五日目(六)

僕たちは四人揃って家をあとにした。四人もいると道中も自然と賑やかになる。


「こうしてみると、随分、気が楽ですね」


僕は感じたことをそのまま口にした。


「そういえば、健太君は最初一人だったんだよな。そりゃ、寂しいわ」


釣りキチさんが同情するような感じで、答える。


「ええ、まあ。でも、寂しいというより、どうしようってパニクってたというのが実際の姿なんですけどね」


「ところで、俺はまだ一度しか見てないから何とも言えないが、この場所に誰かが現れるときって、毎回あんな感じなのか?」


スカウトさんが僕に尋ねてくる。


「あんな感じとは?」


「ほら、なんかぼやーっと霧がかかるような感じになって、その後霧が晴れて人が姿を現わすっていう」


「ああ、あれですね。僕は今まで3回見てるんですけど、毎回あんな感じです」


「そうなんだ」と桂坂さん。


「でも、僕自身の時はちょっと違うんです。気絶していて、起きたら森の中だったんですよね……」


その違いはなんなのか、僕には見当もつかなかった。


「そういえば、皆さんは向こうの世界で意識が朦朧としてここに来たんですよね。ここに現れた時はみんなもう起きた状態だったわけですが、その間はどんな感じなんですか?」


僕は誰ともなく尋ねた。


「うーん、眩暈がしたのは確かだけど、次に意識がはっきりしたのはここに来る瞬間だね。だから、眩暈がしたのはほんの一瞬だと思う」


最初に釣りキチさんが答えたのに続いて、桂坂さんも口を開く。


「私も同じね。ぐらっと来て、あっと思ったら、もうここに来てた」


「俺もだ」


スカウトさんも大きくうなずいた。僕は三人の話を聞いて、自分とは明らかに状況が違うのを感じていた。


「僕は意識を失った状態で最初ここにいたので、誰かに連れて来られた可能性を真っ先に疑ったんです。自分の見覚えないところですからね。でも桂坂さんが来た時、誰かに連れて来られたのではない、と初めて分かったんですよ」


「人為的ではなく、これが超常現象だと初めて認識したということだな」


その後もしばらく、出現当時の状況を振り返っていたが、やがて現場についた。


「今度はどんな人が来るのかなあ。本当に女の人だといいんだけど」


ここまで心細い気持ちをみんなに話していない桂坂さんだが、つい本音が出たようだ。


「そうだな。これで男だったら、男四人に女一人になるからな。それじゃ、ちと可愛そうだな」


「でも、こんなところに飛ばされてくる女性は大変だと思いますよ。パニックにならなけりゃいいんですが」


釣りキチさんが不安を吐露する。


「もうすぐ時間です」


僕はみんなに告げた。

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