釣りキチさん(四)
家に戻ると、先に帰っていた桂坂さんたちが出迎えてくれた。
「魚、無事に釣れたわよ!」
嬉しそうに桂坂さんが言う。
「さすが釣りキチさんですね」
僕は、スカウトさんとともにクーラーボックスの中を覗いた。
「ところでこの魚、なんだろうなあ?」
知識豊富のスカウトさんでも首をかしげている。
「それなんですよ。僕も湖での釣りはあんまりしたことないのでわからないのかも知れませんが、この魚は今まで見たことないですね。似たような魚はたくさんいますけど、ちょっと違うんですよね」
釣りキチさんすら分からないほど、珍しい魚なのだろうか? 僕は魚のことはほぼ無知に等しいレベルなので、何も意見は出来ないが。
串に刺して、じっくり焼き上げたあと、みんなで食べた。
「美味しい!」
桂坂さんが叫んだが、僕らも同じ想いだ。久しぶりに食べる魚が料理の美味しいこと。どんな高級レストランで食べるより美味しいのではないか? まあ、高級レストランにほとんど縁はないのだけれど。
「うん、これは美味いな。でかした、釣りキチ君」
スカウトさんもべた褒めだ。
「いえいえ、とんでもない。趣味が活かされて僕も嬉しいです」
釣りキチさんは謙遜しているが、何も取り柄のない僕から見たら、釣りキチさんは眩しすぎる。
「これで、食料の問題は、少し解決したわね!」
うん、そうだ。とりあえずタンパク質の補給は出来そうだな。最悪、気持ち悪い虫とかも食べる覚悟はしてたから、これで一安心。
久しぶりの腹一杯の食事を味わったあと、寝る用意をしたが、そこでやはり、今夜はどうしようか、という話になった。
「そうだな。まだ4人だから同じ家で寝てもスペースは充分あるだろ。どんな危険があるか分からないから、別々に寝るのはよした方が良さそうだな」
スカウトさんが考え考え答えた。僕も釣りキチさんも概ねそれに賛同した。
「でも、流石にこれからどんどん増えてくるようなら、ちゃんと考えなくちゃなりませんね」
僕は以前から気になっていた可能性に言及した。僕の言葉を聞きとめた釣りキチさんが、口を挟んだ。
「ちょっと待ってください。これからどんどん増える、ってどういうことですか?」
「あ、そうか。釣りキチ君にはまだ詳しく話してなかったんだな。あ、うーん、健太、説明出来るか?」
スカウトさんが僕に話を振ってきたのは、おそらく僕が一番最初にここに来たからだろう。説明自体は、スカウトさんがしたほうが分かりやすいと思うのだが、振られた以上、ここは僕が説明するべきだろう。
僕は釣りキチさんに今までの経緯を全部説明した。毎日、同じ時間に同じ場所で、新しい人が送り込まれてくる、と。釣りキチが最初に来たばかりのときは、そこまで詳しくは説明していなかったのだ。
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