五日目(二)

僕はレインコートを羽織り、スカウトさんとともに、脱出ルートの捜索に再びチャレンジした。僕はカバンの中からビニール袋に包んだ地図を取り出した。



捜索には地図が欠かせない。僕は非常持出袋にノート1冊とマジックやボールペン、鉛筆なども入れていたので、初日から簡単な図を記入して、それを地図替わりに使っていた。


今はスカウトさんもそれを見て、行動計画を立てている。地図っていっても、湖と集落以外は、特に目立つものもないので、方向だけ間違えないように、今まで調べた場所のチェックが出来るように簡易的にか書いたものだ。


「この近辺は調べ尽くしてるから、この後はどこか当たりをつけて、まっすぐ歩いてみるしかないかな……」


スカウトさんは地図を見ながら、自らに言い聞かせるように言う。


「そうですね。あまり複雑に歩いて、もどれなくなっても困りますし」


「今日は足は大丈夫そうか?」


疲れやすい僕の体を気にして、スカウトさんが声をかける。


「はい。多分」


今のところはまだ問題なさそうだ。だが、雨の中で足場が悪いこともあるので、今日はあまり無理しないほうがいいかも知れない。


「雨で少し視界も悪くなっている。今日はペースを落として歩くが、もし何かあれば、俺に言ってくれ」


樹々が生い茂っているお陰で、幾分雨の強さも和らいでいるが、その分、暗くなり視界を遮られる。思った以上に、雨の中の捜索は難しかった。


「雷とか鳴ってたら、かなり怖いですね」


「ああ。雷が落ちることもあるからな。最悪、山火事だってある」


「もともと雷は苦手なので、正直、雷には会いたくないです……」


雷に直接当たったことはないが、子供の頃、すぐ近くの小屋に落ちたのを見たのがあまりに衝撃で今でもちょっとトラウマになっているところがある。


「ははは。健太は臆病だけど、正直だな。その性格気に入ったぜ」


スカウトさんは少し笑った。


「なんかスカウトさんて話しやすくて助かります」


「そうか。まあ、俺はいかつい顔してるんで、黙ってたらみんな声かけづらいみたいなんだけど、話すと気さくな人だな、ってよく言われる」


「僕もスカウトさんみたいに頼り甲斐のある男になりたいです」


「ははは。俺だってそんなに頼りにはならないけどな……。でも、ここに居りゃ、勝手に鍛えられそうだな」


「はあ……」


スカウトさんとたくさん話しが出来て良かったが、肝心の捜索では午前中、何も成果がなかった。

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