桂坂さん(四)

翌朝、僕が目を覚ますと、そばに桂坂さんの姿はなかった。一体、どこに行ったんだろう? と僕は目をこすりながら考えた。

水があまりないのでろくに顔も洗えない。やはり、色々と不便だな、と感じた。


寝ぼけたままで、とりあえず外に出てみると、空はやや曇り空だった。そして、大きく背伸びをして空を見上げている桂坂さんがいた。


「おはよう」


「おはよう……」


桂坂さんの元気な声に比べ、僕の挨拶は蚊の鳴くような声になってしまった。


「早いね……」


「何、言ってんのよ。もう6時よ」


桂坂さんは、呆れた顔をする。


「6時って……早いじゃんか」


「あのね……あたしたち、昨日の夜はあんなに早く寝たのよ。6時でも充分寝過ぎだと思うわよ」


「いや、まあ、それはそうなんだけど」


「私さあ、普段は5時には起きてるわよ。朝、勉強してたから、色々忙しいの」


「嘘だろ! 僕なんか9時頃までは寝てるよ」


「典型的な夜型生活ね。怠惰な暮らしぶりが目に浮かぶわ」


「バイトとか色々あるんだよ!」


僕は一応弁解はしたが、まあ、だらりとした生活をしてたのは確かなので、あまり強くも言えない。


「ねえ、今日、朝ご飯とかどうするの?」


「どうって……僕は普段食べてないからなあ」


「そりゃ、9時まで寝てるんだからそうよねえ。私はどうしようかしら」


桂坂さんは、首をちょっと傾ける。


「いつもはちゃんと朝ご飯食べてるんだけど、この際だからダイエットでもしようかしら」


桂坂さんのスタイルからすれば、ダイエットなど必要ないような気もするが、こればっかりは女の子の気持ちは分からない。


「まあ、食料の問題は避けて通れないしな。節約できるときに、節約しておいた方がいいかもな」


結局、二人とも朝食抜きということに落ち着いた。だが、初日はこれでいいとしても、いつまで続けられるかどうか。不安は尽きない。


「今日はどうしようか?」


少し落ち着いて、僕もばっちり目が覚めたところで、午前中の動きを確認することにした。


「そうね……また道を探す?」


桂坂さんが上目遣いで僕を伺った。


「湖に水を汲みに行く、っていう選択肢もあると思うけど」


「ああ、なるほど。確かにそれもいいかもね」


桂坂さんが拳を打つ。


「でも、湖を往復すると、それだけで結構時間かかるからなあ。残りの水の量を考えると、明日とかでも良さそうな気もするんだよね」


僕は冷静に分析した。


「うーん。どっちを優先すべきかってことよね?」


「とりあえず、昨日発見した湖に行くのはいつでも出来るんだから、今日は脱出ルートを調査したほうがいいと思う」


僕なりの結論を語った。


「そうね。それでいいと思う」


こうして僕らはまた、昨日と同様、捜索を開始した。

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