砂漠に生きた者達
銃を主力武器とした傭兵団『
その末に敗れたスネイクはユグナリスに生かされ、ウォーリスによって奴隷紋が施されている事が明かされた。
そこまでに至る事情を知る『
その願いを聞き届けたユグナリスによって、オラクル共和王国で起きた『閃光事件』から今まで『
団員達から語られるのは、雇い主であるウォーリスと団長スネイクの決裂。
その決定打となった瞬間であり、『
『――……百四十七人、俺の部下が死んだ』
この語りは、薄暗い荒地の中で聞こえるスネイクの声から始まる。
その声を向けられているのは、共和王国の国務大臣を務めていた『アルフレッド』という
そして怒りの籠るスネイクの言葉を聞き、ウォーリスは周囲を見渡す。
そこには床に横たわる形で重軽傷を負いながらも生き残った『
手当を施されたその光景を見るウォーリスは、特に感情も見せずにスネイクに視線と言葉を向ける。
『それは、お気の毒に』
『お気の毒だと……。ふざけるなっ!!』
『冗談のつもりはありませんよ。それにこの惨状は、貴方達の不甲斐なさが起こした事だ。むしろ、
『テメェ等がミネルヴァを生かしたまま、
スネイクの怒鳴り声は天幕の中でも聞こえ、負傷しながらも意識を残す団員はその会話を聞いている。
そしてスネイクが怒り狂う理由について、団員達も同じ思いを抱いていた。
『そのミネルヴァの確保を失敗したのは、貴方達だ』
『ミネルヴァが俺達の居た
『だが、君達はその仕事を請け負った。しかし、結果はこの
『受けるしかないだろうが!
『だが、その十万の訓練兵達も七割以上を失い、南方領地そのものが吹き飛んでしまった。大きな失態だな、スネイク』
『テメェ……ッ!!』
感情を見せずに淡々として『
そして腰に巻き付けていた
そして眉間を狙うように向けられる銃口を見ながら、ウォーリスは冷たい視線で問い掛ける。
『どういうつもりだ?』
『どうもこうもない。死んだ部下の命は、お前の命で償ってもらう』
『……もう少し利口な男だと思っていたが。貴様の目的である銃を主力とした軍隊の編成に協力してやったというのに、その果てが
『厄介の種を撒いたのはお前だ。なんで自爆術式が施されていると知ってるミネルヴァを、南方に捕らえたまましていた?』
『ミネルヴァには生かしておく価値があった。
『そんな
『……』
『しかもあの村の中には、間違いなく熟練の腕を持った
『こちらに引き入れた魔人との取引で、あの村の人間には手を出さないようにしていたのだよ』
『あの鼠野郎か……』
『しかし、中々にあの村の内情に詳しいようだ。調べていたのか?』
『俺の部下を潜入させていた。南方領地の立地を調べてる時に村を発見して、随分と奇妙な集まりだったんでな。……そいつ等も、救出できずに死んだ』
『それは、お気の毒に』
『ッ!!』
ウォーリスは落ち着いた口調ながらも、冷たい口調でそうした言葉を向ける。
それを聞いて感情を激したスネイクは、感情のまま
その発砲音を聞き、負傷して倒れている団員達は驚愕しながら意識と視線を傾ける。
しかし次に発せられたのは、スネイクの驚愕を漏らす声だった。
『……なにっ!?』
その時にスネイクが見たのは、確かに眉間を撃ち抜いたウォーリスの姿。
しかしウォーリスは僅かに仰け反っただけの姿勢に留まり、上半身を軽く前へ戻しながら額から血も流さず傷も無い様子を見せた。
そして額に付いた九ミリの弾丸が落ちて、ウォーリスの右手に拾われる。
更に親指の爪を
『ッ!!』
ウォーリスの指から放たれた弾丸は、そのままスネイクの左頬を霞めながら通過する。
そして後方に存在する鉄製の
それを見たスネイクは表情を強張らせ、驚愕の声を漏らす。
『な……っ』
『――……気は済んだか?』
『!』
驚愕するスネイクに平静の声を向けるウォーリスは、口元を微笑ませながら話し掛ける。
そして弾丸が
しかし右手に持つ
