4-5
「で、どんなん撮れたんだ?」
宵闇たちが覗き込んでいるノートパソコンを見に行く。
うっわ、誰これ。どこのヴィジュアル系だよ。
ここまで鏡を見てなかったから、今の自分の姿を初めてちゃんと見た。これは、どこからどう見てもヴィジュアル系バンドマンだ。派手だな、おい。化粧と衣装で飾り立てりゃ、誰でもこうなるもんなんだな。
「うん、写真映えも申し分ないな」
宵闇が満足そうにそう言う。自分でもそう思う。どう見ても自分だと思えなくて、他人事みたいだけど。
「宵闇くん、どれ使う?」
マネージャーが宵闇に尋ねると、画面を上下にスクロールしながら宵闇は唸る。
「どれもいいな…ハズレがない」
暫くそうしてから、画面を止める。
「これだな。夕は顔が綺麗だから」
ポインタが示したのは、アップの写真。おい待て、俺の震えてるふくらはぎの立場はどうなるんだ。
「そうね。じゃあ、この辺り何枚か加工しておいてもらうわね。早めにサイトに載せましょ」
それから、マネージャーはハンディカムを持ち直して、幕の方を指さす。
「はい、夕くんはそこに立って。ああ、バストアップだからブーツはいいわ」
言われるまま、そこに立って、向けられたレンズに目を向ける。
「ツイッターとサイトにコメント動画流すから、ちょっと喋ってくれる?」
「あー? 何も言うことねぇけど」
ベルノワールに対する思い入れも意気込みも、別にない。ま、ちょっとはバンドとして叩き直してやりたいとは思うけど。
「夕、何でもいい。加入します、シングル楽しみにしていてください、ライブで会おう、みたいな感じで」
「はぁ? ああ…そんな感じな…じゃ」
「3、2、1、はい」
「えーと…」
「夕、また顎が上がってる」
「ああん!?」
まったく、宵闇はうるさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます