五日目(五)
「最初、四人で迎えに行くのはどうでしょうか?」
「なんで?」
「もし、女の人なら私が家まで連れていって一緒についていてあげるのがいいんじゃないかと思うんですが…….」
その発想はなかった。やはり女性からの視点でみると、考えるポイントがだいぶ違うようだ。ちょっと感心した。
「なるほど。いい考えかも知れないな」
スカウトさんが少し視線を上に向け、うなずきながら言った。
「でも、一つだけ問題が……」
「何?」と聞いた俺にかぶせるように、釣りキチさんが割って入った。
「ああ、僕なら一人で大丈夫ですよ。もう道も分かりましたし、そんなに危険もなさそうですから」
ああ、そういうことか。やっと理解した。桂坂さんが別行動するということは、釣りキチさんが一人になるってことだ。
「いや、それなら健太に釣りキチさんと一緒に行動してもらったほうがいいな。俺は一人でも大丈夫だ」
確かに、スカウトさんなら一人でも安心だ。
「僕もそれでいいです」
「じゃ、それで決まりだ。誰が来るかで変わるけどな。食事終えたら、四人で迎えに行くことにしよう」
話がまとまったところで、僕たちは昼食をとった。振り返ってみれば、今日で僕がここに来てから、丸4日が経つことになる。持ってきた非常食は今のところまだ余裕があるが、確実に減ってきているので、そろそろ心許なくなってきた。
外に出ると、既に雨は止んでいた。風が心地よかった。
「意外と早く止んだな」
いつのまにか横に来ていたスカウトさんが、青いところが見え始めた空を見上げた。
「この分なら、午後は雨降らなそうですね。レインコートが邪魔だったので助かります」
「ははは。だいたい、学生なら普段、レインコートなんてあんまり着ないんじゃないか?」
「そうですね。バイクに乗る連中は、普段から来てますけど、僕は乗らないので」
「まあ、若いうちは雨の中、濡れて帰るのもいいさ。それも青春てやつだ」
僕は、いや、普通に傘さして帰ります、と突っ込もうと思ったが、なんとなくタイミングを逃して、ちょっと気まずくなった。
そんなことをしているうちに、午後の出発の時間になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます