2汐留家の日常③~父親~(2)

 さて、オレのことはこれくらいにして、日常について話していこう。家から40分程の場所にある公立高校で、ある程度の進学校が今のオレの仕事場だ。オレの専門教科は数学なので、生徒には数学を教えている。


 高校生を見放題なこの仕事は、一部の性癖の人には、たまらなくおいしい職場だろう。かくいうオレも、雲英羽さんに影響されて、この職場の有り難さに気付くことになった。何しろ、生の高校生を毎日見ることができる。若い活力を目の前に自分も若返るような気さえしてくる。それだけならば、なんて尊い職場なのだろう。


 しかし、現実はそう甘くはない。確かに若い高校生を毎日見ることができるのは素晴らしいが、彼らも同じ人間であることを忘れてはならない。彼らは時に飛んでもないことを平気で教師に発言してくる。



「先生は結婚しているの?」

「先生はうちのクラスだと誰を彼女にしたい?」

「先生かわいい!」



 どうやら、オレの容姿は女性に人気らしい。自分で言うのもおこがましいが、イケメンの部類に入るようで、学生時代も教師になってからも、女性から好意を受けることが多い。二次元だと、教師と生徒の恋愛は、禁断のシチュエーションで人気がある。オレも二次元に限っては面白いと思っている。そうは言っても、あれはあくまでフィクションで、現実ではないことをしっかりと区別している。だからこそ、オレは、生徒がどんなに自分に好意を寄せてきてもしっかりと断っている。


 そうは言っても、オレにはすでに雲英羽さんが居るので、若いかわいい高校生が誘惑してきても、何とも思わないから、断っても心もどこも傷まない。オレは雲英羽さん一筋なのだ。



 禁断と言えば、教師と生徒の秘密の関係(恋愛)だが、その中でもさらに教師(男)と生徒(男)はオレの好きなシチュエーションの一つだ。娘にも話したことがあるが、あの隠れて恋愛するスリルがたまらなく面白い。自分では決して味わうことができない非日常を感じさせられて萌えるのだ。


 そんなこんなで、オレは授業をしながら余裕があるときは生徒同士、あるいは教師同士、あるいは教師と生徒を勝手にカップリングして妄想する。もちろん、そんなことを考えていることがばれてはやばいので、こっそりと顔に出さないように気を付けている。そして、個人情報に引っかからない程度に、家に帰って雲英羽さんにそのことを報告している。


 雲英羽さんも非常勤ではあるが、教師をしていて、中学校で国語を教えている。彼女も彼女で生の中学生で妄想を膨らませているだろうが、オレの通っている高校生がどんな感じか気になるのか、興味津々で聞いてくる。彼女の方も、オレが今の中学生がどんな感じなのか知りたがっていると思い込んでいるので、話してくれる。


 オレは別にロリコンではないので、中学生にときめくこともない。高校生に対しても、若さは目の保養だとは思うが、それ以上の感情、恋愛感情に発展することはない。


 とはいえ、話してあげると、雲英羽さんはとても喜ぶ。それがオレにとっての嬉しさにもつながるので、高校生の観察と妄想は欠かさず行い、雲英羽さんに報告している。

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