鬼神の助力
それは
その『神兵』達に強襲を受けるエリクは、精神内部から届く鬼神フォウルの助言を得ながら、アリアが事態を収束させるのを待つことを選ぶ。
しかし一体一体が
『――……次は右だっ!!』
「グゥッ!!」
その衝撃だけで先に広がる
しかし他の『神兵』達が瞬く間に距離を詰め、エリクの周囲から襲い掛かる。
片足の姿勢で地面へ着地した不安定な瞬間を狙われたエリクは、迫る『神兵』達の
しかしその威力を殺し切れず、左脇腹に突き刺さる
「ヌゥ……ッ、ウゥアアッ!!」
血が噴き出る脇腹を無視しながら刺さる生命力の剣を身体ごと引いて抜いたエリクは、両手で握る黒い大剣を振り回す。
その勢いと
しかし切り裂いたはずの『神兵』達は瞬く間に肉体を修復させ、それぞれエリクへ攻撃を仕掛ける。
それから逃げるように地面を蹴り上げその場から
息を吐く暇すら無い戦況の中で、一時的な休息を求めたエリクは土煙の中に身を隠す。
しかしその行動を評価せず逆に非難するには、
『油断すんなっ!!』
「!」
その呼び掛けと同時に悪寒を背筋に走らせたエリクは、自ら土煙を出る。
すると
「クッ!!」
土煙ごと自分を一掃しようとする『神兵』達の狙いを察したエリクに、眩い程の閃光が『神兵』達から走り迫る。
それを紙一重で避けながらも衝撃波によって吹き飛ばされたエリクは、更に
それでも超人的な反射神経と動体視力を駆使して地面に着地したエリクは、大きく息を吐き出し吸いながら『神兵』達を睨む。
「くそっ、このままだと……!!」
『死ぬだろうな、テメェは。……ったく、本当に情けねぇ野郎だ』
「!」
苦々しい面持ちを浮かべながら突き刺された左脇腹に左手を置くエリクに、フォウルは一蹴するような言葉を向ける。
しかし痛みを感じる左脇腹の出血が抑えられ、既に失血しない程度に肉体が治癒されている事にエリクは気付いた。
それが誰の影響に因るモノか、エリクはすぐに理解する。
「お前が、傷を回復してくれているのか」
『ケッ』
「……フォウル、頼みがある」
『あぁ?』
「俺では、奴等に勝てない。……だから、お前が俺を使ってくれ」
『!』
「俺の
再び迫り来る『神兵』達を前に、エリクはそれを迎撃しながら立ち向かう。
その頼みに関して苛立ちの籠る声を浮かべるフォウルは、戦うエリクの精神に呼び掛けながら問い掛けた。
『……それがどういう意味か、分かって言ってるんだろうな?』
「ああ!」
『テメェが今生きてるのは、魂から注いでる
「知っているっ!!」
『なら――……』
「お前は、俺より強いっ!!」
『あ?』
「俺では、お前の
押し寄せる『神兵』達を相手に更なる傷を増やすエリクは、この状況を一分先まで耐えられない事を悟る。
そこでフォウルに自らの
しかしその頼みを、フォウルは苛立ちの声と共に拒否する。
『断る』
「!」
『言ったはずだ。俺の
「だが、今も……!!」
『それも言ったろうが。勝手にテメェが、魔力を生命力に変えてるだけだ。傷もそれで勝手に治ってるだけだっての』
「……どうして、そんな嘘を吐くっ!?」
『あぁ?』
「お前はさっきから、俺を助けてくれてるっ!! いや、ずっと前からそうだった……っ!!」
『……ッ』
「お前が居なければ、俺は何回も死んでいた! だから――……グァアアッ!!」
叫ぶようにフォウルに尋ねるエリクは大剣を構え、迫る『神兵』達の砲撃と生命力の剣を防ぎながらも吹き飛ばされる。
そして樹木に激突しながら砕き割っていくと、地面へ激しく擦りながら倒れ伏した。
それでも意識を残しながら両腕で上体を起こし、迫って来る『神兵』を見上げながらフォウルに言葉を向ける。
「……頼む、フォウル。……また、力を貸してくれ……っ」
『……』
「俺は、もう死ねない……。……俺は、生きる為に……戦いたい……!!」
流れ出る血と折れた骨の痛みに耐えながら零すエリクの言葉は、懸命にフォウルへの助力を乞う。
それに対して、
『……なら、
「!」
『俺達みたいな死人に、いつまでも頼り切ってんじゃねぇぞ。――……
「……!!」
そう怒鳴るフォウルに呼応するように、エリクに変換され与えられ続けていた
すると心臓が破裂しそうな程の鼓動と高鳴りを感じたエリクは、異様な苦しさを抱きながら顔を伏せ跪いた。
そんなエリクに襲い掛かる『神兵』達は、それぞれに地面を抉るような攻撃を放つ。
避けることも出来ないエリクは魔力と
ウォーリスの顔をした『神兵』達はそれを見下ろし、土埃が晴れていくのを待つように留まる。
しかしそれを待たずして、赤く迸る魔力が突風となって土埃を内部から吹き払った。
すると土埃の中で、一人の人物が立っている姿が見える。
しかしその風貌は今まで襲われていたエリクと大きく異なり、凡そ人間らしからぬ
「――……はぁ……。……ハァ……ッ!!」
荒い息と共に土埃から現れた人物を、『神兵』達は確認する。
それは黒髪と額に一本の黒角が生え、肌と片目の眼球を赤く染め上げているエリクの姿だった。
そうして意識を辛うじて保つエリクに、フォウルは
『
「……!!」
『どうせこの状況だ、丁度いい。
「!?」
そう叫ぶフォウルの声と同時に、『神兵』達は生命力と魔力の混合弾を変貌したエリクに放つ。
それに気付き飛び退こうとした瞬間、再びフォウルが怒鳴りながら止めた。
『
「!」
引こうとした足を引き戻されるように前へ出したエリクに、夥しい数の混合弾が襲い来る。
それを避けずに掻い潜りながら前へ走り跳んだエリクは、右手に持つ大剣を素早く振りながら直撃しそうな混合弾を弾き飛ばした。
しかもその跳躍力は尋常ではない程の速度と飛距離を見せ、瞬く間に『神兵』の一体に近付く。
それに咄嗟に対応するように、エリクは右手に持つ大剣を振り被りながら薙いだ。
「ぐぉあああっ!!」
肉体に溢れる魔力の制御に苦しむエリクは、無我夢中のまま目の前に浮遊していた『神兵』を大剣で切り裂く。
すると赤い魔力と生命力が織り交じる斬撃が包囲しようとする『神兵』達を襲い、射線上に浮遊していた相手を消滅させるかのように吹き飛ばした。
それを見たエリクは呆然とした様子を浮かべながらも、地面へ着地する。
『神兵』達もまたその異常なエリクの
そんな状況に、エリクは動揺した面持ちを浮かべる。
「これは……!?」
『当たり前だ。
「……
『神兵だのなんだの言っても、用は
「……!!」
『これも実戦訓練だ。こんな糞みたいな連中にこれ以上も苦戦するようだったら、テメェにはもう二度と、
「……ああっ」
フォウルの言葉に応えるエリクは、改めて周囲を見渡しながら取り囲む『神兵』達と対峙する。
その姿こそボロボロだったが、『
こうして押し寄せる『神兵』達と戦うエリクは、『
しかし根本的な問題は解決したわけではなく、マナの
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