5-5
都内某所、ビジネスホテルの一室。
必要以上の物がない簡素なその部屋で、軟禁生活を送ること早一週間。
美夜はなに不自由なく生きてはいたが、閉じ込められっぱなしで窮屈さを感じていた。
監視者は相も変わらず。なにが面白いのか、窓から眼下の世界をただ見下ろしている。
「あの、わたしっていつ帰れるんですか? れい――家族が心配するんですけど」
声音からは恐怖を感じさせない普段通りの調子で、美夜は黒いスーツの男、帯刀の背に問うた。
「……時が来たら帰してやる。だからそれまで大人しくしていろ」
またこれだ、と美夜は眉間に薄く皺を刻む。
部屋自体は狭くないが、自由が利かないことへのストレスでどうにかなりそうだった。
相手がレイちゃんなら、なんにも問題ないのにッ! 美夜は心の中で唾棄する。
「…………はぁ」
言ったところでそれが叶うわけもない現状。重い重いため息がこぼれた。
「――すまない。お前には迷惑をかけているとは思っている。だが、もう少しだけ我慢してくれ」
項垂れたのか、ただ視線を下げたのかは分からない。けれど、背中越しに頭を下げたように見えた。初めて非を認めて、帯刀が謝辞を述べたのだ。
意外なことに目を丸くし、
「べ、別に、無事に帰してくれるんなら、我慢しますけど……」
美夜は一瞬反応に惑い、そっぽを向いて肯定するような返事をしてしまう。
けれど、少しくらいなら――と思わせられたのは、ちらりと横目に見た帯刀の背中が、どこか物悲しさを漂わせる寂しげなものだったから。
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