異なる二人
再び起きた
そして月食によって生じた影が巨大な穴となり、『天界』へ繋がる
その『天界』へ赴き、
それを追跡しながら『天界』への
通路の光へ突入した
その光の眩しさを画面に映し出され、
それを察するように、『青』とテクラノスは画面に映し出された外の光景を閉じる。
仄かな明かりに照らされる
「――……『
「休養……こんな状況で?」
「何かあれば、警報が鳴るようにしてある」
「いや、そういう事では……」
「我もまた、『
「お、おい……」
淡々とした表情と声色で話す『青』は、そう言いながら
それを呼び止めようとした元『赤』のシルエスカだったが、遮られた扉を境にしながら苦々しい面持ちを浮かべるだけに留まった。
そんな二人を他所に、マギルスはテクラノスの方を見ながら首を傾げて問い掛ける。
「時間って、どのくらい掛かるの?」
「丸一日程度は掛かるという話だ」
「えっ、そんなに掛かるの?」
「
「へぇ、そっか。……違う星かぁ。そういえば、クロエが前に言ってたかも。
「儂は知らん。……だが
「そうなんだ。だから行くのに時間が掛かるって知ってるんだね」
二人はそうした会話を行われると、『天界』に辿り着く一日ほどの時間を有する事が周知される。
それを聞いたそれぞれが溜息を漏らし、最初の一人としてゴズヴァールが組んでいた腕を解きながら扉側へ向かいながらマギルスに話し掛けた。
「エアハルトのところに行く。お前も来るか?」
「うーん、僕は休む! まだ疲れてるし、魔力も全快じゃないもん」
「そうか。なら、ゆっくり休んでいろ」
「はーい!」
ゴズヴァールはそうした声を向けた後、自動的に開かれる扉の先へ向かう。
それに続くようにマギルスも動くと、エリクの方を見ながら呼び掛けた。
「エリクおじさんも休むなら、一緒に来る?」
「……いや。俺は少し、ケイルと話をしてから行く」
「そっか。じゃあ、僕は先に寝てるねー!」
呑気な様子でそうした声を向けるマギルスは、二人と同じように扉を通って休んでいた部屋まで戻る。
するとそれに合わせ、シルエスカと老執事バリスは互いに頷きながら傍に立つエリクへ声を向けた。
「我等も、与えられた部屋に戻る。……この
「それでは失礼します、エリク殿」
「ああ」
シルエスカとバリスはそう伝えた後、
すると今度は、
「
「アタシは、エリクと話してから行きます」
「……」
「親方様」
「……分かっている。では、先に行っているぞ」
そうした問い掛けを向けた
しかしエリクに一睨みを向ける
それから二人は顔と視線を合わせるように振り向けると、互いに躊躇うように口を微かに動かした後、先に声を発したのはエリクの方だった。
「……ケイル。さっきの話、どう思う?」
「……どの話だよ」
「この
「……そうだな」
「『
「それは無い」
「!」
エリクが言い掛けていた言葉を遮るように、ケイルは強い口調で止める。
それに僅かな驚きを浮かべたエリクだったが、ケイルが渋い表情を浮かべているのに気付きながら敢えて言葉を続けた。
「未来のアリアが、あの
「そんなわけないだろ……。第一アリアだったら、この
「いや。
「それが無理だってんだよ。お前は
「……だが、あの
「それは、『青』が操作して助けたんだろ。……それにアリア本人は今まで帝国にいて、今は敵に捕まっちまってるんだぞ。どうやって『青』に協力しながら
「……それは……ッ」
二人は強い口調で会話を向け合いながら、互いの意見に否定的な意思を見せる。
『青』の協力者がアリアだと思うエリクは、未来の
一方で今現在のアリアが記憶を失くした状態で目覚めてからすぐに帝国へ向かい、『青』と協力できる状況では無かったとケイルは考えている。
そうした思考の違いによって口論染みた強い言葉を向け合っていた二人だったが、ケイルの現実的な言葉がエリクの勢いを上回り始める。
