釣りキチさん(二)
「ええと、これからどうします?」
とりあえずの説明が終わったあと、僕はスカウトさんに尋ねた。
「そうだな。せっかく釣りキチ君が来たんだから、湖で釣りしてもらおうか。見たところ道具も揃っているみたいだから、出来るよな?」
スカウトさんに急に振られた釣りキチさんは、一瞬、キョトンとしていた。
「あ、釣りですか……どこかに湖があるんですか? 実際にその湖を見てみないことには何とも言えませんが、魚がいれば、多分出来ると思いますけど」
「ああ、こここら1時間ぐらいのところに湖がある。魚もいる。なんとかあれを釣って欲しい」
「そうですか。分かりました。釣れるかどうかは分かりませんけど、やってみましょう」
釣りキチさんは、最初は戸惑っていたものの、スカウトさんの説明に納得したのか、最終的にその提案を了承した。
「それじゃ、健太君に……あ、優子ちゃんがいいかな? 優子ちゃん」
スカウトさんが桂坂さんの名を呼ぶ。
「はい」
「すまんが、釣りキチ君を湖まで案内してくれないかな。午後はとりあえず、ずっと一緒に釣りをして、夜までに戻ってきてくれたらいい」
「分かりました」
「俺と健太君は、引き続いて、ルートの捜索をしよう」
「はい」
スカウトさんの差配で方針が決まった。僕ならこうテキパキとは決められなかっただろう。やはり、スカウトさんは頼もしい。
僕たちは、さっそく二手に別れた。スカウトさんと僕は脱出路の調査に、釣りキチさんと桂坂さんは湖へと向かった。
これで何度目の調査になるのだろう? 一向にめぼしい成果はあげられないままだが、それでもスカウトさんにとっては色々と興味深いものがあるらしく、ルート探索しながらも、途中で木の実を採ったり、キノコを探したりもしていた。
今のところ、幸いにも天気がいいので助かっている。レインコートはこの世界に持ってきてはいるが、雨の中での行動は視界も悪く、足元も動きにくくなることからなにかと不便であろう。
「天気が良くていいですね」
僕は素直な感想をそのまま伝えた。
「そうだな。まあ、不幸中の幸いといったところか。気温もちょうどいいしな」
「季節としては、初夏なんでしょうか?」
「うーん、どうだろうなあ。元の街と同じ季節なら初夏だが、実際は秋ってこともあり得るからなあ」
「雨が降ってないせいか、少しカラッとしてますね」
「そうだな。梅雨ならもう少し、湿っていてもおかしくないが、木の葉とか見るとどちらかというと乾燥しているようだな」
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