第25話-ショッピングモール3

 結局、沙耶ちゃんは二着目を買うことは無かった。


 沙耶ちゃんには黄色い毛糸のセーターを。

 葵ちゃんには青色のパーカーを買ってあげた。


「お兄、お腹減った」


 ずっと二人を待っていたまどかちゃんが言う。


 時計を見ると、もう12時30分を過ぎている。お洋服屋さんに居たのは2時間くらいかな。


「ちょうどいいからお昼にしようか! まどかちゃん。何食べたい?」


 ここはまどかちゃんに決めてもらおう。何も文句言わず待っててくれたんだから。


「うーん……ハンバーグ」


 まどかちゃんハンバーグ好きだねぇ。

 前は、何が好きが分からないと言っていたが、好きなものが分かるようになったという事は、自分の事のように嬉しい。


「沙耶ちゃんに葵ちゃん。まどかちゃんに合わせても良いよね?」


「もちろんだよ。まどかずっと待っててくれたもんね」と沙耶ちゃん


「まどかは文句の一つも言わず偉いから今回はにいちゃんの隣に座っていいよ」と葵ちゃん。


 ちゃんとこの三人は、お互いの事、分かってるんだな。


「じゃ! ハンバーグ食べに行こうか!」


「(妹三人)はーい!」


 俺たち四人はショッピングモール内のハンバーグ屋さんに向かった。


「いらっしゃいませー! 何名様ですか?」


「4人です」


「4名様ですね! こちらへどうぞ!」


 案内されたのはお店の端っこの外が見える席だ。窓側に二人。そしてその前に二人と座れる。


 窓側に俺が座り、右にまどかちゃん。前に葵ちゃん。その横に沙耶ちゃんが座る。


 メニュー表は二つあるので、俺とまどかちゃん。沙耶ちゃんと葵ちゃんの二人で見る。


「いっぱい種類あるんだな……」


 みんな黙々とメニューを見ている。


 少し経つと、お水を持った店員さんがこちらにやって来て、お水を4人分置いて行った。妹達は店員さんには目もくれず、メニューを黙々と見ている。


「私決まったよー」


 最初に声を上げたのは沙耶ちゃん。


「まどかも決まった!」


「沙耶ちゃんにまどかちゃんは、何に決めたの?」


 俺が二人に問いかける。


「私は濃厚チーズのハンバーグだよ」


「まどかも濃厚チーズのハンバーグ」


 二人の言っている濃厚チーズのハンバーグの写真を見てみると、確かに美味しそうだ。


「俺も同じやつかな。葵ちゃんは?」


「私も同じのがいいな!」


「よし! 決まったね!」


 俺はテーブルの端にある呼び出しボタンを押した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る