六日目(四)

「ふむ。なるほど。確かにその方がいいかも知れない。全員への顔見せは夕食の時でもいいだろうからな」


スカウトさんは大きくうなずきながら、釣りキチさんの意見に賛意を示した。


「確かにそれはいいと思います。これから人が増えていくことを考えたら、受け入れ専門の役割の人がいてもいいかも知れませんね」


僕は自分の考えを伝えた。集団としてこらからやっていくためには、こういう仕組みづくりも必要になってくる。それは昨日あたりから考え始めていたことだった。


「そうね。昨日の私みたいに、いきなりここに来たらみんなビックリするでしょうから、受け入れる人は必要だけど、二人もいれば充分だと思うわ」


料子さんも賛成してくれた。その横で桂坂さんもうなずく。


「よし、それで行こう。受け入れ役は誰がやる?」


「スカウトさんはどうでしょう? この間、釣りキチさんが来たときの説明の仕方見ていて上手いなあ、と思ったんですが」


僕の意見を述べた。


「私は優子ちゃんがいいと思うわ。女の人がいたほうがいいし、私より事情を知ってるから」


料子さんの話は筋が通っていて、それについては皆、文句はないようだった。しかし、スカウトさんのほうは本人が疑問を呈した。


「うーん、俺がやってもいいんだが……ここは健太でどうだろう? 俺は設備とか見たほうがいいと思うんだ」


「僕ですか? でも、釣りが……」


「釣りなら午前中だけでいいだろう。午後は釣りキチさんだけでも大丈夫だよな?」


「はい。もう慣れましたから」と釣りキチさん。


「それなら……やります」


結局、僕と桂坂さん、最初の二人で受け入れることになった。僕の場合は、一番役に立たないから回されたような気もしないではないが。客観的に見て事実だから文句言う気もないけど。


昼飯後、僕と桂坂さんはあの場所に向かった。


「どんな人が来るのか楽しみでもあるけど、ちょっと怖い気もするわ」


桂坂さんはかなり緊張した面持ちだ。


「料子さんみたいな明るい人だといいけどな」


「さすがに一人で迎えに行く気にはなれないわ。とりあえず二人で行くことになって良かった。健太君でもいないよりはずっといいから」


「ちぇっ、僕はその程度の頼り甲斐なのかい」


桂坂さんと僕もこの頃になると、かなり軽口を叩ける関係になってきた実感がある。


「さあ、もうすぐ時間だ」


何度経験しても、この瞬間を前にすると、僕もまた緊張する。万が一、誰も来なかったらどうなるのだろう? そんな疑問もふと頭によぎったのだが、結果的には心配は無用だった。

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