


「とても気持ちがいい……」


 俺はゆっくり目を閉じる。


 すると、聞こえてくる。

 鳥のさえずり、

 生徒たちの話声、

 廊下を歩く音。


 音を聞いていると、後ろから


「パシャ!」


 携帯で写真を撮る音。


 振り返るとそこには委員長がいた。


「もしかして俺の事……撮った?」


「いえ! 決して、とてもかっこ良くて見惚れてしまって、いつでも見たくて写真に収めたという事ではありませんよ!!」


 心の声が聞こえているんだが……。


「まあ、いいよ。それで? 要件は?」


「それなのですが、お料理本を見て、クッキーを作ってみたいと思ったので、それで……」


 もじもじしながら言葉にする委員長。


「それなら今度一緒にクッキー作る?」


 この一言を待っていたのか、とてもまぶしい笑顔になる。


「はい!! えっと、いつ頃空いてますか?」


 携帯のスケジュール表を見る。


 何も一日無さそうなのは明日だ。


「いきなりになっちゃうけど、明日とかどうかな?」


「全然大丈夫です!!」


「じゃあ、明日、一緒に材料買って、俺の家で作る?委員長のお家のほうがいい?」


「それでしたら、亮一君のお家で」


 嬉しそーな顔をしている。


「OK。それじゃ、帰ろうか。委員長」


「はい!」


 俺と委員長は、おしゃべりしながら、下校した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る