第13話-見慣れた者たち

 教室に着くと、見慣れた者たちがいる。


「おう、亮一! おはよう!」


 こいつは俺のクラスメイトの、葛西 知幸かさいともゆき。やんちゃな性格で何かと面倒を起こす。でもやるときはやる人。中学からの友達だ。


「おはよう知幸。久しぶりだね」


「おうよ! 今日からまたよろしくな!」


 さて、席の確認がしたいが、何の手掛かりもない。


「知幸、これ……。席は前に決めた席順でいいの?」


「あーそれはわからんが、みんなそんな感じだからいいんじゃないか? もし違う席順だとしても、立ってるよりは座っているほうがいいだろうし」


 ごもっともな意見。


「それもそうだね。ありがとう」


 俺は以前の自分の席に座る。知幸は俺の後ろだ。


 座りながら、知幸と話していると、聞き慣れた女の人の声がする。


「亮一君。おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」


 話しかけてきたこの人は楠瀬 真理香くすのせまりか。委員長をしていて、何かと気にかけてくれる、優しい人だ。学園内ではみんなのアイドルと言われるくらい可愛いと話題な人なんだ。


「うん。よく眠れたよ。真理香さんはどうなの? なんか眠そうな感じがするけど……」


「亮一君はなんでもお見通しですのね。実は私、亮一君に会えると思ったら楽しみであまり……って、私何を言おうとしてるの?! 危ない危ない。今のは忘れてください。私は用事があるので。では」


 うーん。どういう意味なのかはあまり探らないでおこう。


「亮一、真理香ちゃんはお前に気があるんじゃないのか? この前なんか、偶然ですね。今帰るところなので、一緒に帰りましょう。なんて校門の前に居なかったか……?」


 そんな事もあったなぁ。


 こんな感じでお話をしていると、チャイムが鳴る。先生が入ってきて、今後の予定などのお話を、休憩を入れながら話し、学校が終わる。ちなみに席順は以前のままでよかったみたい。


 キンーコンーカンーコンー

 チャイムと同時に、帰る準備をみんな一斉に始める。


「亮一。一緒に帰ろうぜー」


 知幸から声がかかる。


「ごめん、今日は妹たちの迎えに行く約束だから」


 知幸には前もって、メールで妹が出来た事を報告していたのだ。


「そうか、そりゃ残念だ」


「今度何かおごるから。ごめんね知幸」


「そんなことしなくてもいいってことよ。ま、妹さんを大事にしなよ」


 うん。やっぱり知幸はいいやつだ。


 俺は帰る支度を素早く済ませ、妹達の迎えに行く。

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