第33話-楽しみ

 アルバイトを承諾した次の日……


 今、俺は学校にいる。そして今はお昼休み。


「なあ亮一、俺んちでバイトするってほんとなん? なんか昨日妹が言っててよ」


 知幸が購買のパンを食べながら俺に問いかけてくる。


「うん。そのつもりだよ」


 すると知幸が「まじか」と言わんばかりに顔の動きが止まり、そして数秒後口を動かす。


「え、え! まじ?! 俺嬉しいんだけど!」


 そんなに嬉しがられるとは思ってなかった。


「これで手伝いさぼれるな!」


「えぇ……」


 こんな感じで知幸とアルバイトの話をしてお昼休みを終えた。


 学校が終わると、俺はお母さんから頼まれていた妹達のお迎えに行く。


 紗耶ちゃん、葵ちゃん。まどかちゃんの順にお迎えに行く。


 いつもと変りなく妹達と家まで歩く。


 不意に思った。俺はこのひと時、ううん、この今という日々を幸せに感じる。


 だからアルバイト頑張って、「もっと充実した日々が過ごせるんじゃないか」なんて思った。


「ねえみんな」


 俺は妹達に歩きながら声をかける


「どうしたの? お兄ちゃん」


 紗耶ちゃんが返事をしてくれる。葵ちゃんとまどかちゃんも言葉にせずとも、こちらを見てくれた。


「俺ね、アルバイト始めようと思うんだ」


 唐突の告白に驚いた様子だったが、すぐに返事をしてくれた


「にいちゃんがしたいならいいと思うよ! でも頑張りすぎないでね!」


 葵ちゃんが嬉しいことを言ってくれた。ありがたい。


「アルバイトすると……お兄とのゲームの時間が少なくなる……?」


 まどかちゃんが問いかけてくる。


「お仕事するわけだから、少し少なくなっちゃうかも……だけど、その分楽しみが増えるんじゃないかな?」


「楽しみ……?」


「うん。お仕事して、お金がたまったらみんなで、遊園地や水族館に行こうよ!」


「!!」


 妹達は今の言葉が嬉しかったようで、にこにこまぶしい笑顔になる。


「お兄ちゃん! 行きたい!!」と紗耶ちゃん

「にいちゃんと遊園地……! 楽しみ!!」と葵ちゃん

「お兄、それなら少しゲーム我慢する……」とまどかちゃん。


「みんな楽しみにしててね!」


(妹達)「はーい!!」

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