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「で、どんなん撮れたんだ?」

 宵闇たちが覗き込んでいるノートパソコンを見に行く。

 うっわ、誰これ。どこのヴィジュアル系だよ。

 ここまで鏡を見てなかったから、今の自分の姿を初めてちゃんと見た。これは、どこからどう見てもヴィジュアル系バンドマンだ。派手だな、おい。化粧と衣装で飾り立てりゃ、誰でもこうなるもんなんだな。

「うん、写真映えも申し分ないな」

 宵闇が満足そうにそう言う。自分でもそう思う。どう見ても自分だと思えなくて、他人事みたいだけど。

「宵闇くん、どれ使う?」

 マネージャーが宵闇に尋ねると、画面を上下にスクロールしながら宵闇は唸る。

「どれもいいな…ハズレがない」

 暫くそうしてから、画面を止める。

「これだな。夕は顔が綺麗だから」

 ポインタが示したのは、アップの写真。おい待て、俺の震えてるふくらはぎの立場はどうなるんだ。

「そうね。じゃあ、この辺り何枚か加工しておいてもらうわね。早めにサイトに載せましょ」

 それから、マネージャーはハンディカムを持ち直して、幕の方を指さす。

「はい、夕くんはそこに立って。ああ、バストアップだからブーツはいいわ」

 言われるまま、そこに立って、向けられたレンズに目を向ける。

「ツイッターとサイトにコメント動画流すから、ちょっと喋ってくれる?」

「あー? 何も言うことねぇけど」

 ベルノワールに対する思い入れも意気込みも、別にない。ま、ちょっとはバンドとして叩き直してやりたいとは思うけど。

「夕、何でもいい。加入します、シングル楽しみにしていてください、ライブで会おう、みたいな感じで」

「はぁ? ああ…そんな感じな…じゃ」

「3、2、1、はい」

「えーと…」

「夕、また顎が上がってる」

「ああん!?」

 まったく、宵闇はうるさい。

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