スカウトさん(四)

翌朝も3人でルート探索を開始することになったが、ちょっと水不足になったので、その前に湖に水を取りに行くことにした。


1時間かけて湖にたどり着いた僕らは、一昨日と変わらずキラキラ緑色に光る湖面を目にした。


「飲み水としても使えますかね」


「うーん、本当は雨水のほうがいいんだが、ろ過と加熱さえきちんと出来れば湖の水でもいけるかもな」


アニメや小説で、葉っぱに付着する露を集めて飲み水に利用しているシーンを見たことがあるが、まあ、そんなことも出来るかも知れない。


いずれにしろ、飲み水に関しては、各自の持ち物にまだ少し残りがあるので大丈夫そうだが。


家にあった桶のようなものを三人それぞれ持ってきていたので、湖で水を汲んで戻ってきた。スカウトさんは力もあるらしく、僕の二倍ほどの水を軽々運んでいた。流石だ。


「まったく女の子にこんなもの持たせて!」


桂坂さんはぶつぶつ文句言っていたが、ここは一人でも多く労働力が欲しいところだから、仕方ないよな。


水は生活用水として使うこととして、午前中残りの時間はルート探索にあてた。


桂坂さんは、水運びで相当疲れたらしく「私、パス」とギブアップ状態だったので、スカウトさんと2人で出掛けた。


「水はとりあえずなんとかなりそうですね」


「そうだな。雨が降れば、雨水のほうがまだ飲み水に転用しやいと思うが」


「僕が来てからまだ一度も雨は降ってないですね。天気の良い日が続いています」


「まあ、そのうち雨も降るだろう」


僕とスカウトさんは、歩きながらお互いのことを話した。


スカウトさんは、若い時に一度結婚して、すぐに別れたらしい。子供はおらず、その後は独身のまま。色んな場所を転々としていて、時にはボランティアみたいなこともしているそうだ。


僕は、自分が将来何になりたいか、何をやりたいかが自分でもよく分からない、とスカウトさんに話した。


「別に急いで決める必要はないと思うけどな。若い時は色々チャレンジすることのほうが大事だ。わざわざ自分の可能性を狭める必要はない」


人生経験を積んだスカウトさんの言葉は、僕にとって貴重なアドバイスだった。もっとも、この状況では、普通のまともな将来が訪れるとは思えないが。


「健太、水の音には神経をとがらせとけよ」


「あ、はい」


「川が見つかれば、一気に展望が開ける」


「そうですね」


「川に沿って下れば、麓に出られる可能性が高いし、食糧調達の幅も広がるし、それから場合によっては、飲み水に使える湧水にもつながってるかも知れん」

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