叡智の光
そして老執事バリスや
螺旋状に描かれる階段を駆け上がる二人は、壁や床から出現する黒い人形達を
そうした状況で前を走り人形を蹴り飛ばしたエアハルトに対して、シルエスカは声を張り上げながら問い掛けた。
「
「もう少しだ!」
「クッ!!」
シルエスカは赤槍を突き出しながら
数が増していく人形達の包囲網は再び出来上がりつつあり、二人はそれを突き崩しながら進んでいた。
しかしエアハルトの嗅覚以外に
そんなシルエスカの思考を察するかのように、エアハルトは前を走り跳びながら言い放った。
「俺を信用できんなら、ゴズヴァールのところにでも戻れ!」
「!」
「あの
「……なんだ、いったいっ!?」
迫る黒い人形を二体同時に蹴り飛ばしたエアハルトは、そう言いながら先を走る。
その物言いに対して不満を態度で明かすシルエスカだったが、それに抗議する暇も無く押し寄せる黒い人形達を退けながら階段を登り続けた。
そして二人は階段を登り終え、再び平坦な
そこから広い
「――……ここの上から、匂いがする!」
「
エアハルトの見上げる視線を確認し、シルエスカも上体を逸らして顎を上げる。
すると底の見えない暗闇が天井を覆っており、シルエスカは
そこでシルエスカは周囲に火球を作り出し、それを天井に向けて叩き放つ。
しかしその光景は、シルエスカを僅かに困惑させる。
「これは……!?」
シルエスカを思わず困惑させたのは、まるで底の無い深みに暗闇が沈む巨大な穴。
そこには何も存在せず、ただ
それを確認したシルエスカは、周囲にも火球を漂わせながら室内を他に何か無いか確認する。
しかし自分達が来た道とは逆位置に通路しか存在せず、特に施設や装置と言えるモノは置かれていない空間だけだった。
何も無い室内を改めて見渡すシルエスカは、疑問の表情を浮かべながら呟く。
「ここはまだ、途上という事だな。おい、先を
「……嗅いだ匂いが、来る」
「!!」
自分達の居る場所がまだ
しかしその声を遮るように、エアハルトは向こう側の通路を見ながらそうした言葉を見せた。
それに対して驚きながらも警戒を戻すシルエスカは、通路の先へ視線を送る。
すると音も無く向こう側の
その人影は両足を付けて着地すると、火球を漂わせるシルエスカとエアハルトの姿を目にしながら声を向ける。
「――……彼等は……」
「アレは、アズマ国の
シルエスカの火球で照らされた人影は、身に着けている黒い
するとその場に現れたのが
「
「親方様は
「ゴズヴァールと同じ、魔人仲間だ。……それより、ここまで登って来たのか?」
「ええ。貴方達も?」
「
「
「そちらに、階段が在っただろう? 更に
「いいえ。こちら側には、もう
「……えっ」
「そちらの
「……こちらの
シルエスカと
互いに相手側の
そんな二人に対して、エアハルトは鼻息を漏らしながら呟く。
「どうやら、ここで行き止まりらしいな」
「……なら、ここから先は……!?」
「そもそも、あんな人形共を作り出しているくらいだ。
「ッ!!」
「……
エアハルトは
それを聞いた
そうした最中、エアハルトの
すると周囲を見回しながら、強張らせた表情と声を見せた。
「……チッ、ここもか」
「!」
そうした声で周囲を見るエアハルトに続き、他の二人も変化に気付く。
他の通路や室内と同じように、
這い出て来る黒い人形達の光景に、三人は背中合わせに身構えながら三方へ身体の正面を向ける。
すると次の瞬間、塔全体が凄まじい揺れで傾くように動いた。
「なんだっ!!」
「この揺れ……また何かが……?」
「……伏せろ!」
「!?」
突然の揺れに新たな事態を予見しながら身構えていたシルエスカと
それを伝えるように伏せるよう告げると、二人は咄嗟に身を屈めた。
すると次の瞬間、エアハルト達が居た
更に
「これは……!?」
「テクラノスの
「!?」
「奴め! それが出来るなら、最初からやれ……チッ!!」
こうした事態で何が起きているかを察するエアハルトの言葉に、シルエスカと
そうした
そして百体の新型
「――……我々に侵入された事で、
テクラノスは外部の黒い人形達を処理し終えた後、仲間達の侵入による敵の行動を予測する。
そして
すると
それにより黒い塔の先端部分は傾き始め、エアハルト達がいる室内に
「……外が……!!」
「
「……テクラノスッ!!」
「!」
しかし新たな匂いの変化に気付いたエアハルトは、外に居るテクラノスに聞こえない叫びを向けた。
それと同時に、
塔全体に砲撃用の
そしてテクラノス達や
その
そして自身の身を守るように数体の
「……我の叡智が、神にも届くことを証明しろっ!!」
『――……お前達に、ウォーリス様の邪魔は――……ッ!!』
互いが相手の砲撃を受けながら先に仕留めようとする二人の撃ち合いは、次の瞬間に決着を迎える。
それにより黒い塔から放たれていた魔力砲撃は止まり、内部に居た黒い人形達も含めて人形達や
しかし撃ち合いの最後、
それに巻き込まれるようにテクラノスも吹き飛び、周囲に立ち込める炎と黒煙の中に紛れながら姿を見失う。
この攻防により、
その決着は当人達にも把握できないまま、次なる戦いに場面は移ろうとしていた。
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