翔ける二人
五百年前に起きた
そうした最中、敵対していたウォーリスとアリアはマナの
そしてウォーリスが提案する方法を用いて、二人はこの事態に対処しようとする。
更にそれには、ある二人の協力も必要としていた。
『――……腹の底に沈んでる、力を引き出せっ!!』
「ガァアアッ!!」
そうした状況の中、マナの
マナの
恐ろしい戦闘能力を有する数多くの『神兵』と一人で戦う事を可能としていたのは、
そして
それに応じる形で動き学ぶエリクは、一つの黒角を額から生やし、赤膚になった状態で黒い大剣を振るう。
すると凄まじい轟音が鳴り響くと同時に、振られた正面に赤い
それを浴びる『神兵』達は赤い斬撃に飲まれ、肉体を修復できずに消滅する。
たった一撃で何人もの『神兵』を倒せるようになっていたエリクは、右目の眼球だけを白くさせた状態で理性を保ちながら乱れた息を吐き出していた。
「ハァ……ハァ……ッ!!」
『ヘバるのはまだ
「ク……ッ!!」
顔を伏せながら息を吐き出すエリクに、フォウルの声は新たな危機を伝える。
包囲していた『神兵』達を殲滅し終えたエリクだったが、それを補充するようにマナの
ある一定数の『神兵』を生み出すマナの
既にそれ等を幾度も退け殲滅していたエリクは、自分の意思で
「……ガァアアッ!!」
エリクは変貌した姿から赤い
すると襲い掛かって来る『神兵』達と正面から向き合い、凄まじい跳躍と加速で瞬く間に彼等の肉体を真っ二つに切り裂いた。
それと同時に『神兵』達の肉体が赤黒い炎で燃え盛り、肉体を再生できぬままに消滅していく。
更に遠距離から魔力と生命力の混合砲撃を放つ『神兵』達に対しては、赤い斬撃を飛ばす事で砲撃ごと相手を消滅させていた。
遠距離と近距離で襲撃して来る『神兵』達に対応できるようになったエリクは、まさに
しかしそれは、この状況を膠着させる手段にしかなれていなかった。
「……クソッ、また……っ!!」
『あのマナの
「なら、あの
『馬鹿が! それをやっちまったら、この世界は滅びるんだよっ!!』
「だが、このままでは……!」
幾度も殲滅した『神兵』達が再びマナの
無限に生み出される『神兵』達を倒し続けても、この事態を進展させる事には繋がらない。
逆に『神兵』を生み出し続けているマナの
この状況で耐え忍ぶ事しか出来ないエリクにとって、自分が出来る事は
しかし強い徒労感を抱くエリクは、自分自身でこの事態を解決できる方法を考え続けていた。
そうして再び生み出された『神兵』達が、エリクに向かいながら襲い掛かって来る。
再びそれを迎撃しようと身構えた瞬間、エリクの思考にフォウルの声が響いた。
『……なんだ、一匹だけ違う姿をしてやがる。……あの姿は……!』
「!?」
エリクを通してフォウルが確認した『神兵』の一人が、今まで模っていたウォーリスとは異なる容姿をしている事に気付く。
それを自分でも確認したエリクは、その姿を見て両目を見開きながら驚きを浮かべた。
それは他の『神兵』と同じく銀色の髪と白い肌ながらも、ウォーリスのような短髪と男性の肉体ではない。
エリクにとってその姿は、見慣れた女性の姿を模しているように見えた。
すると次の瞬間、その女性の姿を模した『神兵』が異なる動きを見せる。
それを確認したエリクは、驚きを浮かべながらも確信を得たように呟く。
「……まさか、アレは……アリアなのか……!?」
『
エリクとフォウルは異なる姿で出現した『神兵』を、マナの大樹に侵入したアリアだと断定する。
しかし『神兵』を襲いながらある場所へ目指すように飛び向かうアリアは、
すると突如として、エリクに向かっていた『神兵』達がアリアに向けて視線を動かす。
それを追うように飛翔し駆け始めた『神兵』達の急な動きに、迎撃しようとしていたエリクは驚愕した表情を浮かべた。
「なんだ、どうした?」
『……
「なに? だが――……まさかっ!!」
『決まってるだろ。あの嬢ちゃんだよっ!!』
自分にしか襲い掛かって来なかった『神兵』の目標が、新たに出現したアリアに振り向いた事をエリクとフォウルは察する。
そして肉体能力を最高潮に高めたエリクは、凄まじい速度で駆けながらアリアが居る場所へ向かった。
すると『神兵』達が、アリアに襲い掛かりながら夥しい攻撃を浴びせ始める。
それを辛うじて回避し結界で防ぐアリアだったが、接近した『神兵』の一人に生命力の剣で切り払われながら地面まで吹き飛ばされた。
「――……クッ!!」
肉体を切り刻まれる事は防ぎながらも、アリアは飛翔していた状態から地面へ叩きつけられてしまう。
それでも起き上がろうとするアリアに、『神兵』達は生命力と魔力を混ぜ合わせた混合砲撃を放とうとしていた。
『神兵』達の攻撃を防ごうと両腕を掲げて結界を形成するアリアに、ある光景が飛び込む。
それは赤い閃光と共に放たれる巨大な斬撃が、『神兵』を瞬く間に赤黒く燃やし消滅させる光景と、自分を呼ぶように叫ぶエリクの声だった。
「――……アリアッ!!」
「エリク!」
二人は名前を呼び合い、互いに意思を持っている事を確認し合う。
互いに風貌が変化した姿となっていながらも、それでも人格を残している様子は僅かな安堵を浮かべさせた。
しかし追撃するように押し寄せる『神兵』達を見上げながら、エリクはアリアに問い掛けるように叫ぶ。
「アリアッ!! この状況は、どういうことなんだっ!?」
「
「なにっ!?」
「それを止める為には、
「それは……!?」
状況を端的に教えたアリアは、事態を解決する為に自分が行おうとしている事を明かす。
それを知ったエリクは、改めてアリアが向かおうとしている先に
しかしアリアが実行する行動を知ったエリクは、表情を強張らせながら躊躇う様子が見える。
その方法を使えば死者であるアリアの魂がどうなるか、エリクには予想も出来なかったのだ。
しかしその答えを問い掛ける事も待たず、アリアに襲い掛かろうとする『神兵』達をエリクは一薙ぎの斬撃と切り込みで抑え込む。
そうした間に再び立ち上がったアリアは、肉体を浮遊させながら伝えた。
「
「俺が、
「貴方、
「なにっ!?」
『――……ケッ。確かに俺は、ジュリアの野郎と殺し合った事もあるからな』
「!」
突如として出現した『神兵』達が襲って来た理由を知り、エリクは微妙な面持ちを浮かべてしまう。
自分を生かす為に生命力へ転換させていた
更に自分が強く鬼神の
奇しくも助けられていたはず
そんなエリクに、アリアは再び叫びながら伝える。
「エリクッ!! 貴方は私を援護して、『
「アリアッ!?」
「私は、
そう伝えたアリアは飛翔しながら押し寄せる『神兵』達の攻撃を掻い潜り、その先へと向かう。
そこには結界を張った
エリクはそれを確認しながら
こうして二人はこの事態を解決させる為に、自分がやるべき事を目指しながら突き進むのだった。
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