燃え尽きぬ涙
意識の無いケイルの
そして『生命の火』を用いて自らの姿を
その決着の末、未来のユグナリスは自らの
左腕以外の全てに聖痕を刻まれたザルツヘルムは、取り込んでいた大量の
そのユグナリスの左腕を止めたのは、予想外にも『青』の
ユグナリスは突如として現れ左腕を掴み止める『青』に対して、怪訝そうな表情を浮かべながら睨む。
しかしその様相を確認し、自身の記憶から目の前の人物が『青』である事を察した。
「――……貴方は……。……『青』の
「久しいな、『赤』の末裔よ」
互いに見知った様子を見せる未来のユグナリスと『青』は、視線を向け合いながら曲げていた背を真っ直ぐに立たせる。
互いに別の未来に関する記憶を有しながら現世に留まっている二人は、瀕死のザルツヘルムを前にしながら言葉を向け合った。
「その槍、今は引かせよ」
「……まさか、
「いいや、既に我が
「!」
『青』はそう告げると、未来のユグナリスはザルツヘルムを見下ろす。
するとザルツヘルムの周囲に透明度の高い魔力で形成された檻が形成され、更に首や手足に枷のような光の輪が嵌められていた。
それを見たユグナリスは表情を強張らせ、再び『青』を見ながら声を向ける。
「奴は悪魔です。生かしておいたら、何をするか分からない」
「そうさせぬ為に拘束したのだ。……それに、この男には聞きたい事がある」
「今更、何を聞くと……」
「この
「えっ。……じゃあ、ザルツヘルムやウォーリスが秘かに生きていたわけじゃ……!?」
「……やはり理解していなかったか」
「過去に戻ったって……。……いったい、どういう事なんです? それになんで、俺はまた
未来のユグナリスは誤解していた現状を改めて認識し、困惑した様子を見せる。
それに対して『青』が口を開こうとしたが、大階段側に視線を向けながら言葉を発した。
「説明はするが――……まずは、治療が必要であろうな。彼等には」
「……!」
「――……『青』のおじさん! あれっ、ここって魔法は使えないんじゃないの!?」
「――……どういうことなんだ、これは……」
『青』はそう述べると、大階段側へ未来のユグナリスも視線を向ける。
そこには白髪に染まり衰弱するエリクと、それに肩を貸しながら階段を降りるマギルスの二人が近付いて来ていた。
状況を理解していない者達が集う場で、一人だけ理解を示している『青』は三名と向き合う。
そして答え易い質問から処理するように、『青』は口を開いて答えた。
「我等がいるこの場所は、魔法が禁じられている空間との
「あれ、そうなんだ」
「残る疑問は、お前達の治療をしながら話そう。――……エリク、お主はどうだ?」
「俺は、アリアを助けるまで……諦めない」
「……ならば、敢えて何も言うまい。二人共、こちらに来い。治療をする」
禍々しい
その言葉に従う二人は頷き合い、足を動かしながら『青』の傍に歩み寄った。
そして足を
それと同時に緑色と青色が入り混じる魔力の光が二人に降り注ぎ、表面に見えていた傷を癒し始めた。
治癒魔法を施される二人は、傷と同時に息を乱している様子が
そして余裕を戻しながら腰を降ろす二人は、改めて未来のユグナリスと拘束されたザルツヘルムを見つめた。
すると未来のユグナリスを見上げていたエリクが、改めて話し掛ける。
「……やはり、
「え?」
「どうしてお前が、ケイルから……。……ケイルは、無事なのか?」
「ケイル? ……あぁ、そうか。この
「そうだ。無事なのか?」
「受けていた傷なら、俺の
「……身体はそれでいい。だが、魂や精神は無事なのか?」
「精神は、まだ気を失っているようです。意識が戻れば、彼女に
「そうか。……それなら、いい」
ケイルの安否について改めて確認したエリクは、安堵の息を漏らしながら上げていた顎を下げる。
それと交代するように、隣に座っていたマギルスが未来のユグナリスに問い掛けた。
「ねぇねぇ、お兄さん。僕のこと、覚えてる?」
「……いや。君は『青』に似て姿こそ似ているけど、魂の波動が違うな」
「あれ? 同盟都市で一緒に戦ったじゃん!」
「同盟都市で? ……俺はあそこで、君のような人とは会ってないはずだけど……」
「えっ。……どういうこと?」
「さぁ……?」
マギルスの問い掛けに答える未来のユグナリスだったが、その話は噛み合わず互いに首を傾げさせる。
そんな二人に対して、『青』は口を挟むように説明を始めた。
「マギルスよ。この男は、お前達の居ない未来でウォーリス達と戦っていたユグナリスだ」
「えっ」
「この男も、お前達と同じように未来で『黒』に選ばれていたのだ。……そしてどうやら、
改めて説明する『青』の言葉を聞いたエリクとマギルスは、目の前のユグナリスが未来の人物である事を認識する。
そして自分達と同じように『
そうして納得を浮かべたマギルスは、改めて未来のユグナリスに問い掛ける。
「へー、そうなんだ。ケイルお姉さんに憑依してるってことは、お兄さんも
「それに近いかな」
「お兄さん、すっごい強いよね。この
「……俺は、
「!」
「だが、ここが過去で……倒したはずのザルツヘルムやウォーリスが生きて、
「ううん。アリアお姉さんなら連れ去れただけだよ、
「……えっ」
「あと、帝国もまだ滅んでないはずだし。そうだよね? 『青』のおじさん」
「うむ」
「……帝国が、滅びてない……? どういう事ですかっ!?」
マギルスと話していた未来のユグナリスは、自身の知る未来と大きく異なる
すると二人の会話に入る『青』は、改めてユグナリスに現在の状況を伝えた。
「我等の知る
「!?」
「我等の知る
「
「いや、
「……え?」
「
すると瞬時に表情を強張らせ、両手に握る聖剣と赤槍を手放しながら『青』の両肩を掴み揺らして問い質した。
「……リエスティアが生きてるって、本当なんですかっ!?」
「そうだ」
「でも彼女は、俺の子を身籠って……。……でも治癒魔法が効かなくて、出産が困難で……。……帝王切開になって、でも失敗して……子供と一緒に……。……俺のせいで、彼女も子供も死んで……っ」
「この
「アルトリアが……!?」
「お主の知る
「……じゃあ、リエスティアも……俺の子も……?」
「どちらも生きている」
「……そうか、よかった……。……ぅ……ぐっ、よがっだぁ……っ!!」
自分の知る
そして『生命の火』で自身の姿を模す瞳から炎の涙を零し、
それを傍らで見上げていたエリクとマギルスは、互いに首を傾げた様子を浮かべる。
しかし事情を知る『青』だけは、そのユグナリスの右肩に左手を添えながら頷く様子を見せた。
こうして『青』の言葉を聞いた三名は、現状を理解して落ち着き始める。
そして最も厄介だったら
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