傍観者の光景
メディアの
数百年に死んだとされていた魔族の
第一次人魔大戦においても激闘を行った事を伝えられている二人は、互いに罵り合いながら拳を交え始める。
その
始めこそ地面に身を置き視認できない程の速度で身体全体を使った激突を行っていた二人だったが、身体から漲る
そして空気を切り裂くような炸裂音を響かせながら、人間大陸に
その
更に雷まで鳴り響き始めると、人間大陸の人々は再び起きる異常気象に動揺と困惑を強めた。
「――……また嵐か……!?」
「さっきまで見えてた樹が消えたけど……アレ、幻覚だったのか……?」
「そうだよな……。あんなデカい
「ま、また雷が落ちたっ!?」
「近いぞっ!?」
突如として現れ消えたマナの
しかし吹き荒れ始める暴風は雷鳴を鳴り響かせ、地上に雷光が降り注いだ。
その
山に落ちれば直撃した部分を吹き飛ばし、町や都市に落ちればその周囲一帯が焼け落ちて火災を起こし始めていた。
ログウェルとエリクの激闘と同様に、二人の
それを離れた孤島から同じように視認しているシルエスカや|
「――……なんだ! 今度は、何が起こっているっ!?」
「
シルエスカと
すると僅かに考えた様子を見せた『青』は、自身の状況判断で事態を述べた。
「この現象、恐らく
「まさか、ログウェルが死んでいなかったのか?」
「いや、恐らくは別の
「!?」
「儂の推測が正しければ、
「……何者かが、
「そうとしか考えられん。そしてそれが出来るのは、恐らく……メディアだ」
「!」
「奴は『
「逆?」
「
「な……!?」
「だとしたら、
「ジュリア……。……まさか伝承に聞く、魔族の王……【始祖の魔王】か!?」
「魔大陸では、今でも【
現状から様々な可能性を思考した『青』は、メディアがマナの
それは正解とも言うべき答えだったが、同時に『青』には絶望の表情を浮かばせた。
「……だが、【
「え……」
「【
「五十億……!?」
「その時の儂も殺されたが、辛うじて隠していた本体のおかげで生き永らえる事が出来た。……だが【
「……ならば、もう一人の……【
「恐らく、傭兵エリクだろう」
「!」
「あそこに居る
「……私達は、また何も出来ないのか……ッ」
「大気中の
「……エリク……ッ」
そう述べる『青』の言葉に、その周囲に居る者達は神妙な面持ちを浮かべる。
そうした中で転移が封じられた『青』達は、
それに歯痒い思いを抱く
そして【
しかしそんな願いとは別に、【
それに巻き込まれそうだったのは、バルディオスが修理する
「――……ちょっとぉ! まだ直らないのぉ!? なんか……滅茶苦茶やばそうよぉ!」
「ぅんなこたぁ、分かっとるわいっ!! ……クソッ、こっちの
「えぇっ!?」
「
「さっきからやってるけどぉ、
そして最後の綱とも言えるクビアの魔符術を用いた転移魔術も、何故か使用できなくなっていた。
そんな二人のやり取りを傍で聞いていた『白』の
「……時空間自体が歪んでしまっておるなぁ。これでは魔法も魔術も転移はできまい」
「えぇっ!?」
「空間や時空間に干渉して行使する魔法や魔術は、それ以上の
「そ、それってぇ……逃げられないってことじゃなぁいっ!? なんでそんなに落ち着いてるのよぉ!」
「いや、だって。余はその気になればジュリアに勝てるしさぁ」
「だったら戦って来てよぉ!」
「嫌だよ、
「……は、
「だから
「……やだぁ、コイツもコイツで結構イカれてるわぁ……」
そう言いながら腕を組んで外を視ている
するとそうした一行に対して、地面に着地しながら駆け寄る声が向けられた。
「――……お爺さん! 修理、終わったっ!?」
「マギルス、戻ったか! ――……そいつ等はっ!?」
「やられてたし、怪我もしてるし! 狐のお姉さん、お姉さん達を治せるっ!?」
「ちょ、ちょっと待ってぇ!」
華奢なアルトリアとリエスティアを両腕に抱え、ケイルとユグナリスを片手に持って来たマギルスは、怪我をした四人を地面へ寝かせる。
そしてクビアに治癒を頼むと、転移魔術と異なり
酸欠と脱水症状を引き起こし同時に肌に火傷を負っていたアルトリア達は、徐々に治り始める。
しかし同じ状況となっているリエスティアに対しては魔力を用いた魔符術の治癒が行えず、クビアは焦る様子を浮かべた。
「どぉ、どうしようぉ。
「……お母さん……っ」
リエスティアの治癒が出来ない中、
そしてその幼い顔には涙が浮かび、傷付き倒れた母親の腕に触れることしか出来なかった。
そんな
「お爺さん、どうなの?」
「……修理は無理じゃった。……ここから離れるなら、走って逃げるしかないが。正直、この機体と瓦礫が盾になってくれているおかげで、今の儂等は生きておられるからなぁ……」
「うん。外に出たら多分、
「む? まぁ、そりゃな」
「じゃあ、出来るかな。……お爺さん。僕にこの
「えっ。……分かった!」
外で巻き起こる衝撃波と吹き飛んで来る瓦礫が
それに驚いたバルディオスだったが、マギルスが何をしようとしているのかを理解し、理由を聞かずに応じた。
するとマギルスは自ら
そしてバルディオスの見様見真似で
「やれる?」
『――……ヒヒィンッ』
「へへっ、そうこなくっちゃ。――……じゃあ、やるよっ!!」
『ブルルッ!!』
マギルスと
そしてそれが
更に青い魔力を纏った機体は、その顔を僅かに上げて動き始める。
しかし操縦席に座るマギルスは手や足の
それを見上げるバルディオスは、マギルスが行っている事に気付きながら呟く。
「
『――……お爺さん! 他の人達を、
「あ、ああ!」
マギルスの
そして操縦席からの
しかしそうした場に参加しない『白』の
「ちょっとぉ! アンタも乗るなら手伝ってよぉ!」
「ん?
「え……えぇ?」
「もうすぐ、もっと厄介になるだろうからな。念の為に余は残った方が良さそうだ」
「もぉ、もっと厄介ってぇ……これ以上ぉ、何が起こるのよぉ……」
「まぁ、それは厄介になってからのお楽しみだ」
「……本当にぃ、こういう人達って理解できなぁい……」
その場に残ることを告げた
するとマギルスは機体の両手に伝わっている
『お爺さん!
「おう。……そうか、この娘は『黒』だったな。機体に通した魔力を遮っておったのか。……これでどうじゃ?」
『うん、オッケー! ――……白いおじさん、本当に置いてっていいの?』
「ああ、
『あっ、向こうの白い人にもそれ言われた。……じゃ、行くよ! みんな、落ちないようにしてね!』
マギルスはそう言いながら、機体の両手を乗せた者達を指で覆いながら守る。
そして故障している機体を
すると機体は上昇を始め、押し寄せる衝撃波と瓦礫に耐えながらその場から離れる。
それを見送る
「
『白』としての
そしてその場所では、【
こうして伝説の
そしてその決着は、まさに世界さえ壊しかねない二人の
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