運命の二人
悪魔化させた千匹を超える
それは今までの事件で根幹に位置していたナルヴァニア=フォン=ルクソードの生い立ちを、自ら作り出したという言葉。
その思惑の根幹には、『黒』の
ウォーリスの肉体に潜み続けていた
しかし真実を話すウォーリスは、微笑みから落胆に変わる小さな溜息を漏らす。
「――……しかし、ナルヴァニアは実に残念な女だったよ」
「な……っ!!」
「ああ、誤解をしてほしくないのだが。私は彼女を娶る上で、目的こそあれど伴侶として愛するつもりだった。……だが残念な事に、その目的に沿わぬ結果が私を失望させた」
「……どういう、ことよ……っ」
「当時の私が抱いていた目的は、『
「……!!」
「だからこそ、当時の私はナルヴァニアに子供を産ませた。それが、この
「不完全……っ!?」
「確かに、ナルヴァニアやウォーリスは『
「権能って……何よ、それ……ッ」
「『
「!?」
「私は『
「……ッ!!」
「だが、私の考えは誤りだった。血を引くというだけでは、『
「アンタ……ッ!!」
「私はナルヴァニアに……いや、彼女に流れる『
「……この……っ!!」
そこまで話を聞いていたアルトリアは、首を掴むウォーリスの手を引き剥がそうと両手の指を喰い込ませようとする。
しかしウォーリスの握力は緩まず、逆にアルトリアの首を更に強く締めさせた。
「ぅ、あ……ッ!!」
「やれやれ。大人しく話も聞けないのかい?」
「……なんでよ……!」
「ん?」
「そんな話を、何故……っ!!」
「何故、聞かせるのか? ……それは、君を絶望させようとしている理由と、君を手に入れようとする理由にも繋がる話だからよ」
「……っ!?」
「話を続けよう。……父親である私の教えを受けたウォーリスは、短期間で『聖人』に至った。しかしそれでも、権能が発動するような兆候は無かった。……そこで私は、ある実験をウォーリスにさせた」
「……実験……?」
「ナルヴァニアやその一族のように、聖人に至っていない『
「……それが、リエスティア……!?」
「そう。私はウォーリスに指示し、屋敷に仕えていた
「……『黒』の、
「そうだ、『黒』が生まれたのだよ! ウォーリスの子供として、そして私の孫として! ハッハッハッ!! これが笑わずにいられるだろうかっ!?」
「ク……ッ!!」
「『
「……『
「そう、それが私の考えた最短の手段だった。……だが私は、落ち着きを戻して冷静に考えた」
「!」
「『黒』には、いや『
「……!!」
「だから私は、『
「仮定……?」
「『誓約』とは魂に刻むモノであり、『制約』とは肉体に課すモノである。……ならば魂に施した『誓約』と、肉体に施された『制約』を切り離せば、『
「……じゃあ、リエスティアの……魂と記憶が、消えていたのは……っ!!」
「ふっ。……第一次人魔大戦時に作られた技術には、魂を抽出する装置もある。念の為にその装置を作っていた私は、『黒』の魂を肉体から抜き取り、そのまま装置を停止させて消滅させた」
「ッ!!」
「準備は整い、いざ当時の肉体から『
今まで余裕に満ちた表情を浮かべていたウォーリスの表情が、途端に険しく不機嫌さを見せ始める。
そして憤りさえ籠るのが感じ取れる声色で、その時に起きた出来事を話した。
「当時の私には、
「!」
「完全な油断だったよ。何せ目の前に舞い込んだ『
「……?」
落胆にも似た息を漏らすウォーリスの様子を見たアルトリアは、眉を顰めながら視線を向ける。
その脳裏には奇妙な違和感が浮かびながらも、そのままウォーリスの話を聞き続けた。
「ウォーリスも、私が殺される前に
「……」
「それからは、日々忙しい時を過ごしたよ。……
「……王国は、なんで……」
「念の為に、『
「……でも、リエスティアは見つかった……」
「その通り。私は五年の月日を経て、隠された『
「……ッ」
「私はあらゆる手を尽くし、『
「……『黒』の魂が無いのに、肉体には制約が掛かったまま……。……つまり、『
「ああ。……だがそこで、思い出したのだよ。――……君のことをね」
「!」
「あの時、あの会場で。魔力を受け付けない『
「ク……ッ」
「だがその計画を立てた時、一つの疑問もあった。……何故、君は『
「……えっ」
「君が自身の生命力を『
「……なによ、それ……っ」
「今の状況を見る限り、魔力の理解においても、技術も、私は君より遥かに上回っている事は証明している。……だが私には出来ず、君だけが『創造神』の肉体を治せる。……その事実に改めて奇妙さを抱いた私は、君と『
「……五百年前なんて、生まれても無い私に、何の関係が……っ」
「天変地異が起きた原因。それは『
「……!?」
「『
「……何を、言って……」
「肉体から離れた魂の、行き着く場所。――……そう、魂を保管する場所。『
「……!!」
「私は考えた。『
「……そんな、馬鹿なこと……」
「『
「……違う。私は、違う……っ!!」
「いいや、違わない! ――……アルトリア。君こそ、私が求め続けた存在。この
ウォーリスは狂気を含む笑い声を上げ、アルトリアを見ながら邪悪な微笑みを強くする。
それを聞いていたアルトリアは驚愕しながらも首を横に振り、ウォーリスの言葉を嘘だと思いながら身体から力が抜ける感覚を味わっていた。
こうして語る様子を終えたウォーリスは、リエスティアと共にアルトリアを手に入れようとする理由を明かす。
それは、『
幼き頃に偶然の出会いを果たした二人が、『
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