しかしエリクの思考にある光景と物が思い出され、その気付きによって閉じかけていた口を開いた。
「……そうか、アリアの
「!」
「アリアの持っていた
「……ッ」
「もし
「……それ以上は、止めとけよ」
「!」
未来の出来事を覚えていたエリクは、アリアの
その
しかしその発想を、震える声色と渋るような表情を強めたケイルが止める。
それを聞いたエリクは不可解な様子を示し、ケイルに問い掛けた。
「ケイル?」
「……お前、自分で何を言っているか分かってるのか?」
「?」
「……アタシも、この
「なら……!」
「……でもよ。そいつは本当に、アタシ等の知ってるアリアなのか?」
「え……?」
ケイルの言葉をエリクは理解できず、困惑した表情で声を漏らす。
そんなエリクの様子に溜息を漏らすケイルは、顔と視線を逸らしながら言葉を続けた。
「お前、言ってたよな。未来の最後で、アリアともう一人のアリアが一つの身体に戻ったって」
「あ、ああ」
「もしそれが本当なら、未来のアリアと
「……!」
「違うだろ。……そのアリアは、未来であんな事をやっちまってた
「……だが、その
「ああ、確かに今は人助けしてくれてるんだろ。その理由は、未来でやっちまった事の罪滅ぼしかもな。……でも、だったら。今のアリアはなんだ?」
「……え?」
「忘れたわけじゃないだろ。……アタシ等が知ってて助けようとしてるアリアは、記憶を失っちまってる方だ!」
「!?」
「エリク。お前はさ、どっちのアリアを助けたいんだ?」
「……それは……」
「未来で人間を虐殺しまくってたアリアの方か? それとも、アタシ等の事を忘れちまってるアリアの方か? どっちだよ」
「……ッ」
「さっきからお前は、二人のアリアを混同してたんだ。どっちも同じ、お前の知ってるアリアだと思ってよ」
「……俺は、ただ……」
ケイルに今までの言動について指摘されたエリクは、自身の思考に困惑を抱きながら口籠る。
そんなエリクに視線を戻したケイルは、身体を向けずに隣に立ちながらこう伝えた。
「だからさ。その二人の区別は、ちゃんと頭の中で付けておけよ。……でないと、いざって時に混乱するぞ」
「……ケイル……」
「そしてもし、二人のアリアがまた魂を融合させるような事があったら。……お前は、そんなアリアを受け入れられるのか?」
「……!」
「記憶を失ってるくらいだったら、また関係を築き直せばいい。……でももし、未来のアリアが記憶や人格まで支配しちまうような
ケイルはそこで言葉を止めると、エリクは息を飲む。
そして視線を交わさずに肩を向け合う二人の中で、エリクがその先の言葉を問い掛けた。
「……だったら、なんだ?」
「……これからの戦いが無事に終わったとしても。そいつはもう、お前やアタシ等とは関わらないようにするだろうな」
「!?」
「未来であんな事をして、アタシ等と殺し合った奴だ。……それで呑気にアタシ等とまた関わって旅しようなんて言って来たら、逆にキレちまそうだ」
「ケイル……」
「未来でアリアがやった事、お前なら許せるんだろう。……でも、それを許せない奴もいる。許しちゃいけないと思う奴もいる。……それを忘れずに、ちゃんと区切りは付けとけよ」
「……」
そう伝えた後、ケイルはそのまま扉に向かって
しかしエリクはそれを追う事も出来ず、ただその場に佇みながら唖然とした表情を浮かべ、言葉を失くしてしまったかのように黙り続けた。
それから一時間ほど経ち続けていたエリクは、黙ったまま
そして自分達が寝ていた部屋まで歩き戻り、ぐっすりと寝ているマギルスの隣にある寝台で横になりながら心身の疲れを癒すように眠った。
こうして『青』の協力者がアリアである可能性を考えたエリクだったが、そこで一つの命題を与えられる。
それは同時に存在する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます