背けぬ選択
『
それを確信するアルトリアに代わり、『赤』の
そうしたユグナリスの活躍を他所に、アルトリアは結界と共に浮かせているシエスティナやウォーリス達を瘴気が失せた
するとカリーナとリエスティアの
「――……大丈夫よ。どちらも
「そうか……」
「問題はアンタの方よ。……ゲルガルドを
「……つまり、もう二度と自分自身で魔法を行使できない。そういう事だな?」
「ええ。……
「……それが、父親として果たすべき責任だと思ったまでだ」
地面に膝を着いた状態を
それでも
そんな彼の傷付いた
すると意識の無い二人の中で最初に目を覚ましたのは、カリーナだった。
「――……あれ……ここは……?」
「カリーナ……」
「……ウォーリス様。……ウォーリス様っ!?」
そして朦朧とした意識を緩やかに覚醒させると、その目に映るウォーリスの姿に驚愕を浮かべて跳び起きた。
ウォーリスの
それ故にカリーナは驚愕しながら駆け寄り、彼の傍に付きながら問い掛けた。
「ウォーリス様、これは……。……だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。心配は要らない」
「で、でも……こんなに傷が……。……そうだ、
「落ち着きなさい。ゲルガルドは倒したし、リエスティアは無事よ」
「ほ、本当ですか! ……あれ、なんでアルトリア様が……ここ、現実なんですか? でも、あれ……」
「もう、いちいち説明するのも面倒なんだけど……」
意識を失っている間に状況が解決し、更に同行していなかったアルトリアの姿がある事をカリーナは動揺し困惑を浮かべる。
そんな
「――……お婆ちゃん?」
「え? ……も、もしかして……」
「アンタが侍女やってる時に、世話したでしょ?」
「じゃあ、やっぱりこの子は……!」
「
「……大きく、なられましたね……っ」
シエスティナは初めて会う
するとカリーナの脳裏には生まれたばかりの赤ん坊だった
そうして
「こっちが、お爺ちゃん?」
「……っ」
「……違うの?」
そうして左右の違う瞳を向けるシエスティナに、ウォーリスは気まずそうに顔を背ける。
するとシエスティナは首を傾げ、不安気な表情を浮かべた。
そんな二人の様子を見ていたカリーナは、僅かに決意を強める表情をしながら傍に立つシエスティナを優しく抱き寄せながら教える。
「そうです。この人が貴方の、御爺様です」
「やっぱり!」
「カリーナ……」
「ちゃんと見てあげてください……この子も私達にとって、大事な家族なんですから」
「……ッ」
カリーナの説得に応じられる形で、ウォーリスは背けた視線を改めてシエスティナに向ける。
すると
そして亀裂の走る
「お爺ちゃん、大丈夫?」
「……ああ、平気だ」
「
「……こういう事には、慣れている」
「お姉ちゃん。お爺ちゃんの傷、治る?」
そして
「命は助かるわ。でも、元通りにはならないわね」
「……お姉ちゃんでも、治らないの?」
「ええ。残念だけどね」
「……そっか。だからお爺ちゃん、元気ないの?」
「……?」
「お爺ちゃん、ずっと笑ってないから……」
「!」
改めて
しかしその理由を自分自身でも理解するように、ウォーリスは優しくも震える声でシエスティナに話し始めた。
「……私は君に、そう呼ばれる資格は無い」
「え?」
「私は、君の両親とその周囲にとても酷い事をした。……だから、君の家族にはなれない」
「ウォーリス様……」
「私は、それだけの事をしてしまったんだ。……
顔を伏せながら話すウォーリスは、自分の行いによって
そして自分が
そんなウォーリスを諫めようとしたカリーナだったが、それより先にシエスティナが動きを見せる。
「でもお爺ちゃんは、お婆ちゃんとお母さんを助けてくれたんでしょ? だからいっぱい、怪我してるんでしょ?」
「!」
「あのね、クレアお婆ちゃんが言ってた。お父さんはお母さんを……家族を助ける為に、いっぱい頑張ってるって。お爺ちゃんもそうなんでしょ?」
「……私は……っ」
「――……そうだよ、シエスティナ!」
「!」
そう問い掛けて来るシエスティナの真っ直ぐな瞳に、ウォーリスは再び視線を逸らす。
するとその場に飛来した赤い閃光が解かれると同時に、飛び降りて現れたユグナリスが傍に着地した。
そして二人の話を聞いていたように、
「シエスティナの言ってる事は正しいよ。……貴方は愛する家族の為に、今までずっと頑張って来た人だ。ウォーリス殿」
「……皇子」
「でもその
「……っ」
「それでも貴方が、
「!?」
「だから貴方は、
「……ッ」
ユグナリスの強い意志を持った青い瞳を向けられながら、ウォーリスは渋い表情を強める。
しかしそれでも背けそうになる顔を踏み止まらせ、互いに顔を向け合ったまま視線を重ねた。
そんな二人の会話を傍で聞かされていたアルトリアは、再び嘆息を漏らしながらユグナリスに問い掛ける。
「瘴気はどうしたのよ、サボり?」
「一応、全て消し去ったはずだ」
「そう。だったらもうすぐ――……お目覚めみたいね」
「!」
ウォーリスの
それと同時にそうした言葉を呟くと、その場に居る全員が同じ場所へ視線を向けた。
そこには仰向けに寝かされているリエスティアの姿があり、その
そして緩やかに瞼を開き、その下に在る黒い瞳を見せながら目を覚ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます