第17話-おすそ分け

 ピンポーン


 外にいる俺にも音が聞こえる。それにしても豪華なお家だ。


「はーい。どちら様でしょうか?」


 機械を通して話す。この声は委員長のお母さんだろう。


「あ、亮一です。真理香さんいますか?」


「ちょっと待っててね」


 一分ちょっと待つと、家のドアが開く。


「亮一君。どうしたのですか?」


 委員長が外に出てくる。


「あ、委員長。突然ごめんね。これ、よかったら食べて」


 俺はそっとお菓子を渡す。


「これ! 亮一君が作ったのですか?!」


「うん。大したものじゃないけど、いつものお返しに。作りすぎちゃって」


 委員長の顔が柔らかくなる。


「ありがと」


 いつもと違う委員長の雰囲気に調子が狂う。


「じゃあ俺、これで」


 立ち去ろうとすると


「あ、亮一君。今更で、唐突なのですけど、連絡先、教えてくれます?」


「ああ、うん。いいよ」


 とても嬉しそうな顔をする委員長。


 少しびっくりしたが、連絡先を交換し、少しおしゃべりをして、今度こそ帰ることに。


「じゃあ委員長、また」


「うん。気を付けるのですよ」


 帰り道、携帯に着信が来る。


 委員長からのようだ。


「なになに」


「パンの耳ドーナツ少し食べたのだけれど、おいしいわ。また作ってくださいな」


 お嬢さん委員長の口に合うか心配していたが、お口に合って良かった。


 ――――


さて、家に着くと、さっそく夕食作り。


 いつものように沙耶ちゃんがお手伝いしてくれる。


 料理をしていると、沙耶ちゃんの手さばきが自然とうまくなっていることに気が付く。


「沙耶ちゃん。野菜切るの上手くなったね!」


 すると沙耶ちゃんはまぶしい笑顔になり


「本当!? 良かったー!」


「手際もよくなったし、あと、ちゃんと猫の手にしながらお料理出来てる。」


 毎日お手伝いしていることもあってか、ほんと上手い。


「沙耶ちゃんはいい奥さんになるね!」


「……」


 変なことを言ったからか、沙耶ちゃんの顔が少し赤い。


「誰かさんが私の夫になってくれないかなー。なんちゃって! てへっ」


 出た、沙耶ちゃんのてへっ!この破壊力は大抵の人ならいちころかもしれないくらい可愛い。

 沙耶ちゃん、それどこで覚えたの……


 お料理も出来てきた頃、お父さんとお母さんが同時に帰って来る。


「(お父さんとお母さん)ただいまー!」


 みんなでお出迎えをする。そしてみんなでご飯を食べる。


 当たり前と言えば当たり前かもしれない。


 けど俺は、この日常ほど幸せはないと思う。

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