4-3


 随分と時間をかけてセットして、前髪もやたらまっすぐに固められる。

 ガチガチに固められた俺の髪は、首を動かすと自分のもんじゃないみたいに不自然に揺れる。

「よし、完成だな。後は自分で着替えろ」

「あいよ」

 顎でかけてある衣装を指し示すと、ヤツは椅子に座る。マネージャーはいつの間にかいなくなっていた。

 俺は立って行って、衣装を手に取ってみる。これ、どういう構造になってんだ。

「おい宵闇、わけがわからん、この服」

「見たらわかるだろ。これはストールだ。これは上から羽織って…」

 もう一度立って来て、一つずつ解体しながら説明してくれる。意外に親切だな。パーツごとに分けた衣装は順に机に並べられた。

「この順で着ていけばいい」

「おう」

 俺は着ていたTシャツとジーンズを脱いで、まずはボトムに手を伸ばす。

「夕、脱げ」

「は?」

「パンツだよ。脱げ」

「ああ? セクハラか?」

 何だってパンツまで脱がなきゃなんねぇんだよ。

「お前は本当にバカだな。よく見ろ。そのボトム、サイドが透けてるだろ」

「ん? ああ」

 言われてみれば、確かにサイドがレースになっていて透けている。

「パンツ履いてたら、見える」

「ああー!? 何だこのふざけた服」

「いいから脱げ」

 渋々パンツも脱いで、ボトムに足を入れる。風呂屋の脱衣所か、ここは。股間が相当気持ちわりぃ。

 それから、端から順番に服を拾い上げながら着ていく。最後にストールをかけて、着替え完了だ。

「足のサイズは」

「26」

「ふん…」

 窓際にいくつか並んでいる靴やブーツから宵闇が選んだのは、エナメルの先がとがったブーツだ。

「これを履け」

「へい」

 言われた通りに足を入れる。サイズ感はぴったりだ。ただ、踵がめちゃめちゃ細くて高い。ピンヒールってヤツか。

「歩きにくいな」

「写真を撮るだけだ。文句言うな」

 何かちょっと笑ってんな。ムカつく。

「じゃあ、カメラテスト行くぞ」

 ドアに向かいながら、人差し指で俺を呼ぶ。ヴィジュアル系のヤツって、普段からこんなキザなのか?

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