導く子供達
出産の後遺症によって衰弱し続ける最愛の
それにより仮死状態にし
そしてカリーナと適合する
しかしウォーリスが二十四歳になった頃、ゲルガルドはある話を鍛錬後に伝えた。
『――……ウォーリス。お前と娘だが、明日から屋敷に暮らすようこちらで指示する』
『!』
『そして近々に、お前をゲルガルド伯爵家の次期当主として認める事も宣言する。……その意味が分かるか?』
『……父上が私の肉体を新たな依り代とする為に、必要な手順ということですね』
『そうだ』
『一つ、御聞きしてもよろしいでしょうか?』
『なんだ?』
『
『お前を次期当主として定めてすぐ唐突に処分してしまうのも、不自然だからな。少し方法を考えることになるだろう』
『……分かりました。何か御協力できることがあれば、いつも仰ってください』
『そうしよう』
ついにゲルガルドが
それを聞いたウォーリスは冷静な面持ちを見せたが、その内心では焦燥感が噴き出しそうになっていた。
更に聡明な青年として成長しており、今もウォーリスに協力してザルツヘルムの残した『結社』の構成員達と連絡しながら
そのジェイクが処分され、自分はゲルガルドに肉体を明け渡す。
そうなれば
ウォーリスは実験を終えて
しかしその方法を思い付けないまま明け方の空を眺め、ついに渋い表情を浮かべながら
すると
そして戻った
『――……もう、残されている時間も少ないみたいですね』
『……分かるのか?』
『はい。……そしてまた、運命の分岐が訪れます』
『!』
『ここから辿る道筋次第で、全ての運命が変わって来る。……そしてそれを、貴方が選ばなければならない』
『……聞かせてくれ。君の言う、私の道筋を』
再び運命の分岐点を伝える『黒』のリエスティアに、ウォーリスは真っ直ぐとした青い瞳を向けながら問い掛ける。
それは以前のような疑う視線ではなく、一定の信頼を置いた相手に向ける態度でもあった。
そんなウォーリスに微笑みを浮かべながら、リエスティアは新たな道筋を教える。
『明日、
『!』
『その時に、少し
『提案?』
『今から三ヶ月後、帝都である
『
『それを言う意味は、その時の
『!』
『私から伝えられる道筋は、それだけです。……それ等を提案するかどうかは、貴方が選んでください』
『……その
『はい。……そこで私達が出会う人の運命が、大きく変わります』
『!』
『そしてその人が、この世界にいる様々な人達の運命を変えてくれる。……そんな気がするんです』
そう言いながら柔らかく微笑む『黒』のリエスティアに、ウォーリスはその意味を自分なりに解釈し理解しようとする。
しかし自分達の運命を変える程の存在がその
そうした話をしてから夜が明けて朝になった数時間後、屋敷から訪れた十数人の執事や侍女達が
すると
二人が持ち出した必要最低限の荷物を除き、その納屋にあった家具などはほとんど廃棄されてしまう。
カリーナと十年余りの時間を過ごした
そこで用意された屋敷の部屋は、元の
また娘であるリエスティアにも別室の子供部屋が与えられ、二人にはそれぞれに傍仕えとなる執事と侍女が付けられた。
しかしウォーリスに付いた執事や侍女は、仕えるべき人間の姿に僅かな困惑を抱いているのが見え隠れしている。
ウォーリスの見た目は十二歳前後の少年にしか見えず、彼等が今まで仕えていた
『――……本当にあの方は、ジェイク様の兄君なのだろうか……?』
『私も初めて御兄弟だと教えられた時には、向こうが弟だと思ってたわ……』
『……ふっ』
案内し終えた部屋の外でそうした言葉を呟き合う執事と侍女の声を聞き、ウォーリスは嘆息しながら鼻で笑う。
傍から見れば少し年の離れた幼い兄妹にしか見えない二人の姿は、親子として異質かもしれない。
それをあっさりと受け入れていたカリーナという女性の器の大きさを改めて知るウォーリスは、一人になった部屋の中で呟いた。
『やはりカリーナは、素晴らしい女性だった。……彼女との約束を守れるのなら、私は何でもするさ』
カリーナと交わした約束を思い出すウォーリスは、『黒』のリエスティアが提案したことを実行する意思を固める。
そして翌日、ゲルガルド伯爵家の家中達が集められた
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