第14話-お迎え
迎えに行く順番は、行きの逆。つまりは沙耶ちゃんからになる。
校門前に着くと、沙耶ちゃんがいる。お友達と二人でお話しているようだ。沙耶ちゃんや葵ちゃんは転校したことになるから、いろいろ心配だったが、沙耶ちゃんに関してはその心配はいらないようだ。
近づいていくと、沙耶ちゃんがこちらに気が付く。
駆け足で向かう。
「ごめん。結構待った?」
「ううん。お友達と話してたから大丈夫だよ!」
不意に沙耶ちゃんのお友達が俺に話しかけてくる。
「沙耶ちゃんのお兄さん。こんにちはー」
まだ挨拶してなかったことに気が付く。
「こんにちは! 亮一って言います。これから沙耶ちゃんの事、よろしくね!」
挨拶をしていると突然、
「沙耶。お兄さん、沙耶が言ってたようにかっこいいね! 声もイケボだし……。私超タイプ」
おいおい、いきなりすごいこと言うな。この子……。
「彼女とかいるんですか?!」
こういうときどういう対応するのがいいんだろ。
どうすればいいか考えていると、沙耶ちゃんが、
「お兄ちゃん、葵やまどかも待っているだろうから、行こ?」
なんて言ってくれた。
とても自然な救いの手。
「またねー!」
手を振りながら、沙耶ちゃんのお友達と別れた。
なんかすごい子だったなぁ……。名前は、ちほちゃんって言うらしい。
次は葵ちゃんの学校だ。
校門前に着いたが、葵ちゃんの姿がない。人はぞろぞろ出てくるのに。
「葵ちゃんのクラス、まだ終わってないのかな?」
沙耶ちゃんに話かける。
「うーん。たぶんだけど、自己紹介とか受けてるんじゃないかな? 私もそういうのあったから」
しばらく沙耶ちゃんと学校の事を話していると、学校から大きな声がする。
「にいちゃーん! 今行くからねー!」
視線がすごい。まあ、嫌ではないが、少し恥ずかしいと思うくらい。
下駄箱前で、靴に履き替えるのが見える。そして、満面の笑みでこちらに走ってくる。
ボスッ
俺に抱き着いて来る。
「葵ちゃん。お疲れ様」
「うん! にいちゃんもお疲れ様ー。あとねえちゃんも」
「あとって何よ、あとって! 私だって待ってたんだよ? そんなお姉さまに言う態度がそれかぁー!」
葵ちゃんと沙耶ちゃんの追いかけっこが始まった。
ここでしないでぇ……。
「まてー! 葵ー」
「やーだー」
まあ……、いいか。二人とも楽しそうだし。
そして最後はまどかちゃんの保育園。
「沙耶ちゃん、葵ちゃん。ちょっと待っててね」
「(二人)はーい!」
園内に入ると、まどかちゃんが鉄棒で必死に逆上がりの練習をしていた。
頑張れ!と見ていると、保育士さんから声がかかる。
「あ、もしかして亮一くんかな?」
「そうです。まどかちゃんを迎えに来ました」
軽く挨拶をしながら、まどかちゃんを見る。
「まどかちゃん。いま逆上がりの練習してるでしょ? 逆上がりができるようになったら、一番に見てほしい人がいるんだって。その人と公園に行ったら、びっくりさせたいって言ってたの。ゲーム以外の楽しい事を教えてくれた人なんだって」
その人はきっと俺の事なんだなって感じ取れた。嬉しくて泣きそうだった。
まどかちゃんを呼び、四人で帰る。
みんなと手を繋ぎ、幸せと、ほかの温かいものを感じ取った。
それはきっと、家族の愛だって。
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