箱舟と共に
エリクとケイルがクロエと合流し、巨大な中央の黒い塔に備わる赤い
「――……それは本当なのか……!?」
「間違いありません。現在、地上までの高度十四キロを下回りました……!」
「……この都市が地表まで落下する時間は?」
「自由落下ではなく、一定の速度を保って落下しているようなので。……凡そ、三十分前後かと!」
「つまり、自然に落下しているわけでは無いということだな」
「はい!」
「誰かが意図して都市を降下させている……。まさか、アルトリアの仕業か……?」
『――……
「!?」
「この声は……クロエか!」
シルエスカ達が状況を把握する会話を行う最中、唐突に
それがクロエの声だとシルエスカは気付き、自身の耳に備わる通信機を起動させ会話を行った。
「クロエ、お前が都市を降下させたのか!?」
『箱庭の
「……確かに我々の目的は、
『瘴気が海に流れ出て、海全体が汚染され死に満ち溢れるだろうね。そして海を越え、人間大陸の全てに瘴気が辿り着き、人類は全滅するだろう』
「……ッ」
クロエの言葉で浮遊都市の落下が何を招くのか、
三十分後には都市内部に満ちる瘴気が落下と同時に溢れ出し、地表の全てを汚染し始めてしまう。
そうなれば都市そのものは破壊できても、人類は極少数を残し全滅するしかない。
飛翔し航行できる
それ以外の生き残っている全ての人々を見捨てることなりかねない事態に、
そんな一同の沈黙を破るように、シルエスカは通信越しからクロエに尋ねる。
「――……クロエ。お前が
『残念だけど、無理だね。アレは
「アルトリアだけか……」
『そうだね。――……ただ、死者の魂を幽閉し瘴気を溢れ出させている
「!」
「……あの白い翼の、アルトリアのことか? アレも、やはりお前が……」
『ただ問題は、死者の魂を閉じ込めているあの
「……!!」
『並大抵の攻撃では、あの
「……それで、破壊できるのか?」
『出来なければ、未来の希望が閉ざされるだけさ』
「……」
シルエスカはその中で真っ先に覚悟を決め、艦長と
「――……これより
「!」
「船内にも命令を伝達! 各乗務員達に配置に着くよう伝え、負傷者を始めとした人員を含めて衝撃に備えさせる!」
「ハッ!!」
「三号機は、兵装を使えるか?」
「主砲以外の兵装は全て破壊されていると、報告が届いています。ただ
「ならば三号機は、浮遊を維持し後方で待機するよう命じる。――……万が一にも
「……ッ」
「艦内の通信回線を開け。私が全員に、状況を説明する」
「ハッ」
シルエスカはそう命じ、
そして現在の状況が
『――……以上が、現在の状況だ。あと三十分前後で、その瘴気に満たされた都市は地表へ落下し、地表は壊滅的な状況に陥る』
「……!」
『これより、この
「……」
『そして敵の最大戦力が、まだ破壊対象周辺で戦闘中である事を確認している。あるいは破壊活動を妨害され、
「……ッ」
『我々だけが、人類の未来を守れる状況と場所に居る。――……全員、覚悟をしてくれ』
「……ハッ!!」
シルエスカの言葉は負傷兵を含めた同盟国軍の兵士達にも伝わり、無事な者達は敬礼を向けてその命令に応じる。
そして各砲塔や銃座、そして動力室を始めとした場所に各乗務員達が配置に着き、数分後には
「都市の高度、十三キロを下回りました!」
「全砲門と全銃座、配置完了!」
「負傷兵及び、各人員の固定作業も完了!」
「
「――……艦長」
「分かりました。――……
「全速、前進!」
各
それに応じるように艦長は頷き、一同は覚悟を秘めた表情で赤い
そうした二号機を見送るように、三号機は後方で浮遊を維持している。
それに搭乗し
「――……おい!」
「は、はい?」
「この
「アレ、と言うと……?」
「アレだよ、アレ! 確か、青いコンテナに入れてた……」
「……ああ、アレですか? 局長が作った、試作品の……」
「手が空いてる奴等は、ちょっと手伝え」
「何をするんです……?」
「念の為ってヤツだ。――……ほら、早く来い!」
「は、はい!」
グラドはそう言いながら
こうしてクロエの導きにより、それぞれが自身が役目を果たす為に動き出す。
それは未来を託された者達にとって、絶望へ陥らない為に唯一と言える希望の道筋だった。
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