5-3


「今からあと2曲叩かせるから、録ってくれ」

 それだけをコンソールルームに伝えると、俺にインカムを返してくる。

「何だよ、RiskとWheelは明日以降の予定だぜ?」

「いいから叩け。それが終わったら俺は帰る。後はお前の好きなようにやれ」

「プロデューサー様がディレクションしてくれるんじゃなかったのか?」

 ははっと笑うと、宵闇は唇の端をあげて笑顔のようなものを見せた。

「お前にディレクションはいらない。セルフでやってくれ」

「いいのかよ」

「面白くなってきた」

 笑顔のようなもの、じゃないな。こいつ、笑ってやがる。

「ベース録りのディレクションはお前に任せるから来い。スケジュールは大丈夫だっただろ」

「俺? まあいいけど」

 俺のドラム録りの後、そのまま次の3日間はベース録りの予定だ。確かにスケジュールは入ってない。

「じゃあ、始めろ」

 宵闇はくるりと踵を返してコンソールルームに戻って行った。

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