未来の欠片
しかし子供達は未来において『黒』からの頼みを既に聞いており、彼女達の来訪を待ち協力する様子を見せた。
またしても『黒』の予知が的中した形で進行する状況に、アルトリアは改めて表情を強張らせる。
そんな彼女から子供達の話す言語の意味を教えられたケイルもまた、表情に訝し気な雰囲気を浮かばせながら呟いた。
「――……アタシ達が……いや、
「ええ」
「でも『黒』は、この状況も予知した上で『世界が滅びる』って予知もしてたんだろ? ……大丈夫なのか、このまま進んじまって」
「私も、そこを懸念してるのよ……」
二人はそうした話を交え、『黒』が予知する行動を継続すべきかを悩む。
そんな会話を傍で聞いていた『青』は、僅かに思考した後に口を挟む形である事を述べた。
「――……『黒』は、未来の分岐点を選ばせる」
「え?」
「奴は未来の選択肢こそ教え導く事はあるが、未来を変える分岐に直接的に干渉しない。それも制約であろうが、未来の分岐はその者に委ねる場合がほとんどだ」
「……つまり、『黒』は私達に未来の分岐点へ導こうとしてるってこと?」
「
「……いずれ来るだろう未来の分岐点に、今は私を導いている最中ってことね」
「そうだ。その為に『
「……」
『青』は長年に渡り転生し続ける『黒』の知識から、その行動原理を読み解く。
それを聞いた二人は渋い表情を強めながらも、小さな溜息を漏らしながら声を向け合った。
「……とりあえずは、進むしかないってか。その分岐点とやらに」
「
改めて『黒』が用意していた道を進む事を選んだ二人は、
そうした二人の様子を改めて確認した『青』は僅かに微笑んだ後、目の前に近寄って来た子供達に尋ねた。
「『お前達に聞きたい。お前達の中に、
「『僕達の
「『うむ。この者達は、自分と同じ
「『うーん……』」
『青』は
すると子供達は悩む様子を見せながら互いを見つめ合った後、全員が何かに気付き声を発した。
「『あっ、そうだ!』」
「『あの子だよね、きっと』」
「『多分、そうかなぁ?』」
「『僕達と違った
「『でも、あの子は……』」
「『……全員、心当たりがあるのか?』」
子供達が次々と思い出すように話す言葉に、『青』は再び問い掛ける。
すると全員が頷きながら微笑みながらも、僅かに困った表情を浮かべて教えた。
「『あのね、その子はまだここに来てないの』」
「『その子が来たのは、ずっと遅くて。えっと、どれくらいだろ……』」
「『
「『あの時も、先生が連れて来てくれたんだよ』」
「『先生だったら、知ってるんじゃないかな? その子が今、何処にいるか』」
「『なに?』」
「……
「なんだよ、何言ってるか教えろよ」
子供達の言葉を聞いた『青』とアルトリアは、互いに彼等の伝える年数が現在と重なる事を知る。
その言語を理解できないケイルは再び問い掛けるが、そんな二人を見ながら『青』が自分の記憶からある出来事を思い出した。
「……そうか、まさかあの時に見つけた……!」
「あの時?」
「……別未来の当時、儂はガルミッシュ帝国とベルグリンド王国の戦争状態に至る原因となった同盟都市の襲撃について状況を観察していた。その時に一つ、気になる事が起こっていた」
「気になること?」
「
「!?」
「襲撃当時。その
「……まさか、その樹海って……!?」
「五百年前の天変地異にて
「!!」
「そして、その
「!?」
「……それって、もしかして……!!」
「部族の
「!!」
「そして情報から推測するに、少年は王子アレクサンデル。そしてマシラ一族を守る魔人ゴズヴァールに間違いはないはずだ。現にあの二人はその未来では、マシラ共和国に戻っているからな」
別未来において、当時記憶を消失していたアルトリアが帝国の女帝となった原因である同盟都市の襲撃で起きていた出来事の一端を、二人は初めて『青』に教えられる。
それを聞いたアルトリアは初めて知る情報に驚愕を浮かべ、青い瞳を見開きながら問い掛けた。
「まさかお兄様は、同盟都市が襲撃された後でも生き続けてたの……!?」
「……いや、そうとは言えん」
「え?」
「当時の
「……ッ」
「マシラ王ウルクルスも同盟都市の襲撃で死亡が確認されている。状況から鑑みて、ゴズヴァールは
推測を交えた別未来の話をする『青』に、当時の記憶を持つアルトリアは渋い表情を強める。
しかしそうした話を交える二人を前にしながら、ケイルは驚きながらも首を傾げて話を戻した。
「興味深い話だとは思うがよ。それが
「……恐らく、当時の帝国側も同盟都市から飛び立つ
「!?」
「同時に王国側が陰謀として襲撃を起こしたという二派に別れ、それぞれに討伐軍が編成された。一方が王国側に。そしてもう一方は、樹海へ帝国軍の大群を差し向けたのだ」
「……そして女帝になった
「そうだ。しかしお前は王国軍を討伐した後、自軍である帝国軍も滅ぼした。一方で南方に攻め込んだ帝国軍は
「……!!」
「その後に
「!?」
「その赤子は虫の息ながら、遺跡の中に置かれていた。恐らく戦禍から逃す為に隠したのであろうが、どうやら親は死んでいたらしい。……しかしその赤子には、ある紋様が顔や身体に塗られていた」
「紋様……?」
「特別な薬液で塗られた為か、その紋様は洗っても取れなくてな。だが
「!」
「その事から、その赤子は樹海の部族……その
「じゃあ、その子が……!?」
「恐らく、『特殊な
『青』から別未来の出来事と保護したという赤子の話を聞いた二人は、改めて表情に渋さを高める。
それは一つの懸念を更に生む事になり、互いがその危機感を言葉として呟いた。
「……おい。未来が変わったってことは、その子供が生まれてないとか……そんな事になってねぇだろうな?」
「それは、可能性としてあるわね。……でも
「な、なんだ?」
「……ケイル、樹海に行くわよっ!!」
「はぁっ!?」
「その子供の母親に心当たりがあるわ、実際に確認しに行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待て! まだ話を聞き終わってないだろがっ!?」
「これ以上の手掛かりは無さそうだし! じゃあ、行くわよっ!!」
「馬鹿! だから待てって――……」
別未来で保護されたという赤子の母親に心当たりに思い至るアルトリアの突飛な行動に、再びケイルは巻き込まれる形でその場から転移する。
そんな二人を呆然と見送る事になった『青』と子供達は、呆れながらも微笑む様子を見せていた。
こうしてアルトリアとケイルは、五人目となるであろう
それは変化してしまった未来において、生まれるかも
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