第34話-懐かしの食べ物

 家に着くと、三人の妹達とロニオ・カートというゲームをする。


「あーまた負けた……」


 俺は妹達に勝てなくなっていた。


「ふっふーん!! どうだにいちゃん!」


「みんな強いよー」


 今回は一位が葵ちゃん。二位がまどかちゃん。三位が沙耶ちゃんだ。

 あ、ちなみに俺は六位。(コンピュータにも負けた)


「そういえば沙耶ちゃん。最初とは見違えるほど上手くなったね!」


 沙耶ちゃんの顔が嬉しそーな顔になる。


「えへへーありがと。お兄ちゃん!」


「お兄。私は……?」


 まどかちゃんが上目遣いでこちらを見てくる。


「もちろん、まどかちゃんも、葵ちゃんも上手いよ!」


 妹たちを褒めたたえていると、お母さんとお父さんが同時に帰宅してきた。

 妹達はゲームに夢中なので、俺一人でお出迎えをする。


「おかえり」


「おう。ただいま」


「亮一くん。お出迎えありがとう」


 笑顔で帰ってきた二人。何かあったのだろうか。


「亮一、今日は晩御飯買ってきたぞ。いつも大変だろ」


 ありがたい心配。まぁ俺はいつもの事だから大変とは思ってないけどね。


「ところで何買ってきたの?」


 するとお父さんは後ろに隠してた袋を前に出してきた。


「牛丼。亮一、好きだったろ?」


 昔を思い出す。離婚してしまって、料理のできないお父さんは、毎回決まって牛丼を買ってきてくれたときの事を。懐かしいなぁ。


「うん」


 牛丼と聞いて、妹達がやってきた。


「お父さん! 今日は牛丼なの?!」


 葵ちゃんの目がキラキラしてる。


「ああ、亮一が好きな、つゆだくでな! がっはっはー!」


「さあ。みんな食べましょう」


 さっそく俺たちは食卓の椅子に座り、食事の準備を済ませた。


「さあ、頂こうか」


「(一同)いただきます!」


 妹達は、豪快に牛丼を頬張る。


「おいしいー! さすがお兄ちゃんが好きなだけあるね!」


「お兄、後で作って」


「うーん。この味はなかなか家庭では出せないなぁ。ごめんねまどかちゃん」


 何とも幸せな食卓。

 もし、お父さんが再婚しなかったら、こんなに楽しい食事はできなかっただろう。

 今更だけど、このみんなと出会えてほんとによかったって思ってたら、自然と涙がでてきた。


「おい、亮一、どうしたんだ?!」


泣いていることに気が付いたお父さんが心配してくれる。


「いや、なんか幸せだなーって思って」


 俺は、一度家族を失ったから、家族の大切さがより分かる。

 だからこそ、今度は大事にしたい。


「お兄、そんなに牛丼好きだった……?」


 いや、まぁ好きだけど、それより俺はこの家族が大好きだ。

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