冤罪の首謀者
その居所を知っているアルフレッドが待機している
そして不時着しているもう一つの
するとその来訪を察知していた義体姿のアルフレッドが
「――……エリク殿。貴方もここにいらっしゃるとは」
「……貴方も?」
「先日、アルトリア嬢とケイティル殿もここに御越しになりました。貴方も、七人いるという
「!!」
向かい合うアルフレッドの話を聞き、アルトリア達が
そしてその目的が
「……そうか、やはりアリア達は……。……それで、アリア達は何処に?」
「『青』を探していましたので、彼の
「そうか。その
「敵だった私に、『青』が自らの
「それはそうか。なら、『青』と連絡する方法は?」
「
「そうなのか、知らなかった。……
「ええ。なので
「そ、そうか」
通信装置が存在している可能性を考えなかったエリクは、数時間を掛けて
そんな内心の動揺を僅かに見せるエリクへ、アルフレッドは改めて訪問の理由を尋ねた。
「それで、どのような理由で御越しに? もしやアルトリア嬢達を探しに、ここまで?」
「……それもあるが、お前に聞きたい事があって来た」
「私に? そういえば、アルトリア嬢達には御伝えできませんでしたが。
「もしかして、メディアという女か?」
「既に御存知でしたか」
「ウォーリスから聞いた。俺が聞きたいのは、その女の行方についてだ。お前は、何か知っているか?」
「……
「そうなのか」
「ただ、私が記憶している彼女の映像なら有ります。ただし偽装を施していた姿となりますが、それでも御覧になりますか?」
「あ、ああ。頼む」
「では――……これが私とウォーリス様が視た、
「……!」
義体の機能を駆使するアルフレッドは、自身が確認した
それは
それを見たエリクは自分の知らない技術に驚きながらも、再現された
するとその顔を見た時、名前の時と同様に微かに残る記憶が刺激された。
「……この女、見た事がある……。……俺は、何処で見たんだ……?」
「彼女を御存知で?」
「……見覚えはある。だが、何処で見たのか思い出せない」
「そうですか、それは残念ですね。……良ければ、この映像を持っていきますか?」
「持っていく?」
「貴方の
「……そ、そうか。なら、頼む」
「では、貴方の
見知らぬ言葉を聞いたエリクは、辛うじてアルフレッドの言う意味を理解して応じる。
そして二人は着陸した
すると
「……そうだ。ザルツヘルムという男は、何処だ?」
「ザルツヘルムですか? どうして彼を」
「メディアという女の事を調べさせていたと聞いた。それにお前達の中では、最もその女の事を知っているかもしれないと」
「確かに彼は、ナルヴァニア様から依頼された彼女とも面識があります。ただ彼女についての情報は既にウォーリス様や私にも届けられ、見聞しているはずです。先程以上の情報は、恐らく得られないかと」
「そうなのか。……だが俺は、やはりあの女と名前に憶えがある。他にも情報を持っているかもしれないなら、ザルツヘルムという男に会って聞きたい。さっきの通信装置というので、話せる場所にいるか?」
「いいえ。彼は現在、『青』によって拘束されています」
「!」
「彼は死霊術によって
「……お前は、拘束されていないのにか?」
「私は義体の機能の武装を凍結され、
「幽閉……。……だからお前は、ウォーリス達と一緒に来なかったのか」
「はい。ウォーリス様と彼の大事な者達の為に、私は貴方達と再び敵対するつもりはありませんので」
機械的で淡々とした口調で話すアルフレッドだったが、その言葉はウォーリスに対する忠誠心が厚い事が分かる。
そうした言動をするアルフレッドに対して、エリクは改めて問い掛けた。
「お前はどうして、ウォーリスに協力していたんだ?」
「……私は『聖人』として生まれながら、遺伝病によって自由な肉体を持てませんでした。そんな私を騙し駒として扱っていたのが、ゲルガルドです」
「!」
「それから三百年間、私は反意を持ちながらも反逆を実行する気にはないまま、ゲルガルドに従い続けた。。……ゲルガルドに逆らい消された者達を、数多く見ていたからです」
「……」
「そんな彼等も、ゲルガルドに協力する私に対して憎悪だけしか向けなかった。……ウォーリス様だけだった。私の苦渋の想いを理解し、自ら友となるよう手を差し伸べてくれたのは」
「!」
「だから私は、ウォーリス様と共にゲルガルドへ反逆する決意をした。例えその結果が悲惨な末路であったとしても、三百年間の苦しみに比べれば遥かにマシだ。……私を『友』だと言ってくれたウォーリス様の為ならば、卑劣だと罵られ悪辣だと批難されても悔いはありません」
「……そうか」
アルフレッドにとってウォーリスがどのような存在か知ったエリクは、彼等の関係がアリアと自分の関係に類似している事を改めて理解する。
あるいは彼等の姿は、
そうした会話を行った後、二人は
すると
「この
『
アルフレッドの言葉に応じる
するとその
『
「これで、彼女の姿を
「そうか、ありがとう」
「いえ、私は貴方に御礼を言われる権利は無い」
「ん?」
「私は貴方達の傭兵団を罠に嵌め冤罪を着せ、王国から追いやるよう仕向けた首謀者です。お忘れですか?」
「……そうだったな。……お前達が俺をフォウル国に向かわせたいという理由は聞いた。だがどうして、黒獣傭兵団やあの村まで巻き込んだ?」
「確かに、他にもやり方はありましたが。ただ貴方だけではなく、黒獣傭兵団そのものを陥れる為には必要な犠牲だと割り切りました」
「黒獣傭兵団そのものを、陥れる……?」
「黒獣傭兵団を居場所を失くし、苦しめ汚名に満ちたまま排除する。それが
「……誰かに、
「いいえ、ウォーリス様もその依頼を請けただけです。……何せその依頼主は、ウォーリス様の母上であるナルヴァニア様。その騎士を務める、ザルツヘルム殿からでしたから」
「!?」
「私もウォーリス様もその依頼を請け、貴方を国外に出すついでに黒獣傭兵団を追い詰める
黒獣傭兵団に冤罪と汚名を着せるよう依頼した人物がザルツヘルムだと初めて知り、エリクは驚愕を浮かべる。
その驚きを見たアルフレッドは、冷静な面持ちで言葉を続けた。
「貴方には、ザルツヘルム殿に聞くべき事が多いようだ。……先程、私が提供した
「……いいのか? 俺が会いに行って」
「むしろ、貴方は会うべきだ。元
「!」
「後の話は、ザルツヘルム殿に聞いてください。私からはこれ以上、その件について話すつもりはありません」
「……分かった」
やるべき事を終えたアルフレッドは
それを止めずにそのまま見送ったエリクは、ザルツヘルムに会う理由を増やしながら
「ザルツヘルムが居る場所へ、向かってくれ」
『
こうしてエリクを乗せた
それをアルフレッドに見送られ、夕暮れに染まりつつある空へ
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