すると奪った
それを見たスネイクは別の驚愕を浮かべ、そこから溢れる声を漏らす。
『……テメェが、なんで
『銃など所詮、非力な弱者が持つ武器だ』
『!?』
『私がいれば、こんな
『……!』
『貴様達が、実に哀れな存在だったからだ』
『……な、なんだと……っ!!』
『百年前に起きた四大国家の戦争で、貴様達は幾多の魔人を撃ち殺し、数十倍から数百倍の戦力差を覆すという大きな戦果を挙げた。しかし四大国家は貴様達の存在とも言える
『……テメェが、なんでその事を……!!』
『それを拒否した貴様等は、四大国家に属さない、あるいは属せない小国にしか居場所は無かった。その四大国家に対して復讐を企み、小国で銃の製造と兵士を増やそうとしたが、それも失敗したそうだな。……実に哀れだ、砂漠でしか生きられぬ者達よ』
『……クッ!!』
ウォーリスの憐れむような視線と言葉に、スネイクは一気に感情の沸点を上げて激怒する。
そして右手を翳しながら、怒鳴るように叫んだ。
『イオルムッ!!』
それと同時に銃口を向けながら構えたスネイクは、
しかし魔弾がウォーリスの顔面に着弾するより早く、魔弾は崩れ去るように消失する。
それを見たスネイクは再び驚愕を浮かべ、幾度も引き金に指を掛けながら新たな魔弾を発射しようとした。
『なっ!! ――……なんで、なんで撃てないっ!? イオルムッ!!』
『……その魔銃も、私から見れば玩具同然だな』
『!?』
『高密度の魔弾を精製し撃ち出す為に、周囲の魔力を吸収する。実に
『……ッ!?』
『貴様も聖人に至っているようだが、その玩具に頼り切った肉体ではミネルヴァのような
『……!?』
落胆にも似た低い声を漏らすウォーリスの影から、突如として異様な気配が漂って来るのをスネイクは感じ取る。
それと同時に薄暗い周囲の影が蠢きだし、『
その異様な影の動きにスネイクは驚愕し、意識がある団員達も異様な状況に動揺を見せる。
そうしたスネイクと『
『最後に選ばせてやろう。お前達の最後を』
『ッ!!』
『一つ目は、化物の餌になってこの世から魂ごと消失するか。二つ目は、この失態を補えるように私の役に立つか。どちらを選ぶ?』
『……テメェ、いったい……!』
『仲間と共に餌になるのが御所望なら、早く言いたまえ。何しろ、この
『ク……ッ!!』
『生きて私の役に立ちたいと言うのなら、お前達には最後の機会を与えてやろう。……だがその誓いを破らぬ為に、貴様には奴隷紋を施させてもらう。スネイク』
『俺を、奴隷にするだと……!!』
『別にお前でなくとも、そこに居る
『ッ!!』
『あの術式ならば、私も良く知っている技法でね。何せ人魔大戦の時には、捕虜にした魔人や魔族を自爆させて勢力を削いでいたのだから』
『……テメェ、化物かよ……ッ!!』
『ふっ。……それで、どちらを選ぶ? 化物の喰われて魂まで餌となるか、生きて奴隷として飼われるか。……これは、最後の慈悲だ』
ウォーリスはそうして右手を軽く上げ、敢えてそうした言葉でスネイクに選ばせる。
そして上げられた右手が振り下ろされた瞬間に周囲の
『……分かった。アンタの奴隷になる』
『賢明な判断だな』
『だが、団員達には手を出すな。自爆術式を施すのも、奴隷紋を施すのも、団長の俺だけにしてくれ』
『……いいだろう。ただし、貴様が次に命じた事を守れず失態を見せた時。それは貴様自身と団員達の死を意味する。それを忘れるな』
上げていた右手を閉じながら腕を下げたウォーリスは、そうして反抗したスネイクを従わせる。
生き残っていた団員達はそのやり取りの一部始終を見ていた事で、団長であるスネイクが自分達を庇い奴隷に堕ちる事を選んだのだと知っていた。
そして治療を終えた『
それを果たそうとしたスネイクと『
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