五日目(四)
「それにしたって、それに何の意味があるのか、さっぱり分からん」
「僕たちが飢え死にしないように、とか」
釣りキチさんが思いつきを述べるが、僕にはそれもあながち的外れではないように思えた。僕たちを守る、見えない力が働いているのを薄々だが感じていたからだ。
「さて、話は変わるが、空の様子を見ると、午後からは天気は良くなりそうだな」
スカウトさんの言葉に、釣りキチさんが反応する。
「じゃ、また湖で魚釣ってきますよ」
釣りキチさんは目を輝かせて、とても嬉しそうな表情を見せる。心底釣りがすきなのだろう。
「ああ、頼む。何しろ、まだ食料が安定的に手に入る見込みは立ってないからな。可能性の高いことは今のうちにどんどん進めといた方がいいだろう」
「では、僕らはまた捜索ですか?」
僕はもう自分の中では半分決定事項になつている捜索スケジュールを思い描く。
「そうだな……だが、その前に。今日のお迎えは誰が行くかな?」
スカウトさんは「お迎え」と表現したが、このメンバーならそれで話が通じる。同じ時間に、また誰かが来ることはほぼ確実だ。いや、高々四人来たところで確実とまでは言えないかな。それでももうみんな九割がたそれを信じてると思う。
「私行ってもいいけど、一人じゃ心細いわ」
桂坂さんが、不安げな声を出す。
「そうだな。どんな奴が現れるとも限らないし」
スカウトさんはそう言って、しばらく考えこんでいたが、やがて口を開いた。
「今はまだ分からないことが多すぎる。どこにどんな危険が潜んでいるとも限らない。だから、迎えに限らず、原則二人行動を心がけたいほうがいいと思う」
「賛成です」
釣りキチさんが諸手を挙げて同意した。
「だから、湖も今日もまた釣りキチ君と優子ちゃんに行ってもらおう」
釣りキチさん、桂坂さんともにうなずく。
「迎えのほうは、俺と健太で対応する。それが終わったら、捜索ということになるが……ただ」
「ただ、何ですか?」
僕にはスカウトさんが何を気にしているのか分からなかった。
「ただな、今日来るのがどんな奴かでその後の対応は変わってくる」
「どういうことですか?」
「これで5人目になるわけだが、俺たちと一緒に捜索をした方がいいのか、あるいは家でぽつんと一人で待っていてもらったほうがいいのか? ってことだ」
なるほど。確かにここに来たばっかりの人を半日も家に一人で放置しておくのも、当人にとっては不安だろう。下手すればパニックになって、逃げたりし兼ねない。
「例えば、男ならそのまま一緒に捜索のほうがいいんでしょうかね?」
「うん。ただ一概には言えない部分もある。当人が極端に疲れていたりすれば、家で休んでもらうという選択肢もありだ」
「私、一つ提案があります」
桂坂さんが突然、口を開いた。
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