釣りキチさん(五)
「それじゃあ、また明日もあそこに誰かがやってくると?」
「ええ、その可能性が高いと思います」
「うーん」
釣りキチさんは唸っただけで、うまく言葉がまとまらないようだった。
「なんでこんなことになってるんでしょうかね?」
少し考えたあと、やっと絞り出したのは当たり前すぎる問いかけだった。
「こっちが聞きたいくらいだよ。それに何故俺たちが? ってのも結構大きな問題だ」
「そう。それなんですよね。僕らが何か共通点があるかというと……何もなさそうなんですよね」
僕もスカウトさんに同意した。ミステリならミッシングリンクというところだが、何か僕らに共通点が見出せれば、これから来る人の予想も出来るかも知れない。そこから、この現象を解決する糸口に繋がれば理想的だ。
しばらく沈黙が続いたあと、スカウトさんがボソリと言った。
「それからなあ。一つ、心して欲しいことがあるんだ」
スカウトさんの真剣な表情を見て、何か大事なことであることが見てとれた。
「それはな、これから来る奴が良い人とは限らないってことだ」
「あっ!」
僕は思わず声を上げた。
「今ここに来てる四人は、とりあえずそんなに悪い奴は居なさそうだが、これからは分からない。どんな凶悪犯が来るかも分からないし、そこまで行かずとも、腹に逸物抱えた悪意を持った人物が来る可能性は充分ある」
「確かにそうですね。善人だけなんてことはないですよね」
釣りキチさんが答える。
「なんか怖い……もし、悪意のある人が来たら、トラブルだって起こるだろうし、最悪殺し合いとかも……」
桂坂さんは言いながら、怯えた表情を見せた。
「まあ、それはドラマや映画の見過ぎだと思うけど、この先、なんらかのトラブルは起きる可能性はたかいでしょうね」
と、僕も率直に意見を述べた。
「そうなったとき、どうする? そいつを受け入れるか、排除するか、選択を迫られるかも知れない」
「でも、あらかじめ考えておくのは無理ですよね。どんな人が来るのか、まったく分からないので」
「そうだ。健太の言う通りだ。だから、一応みんな警戒はしておいた方がいいが、考えても無駄ってことだな」
スカウトさんはそこで話を打ち切った。あまり暗い話題を続けても、眠れなくなるばかりで良い事など一つもない。賢明な判断だ。
「まあ、明日来る人が善人であることを祈りましょう」
釣りキチさんの一言のあと、俺たちは消灯して、眠りについた。
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