スカウトさん(三)

その夜は、3人で寝ることになった。桂坂さんが厠に行っている間に、僕はスカウトさんと家の中で座り込んで荷物の整理をしていた。


「ええと、今夜、寝るのどうします?」


僕はスカウトさんに訊いてみた。


「うん? そうか、優子ちゃんがいるんだったか。昨日はどうしたんだ?」


いつの間にかスカウトさんは、桂坂さんのことは優子ちゃんと呼ぶようになっていた。


「昨日は二人で寝ました。あ、一緒に寝たわけじゃないですよ!」


僕は慌てて誤解しそうなところを弁明する。


「そうか。じゃ、今日は三人で寝るか。俺がいるとお邪魔か?」


スカウトさんは俺の弁明はさして気にしてなく、冷静に考えているようだった。


「いや、邪魔だなんて! 夜は何があるか分かりませんから、僕も三人同じ部屋で寝たほうがいいと思います」


「優子ちゃんにも確認しないとな」


まあ、男ニ人と女一人なので、逆に安心して眠れるんじゃないだろうか、桂坂さんは。


戻ってきた桂坂さんに確認すると「うん、それでいいよ」とのことだったので、僕らは三人で横になった。


夜中に目が覚めた僕は、またしても泣き崩れている桂坂さんを目にすることになった。両親や兄弟、友達のことなんか思い出しているんだろう。僕も残して来た両親のこととか結構気になる。


僕は大学進学を機に、横浜の実家を出て、一人暮らしをしていたが、通おうと思えば通える距離なので、たびたび実家に顔を出していた。地元の友達もいるし、実家には中学生の弟もいる。


みんな今頃どうしているだろうか? 僕が居なくなって大騒ぎになっているのだろうか? いや、もしかしたらいまだに誰にも気づいてもらえなかったり……


僕はそう考えて苦笑した。まあ、僕の交友関係ならあり得なくもない。大学だって講義に出なくたって誰も気にするやつなどいないし。色々想像はしてみるが、謎だらけで実際のところ、何がどうなっているのかさっぱりだ。


一方、スカウトさんはガーガーいびきをかいて眠ってた。本当にタフな人だ。この程度のサバイバルなんて、何度も経験してるんだろうなあ……。


でもスカウトさんが居てくれて随分助かった。これ以上の生活は僕じゃどうにもならなかったかも……。僕はスカウトさんに会えたことに感謝しつつ眠りについた……。

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