牛鬼突撃
敵拠点である黒い塔内部に侵入を果たしたシルエスカ達と
その
そうした一方で、破壊した塔の壁付近で待つ魔人ゴズヴァールとある人物が合流する。
それは
通路を素早く駆けるエアハルトを先頭に、ゴズヴァールはその後に続きながら走る。
そして魔力を電撃に変えながら身に纏うエアハルトの後ろ姿を目にしながら、ゴズヴァールは口元を微笑ませながら呟いた。
「――……強くなったな、エアハルト」
エアハルトが成長した姿を目にしたゴズヴァールは、感慨深い表情を浮かべる。
そんな呟きが耳に届いていないエアハルトは、
「この匂いは……あの男か」
自身の進む先に嗅ぎ知った男の匂いがある事を察したエアハルトは、更に加速を強めながら通路を通り抜ける。
そして跳び出すように通路から出ると、広い空間に出ながらそこに立つ者達の姿を発見した。
そこに居たのは、ガルミッシュ帝国の帝都でエアハルトが戦った事のある老執事バリス。
それを囲むように三体の
「チッ」
「――……おや、来ましたかな?」
放たれる熱線や電撃を風の
そんなバリスは電撃を身に纏いながら現れたエアハルトを目にし、微笑みと共に声を向けた。
それを気に喰わない様子で見るエアハルトに対して、その背中に追い付いたゴズヴァールが足を止める。
そしてバリスの状況を確認しながら、敢えて問い掛ける声を向けた。
「助けは
「御心配なく。
「分かった。――……行くぞ、エアハルト」
「エアハルト殿、頼みましたぞ」
「……グルルッ」
この場を自身に任せるよう告げるバリスは、先行しているシルエスカの援護を二人に頼む。
それを受けたゴズヴァールは応じて先に進もうとしたが、微妙な
そんなエアハルトに進むよう促すゴズヴァールの声で、エアハルトはその先にある通路へ歩み出す。
頼みを向けながら微笑むバリスを横目にして唸るエアハルトを連れながら、ゴズヴァールはその場を後にした。
すると速度を落としながら通路を走るエアハルトは、やや後ろを走るゴズヴァールに問い掛ける。
「……あの男と戦ったというのは、本当か?」
「ああ、一度だけ戦った。昔の話だが」
「勝ったのか?」
「いや、勝ち負けの決着は無かった。……だが、御互いに本気で戦ったとしたら。今でも私が負けるだろう」
「!」
「あの男は、三百年間も『緑』の
「……確かにあの男は強いが、お前より強いとは思えん」
「『聖人』と呼ばれる者達も、『
「なに――……むっ!!」
「!」
バリスの事に関して話していた二人だったが、不意にエアハルトの嗅覚に何かが引っ掛かる。
それと同時に、ゴズヴァールの耳にも幾度も重なる金属音を確認できた。
そして話を中断した二人は、その先で戦っているだろう金属音の場所に向かう。
すると自身の魔力で強化する二人の視界に、暗闇で蠢く黒い人形達に囲まれながら炎を灯らせた赤槍で戦いシルエスカの姿を確認できた。
「頼まれ事だ、やるぞ」
「……チッ、分かった」
ゴズヴァールの言葉に舌打ちを漏らすエアハルトだったが、二人は蠢く黒い人形達の中に飛び込む。
そして殴りと蹴りの打撃を加えながら黒い人形達を瞬く間に散らし、シルエスカが包囲されていた一画を崩しながらゴズヴァールが呼び掛けた。
「こっちだっ!!」
「――……お前達は……ッ!!」
突き崩された黒い人形達の向こう側に
すると近くに迫る黒い人形が形状を変化させた両手の剣を刺し向け、それを赤槍で受け流しながら弾き飛ばした。
そして赤槍を両手で回転させながら他の黒い人形達を吹き飛ばし、ゴズヴァール達が居る方角へ走り跳ぶ。
それから三人は傍まで近付いて背中合わせとなったシルエスカは、向かって来る黒い人形達に身体の正面を向けてゴズヴァールとエアハルトに呼び掛けた。
「
「このエアハルトなら、
「本当か! ……だが、この数を押し退けて進むのは……っ!!」
ゴズヴァールの言葉を聞いて僅かな希望を抱いたシルエスカだったが、それは目の前から迫る人形達の光景で僅かに歪む。
それを突破し、更に追跡や妨害を切り抜けながら
その間に黒い人形達は増え、更に厄介な
それを察するシルエスカに対して、ゴズヴァールは敢えて自分の提案を伝えた。
「俺が
「!!」
「ゴズヴァールッ!?」
「その為に、まずは突破をするぞっ!!」
そう告げるゴズヴァールは、全身に
更に前屈みになりながら二本の黒い角が生えた頭部を前に傾け、両腕を床に着けた瞬間に凄まじい加速力で跳び出した。
その突進は過去にアリアの結界を破壊し
それでも人形達の変形させた腕の剣がゴズヴァールの肉体を幾度も切り裂いたが、その痛みを無視するゴズヴァールは黒い人形達の群れに風穴を開けた。
その隙間を縫い走るように、エアハルトとシルエスカも走り抜ける。
すると身体から青い血を流すゴズヴァールは振り返り、その
「行けっ!!」
そう叫ぶゴズヴァールの声を聞き、エアハルトとシルエスカは苦々しい表情を浮かべる。
しかし走る足は止めず、そのままゴズヴァールの横を通り過ぎた。
そして先の
それを背中で見送ったゴズヴァールは、周囲から生み出されて迫る黒い人形達に向けて構えた。
「……この程度の数で、
ゴズヴァールは自身が負った傷を自己治癒力で癒しながら、周囲から襲い掛かる黒い人形達を散らすように吹き飛ばす。
こうしてゴズヴァールに
そして塔内部と人形達から漂う匂いを辿り、それ等を操るアルフレッド本体に着実に迫ろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます