託される未来
脅威となるアルトリアから逃れて現世に在るリエスティアの肉体に逃げようとしたゲルガルドだったが、その道筋を『白』に阻まれる。
そして『
そこで場面は
ゲルガルドが操り一斉に襲って来た瘴気だったが、そこで状況が変化していく。
制御を離れた瘴気の動きが徐々に弱まると、完全に停止していたのだ。
それを見ていたウォーリスやユグナリスは、その状況を理解できずに動揺した面持ちを浮かべる。
「――……瘴気が止まった……。……どういうことだ?」
「これも、お前が何かやったのか? アルトリア」
そう尋ねながら二人は視線を向けると、アルトリアは平静な様子を見せ続ける。
すると状況を理解していない二人に、呆れるような溜息を向けて伝えた。
「瘴気を操ってた
「!?」
「な……っ」
「私の
「なんだと……?」
「……そうか。だから
「!」
ゲルガルドの逃亡を予期していたアルトリアは、リエスティアと繋がる魂の回廊に細工をしていた事を話す。
それを聞いていたユグナリスは、
するとアルトリアも振り向き、シエスティナを見ながら微笑みを浮かべる。
「そう。
「違う場所?」
「丸裸同然の
「……確か、『
「そう、それ」
「じゃあ、ゲルガルドは
「消滅してるわ。その証拠が、この瘴気よ」
その話を聞いていたユグナリスは、納得を浮かべ始める。
しかし傍で聞いていたウォーリスは、不可解ながらも厳しい表情でアルトリアに問い掛けた。
「……魂の回廊は、私にも繋がっていた。ゲルガルドがリエスティアの肉体ではなく、私の身体を選んでいたら?」
「その可能性は無いわね。支配できてない
「!」
「それに実際、アンタは自分の魂にゲルガルドを封じ込めて死ぬ手段を用いようとした。だから奴の選択肢には無かったのよ。アンタの肉体に逃げ込むという選択はね」
「……そうか」
「そんな事まで考えてたのか……」
状況を伝えたアルトリアの言葉で、二人は互いに安堵するような息を零す。
しかし四歳未満のシエスティナにはその会話は難しいようで、首を傾げながら傍に浮く
「お母さん、起きないの?」
「まだね。これだけの
「じゃあ、綺麗しなきゃ!」
「そうよ。貴方は賢いわね、頭の出来が
そう言いながら微笑んでいたアルトリアは、ユグナリスに視線を移しながら表情を真顔に戻す。
するとユグナリスは状況が分からず、困惑した面持ちで問い返した。
「えっ。……まさか?」
「アンタが綺麗にするのよ。この
「えっ、俺がっ!?」
「他に誰がいるのよ。アンタが自分も連れていけって愚図ったんだから、少しは役に立ちなさい」
「お前がいきなり、
「私は疲れたし、そこでボロボロの三人を
「一人でって、この瘴気を全部かよ……」
「お父さん、がんばって!」
「……わ、分かった! やるよ!」
ゲルガルドの支配から離れて
そして
その最中、ユグナリスの
『――……結局、アルトリアに良いところを全て持っていかれたな……』
「あぁ。でも、解決できたのは良かった。……ところで、お前っていったい……?」
『……違う未来から来た、
「えっ」
唐突に未来の
しかしその間にも、未来の彼はこうした話を向けた。
『さっきまで、そっちの記憶を視てた。……この世界の俺は、アルトリアと和解できていたんだな』
「……その、お前は違ったのか……?」
『俺は生涯、アルトリアと和解できなかった。何故アルトリアが俺を嫌っているのか、理解しようともしなかった』
「……」
『彼女が帝国に戻ったと聞いても、俺は近付こうともしなかった。リエスティアの治療も断られたし。……そしてリエスティアが出産中に治癒できず、子供と一緒に死んだ。そのせいで、俺は自分の無力さに絶望することになった』
「え……」
『今にして思えば、それはウォーリスの望みも潰した事になったんだろう。ウォーリスは
「……そんな……」
『でもこの
「……」
そう言いながら感慨深い声を漏らす別の未来を辿った
アルトリアと向き合わずにリエスティアと
そんなユグナリスに、
『俺はずっと、ウォーリスやゲルガルドに対する怒りだけで戦い続けた人生だった。……でも最後に、この
「えっ」
『言っただろ。……二人のこと、大事にしろよ――……』
「……ちょっと待てよ。最後って……おいっ!」
そう言いながら言葉を途切れさせた
それが自分の『
するとその炎こそが
「……分かったよ。……ありがとう……」
消え逝く炎を見上げながら、ユグナリスは感謝を伝える。
それは悲惨な
「……えっ!?」
その炎を見送った後、ユグナリス自身の
それは今まで纏っていた『生命の火』が更に強まると同時に、右手の甲に赤い輝きが浮かび上がった。
その輝きを見たユグナリスは、僅かに驚きながら呟く。
「この光……コレって、ログウェルに見せてもらった……
自身の右手に浮かび上がった紋様を見て、それが『緑』の
そして意図しない形で強まる自分自身の
すると『赤』の
その影響で僅かに放心したユグナリスは、右手に浮かぶ
「……そうか。これが未来の、俺の記憶……。……そして、経験……っ!!」
『赤』の
それと同時に彼自身の知識と経験を継承し、高まる『生命の火』から一つの
それは
すると聖剣を一閃させながら、
すると次の瞬間、ユグナリスの目の前に存在する瘴気が瞬く間に燃え始める。
更に『
それを自分自身の目で見ていたユグナリスは、確信するように笑みを浮かべる。
「……いける、この
するとユグナリスは自分自身に『生命の火』を纏わせ、赤い閃光となって凄まじい速度で各所の瘴気を切り裂く。
それと同時に点火した瘴気に燃え広がり、リエスティアの
それを
「お父さん、かっこいいでしょ!」
「……カッコいいかはともかくとして、凄いのは確かね」
「お父さんとお姉ちゃん、どっちがスゴいかな?」
「さぁね。私達なんかより凄い奴なんて、世界中にいるし」
「お父さん、そんなにスゴくないの?」
「安心なさい。人間の中では凄い方だから」
「じゃあ、お父さんはやっぱりスゴい!」
「はいはい。そういうことでいいわよ」
そして『生命の火』と聖剣を持って瘴気を消滅させ続けるユグナリスは、それから十数分後には魂内部の
こうして数々の窮地から多くの者達を助けた未来のユグナリスは、自らの役目を終える。
そして『赤』の聖紋と共にこの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます