六日目(ニ)
「ただし、地震対策は後回しだな。倒壊を防ぐにはちょっとやそっとの補強では無理だろう。そっちの方に人を割く余裕はないな」
「そうですね」
「それより風雨に対する備えのほうが大事かな。今まで無事に建っていたのだから、そうそう風で飛ばされるようなことはないとは思うが」
「家の修繕とか進めたらいいんでしょうか」
「いや、健太は釣りキチさんと一緒に釣りに行ってくれ。家の点検と修繕は出来る範囲で俺がやることにする。女性陣は食事の計画も含めた今後の生活面について、打ち合わせをしてくれるとありがたいな」
スカウトさんの割り振りに特に異論はでなかった。一旦、脱出ルートの探索は中断するということだ。いよいよここで生活してゆく覚悟をしなければならない。
僕らはその後、それぞれの役割に別れて行動した。午前中、僕は釣りキチさんに釣りを教わった。
家に戻ると、スカウトさんが出迎えてくれた。
「家の修繕進みましたか?」
僕はスカウトさんに真っ先に尋ねた。
「ああ、午前中はほとんどチェックだけだったがな。調べてみると朽ちてるところとかも結構あって、かなり補修しないといけないようだな」
「木はいくらでも調達出来るでしょうけど、道具があまりないですよね」
「そうだな。石の斧とか、石のナイフとか。基本的に金属がないんだからな」
「えっ、それはどういうことですか」
僕もそのことには気づいていたが、釣りキチさんは初めて知ったみたいで、スカウトさんにその話を詳しく聞きたがった。
「ここには鉄とか銅とかそういうものがまったくないんだ。道具でもほとんど石製か木製なんだよ。鉄の釘もないからこの家はどうやって建てられているかというと、驚いたことに石を加工して、継手として使用したり、組み木の要領で木を組み合わせたりして作られているんだよ」
「石の加工はどうやってやったんですか?」
「それはよく分からない。石より硬いものが見つかっていない以上、石同士で削って加工したのかも知れないが、それだとそれほど精巧な道具は作れないと思う」
なかなか興味深い話である。道具を揃えるのも一苦労というわけだ。
「まあ、俺が少しナイフとか道具の足しになるものを持ってきたから、少しは楽だけどな」
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