五日目(一)
翌朝、僕はピチャピチャと水が跳ねる音で目が覚めた。
「雨が降ってるわよ」
既に起きていた桂坂さんが教えてくれた。眠い目をこすりながら、外へ出ると
スカウトさんも釣りキチさんももう起きていた。どうやら僕が一番、寝坊助のようだ。
外を見ると、気持ちのいい雨が降っている。それほど土砂降りというわけではないが、ここに来てから初めての本格的な雨が降っていた。
「雨水はなるべく貯めておこう」
スカウトさんがみんなに指示を出した。僕らは手当たり次第、容器として使えそうなものを探してくると、雨水を受けた。
「この家、古いですけど、雨漏りとか大丈夫ですかね?」
釣りキチさんが尋ねる。
「今のところ、大丈夫みたいだけど」
桂坂さんが家の中を覗きながら答える。
「それにしても、なんか気持ちいいですね」
僕はこの雨の中に飛び出て、全身にシャワーを浴びたい衝動に駆られた。
「ははは。そうだな。健太、今にも飛び出たさそうだな」
スカウトさんには全部お見通しだ。
「そういえば、ここに来てお風呂入ってないですもんね」
桂坂さんが悲しそうな顔をする。男性はともかく、女性は入浴出来ないというのは大問題であろう。まだ、三日間とはいえ、その点はストレスになっているのかも知れない。
「もう少し暖かかければ、水浴びしたり、湖で泳いだりってことも出来るかもしれないですね」
僕は実感を述べる。流石に今の気温では、やや厳しい感じがする。
「午前中はどんな動きをしますか?」
僕はスカウトさんに尋ねた。
「そうだな。雨の具合が分からないが、この感じだと午前中はずっと雨かなあ」
「そうですね」
「そういえば、みんな傘とかレインコートとか持ってきてるか?」
スカウトさんはみんなの顔を見渡した。
「僕は非常用の簡易的なレインコートは持ってます」
僕は非常用持ち出し袋の中にレインコートを入れていたのを思い出した。
「私は傘もレインコートもないわ」
桂坂さんは買い物中だったから、雨が降りそうな天気でなければ、持っていなくて当然だろう。
「僕もないです」と釣りキチさん。
「俺は持ってるから、そうすると雨の中で動けるのは二人ってことか……。よし、こうしよう」
スカウトさんは両拳を打った。
「俺と健太でルートの捜索。優子ちゃんと釣りキチ君は、家の中を整理してくれ。使えそうなものがないか探してみて、使いやすそうにまとめておけば、色々助かる。余裕があれば他の家も見て回って、道具とか持ってきてもいいと思う」
特に反対意見はなく、午前中はそのように動くことに決まった。
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